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メモランダム拾遺

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気づいたこと、調べたことのおぼえ書きなどです。
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#泉鏡花

柘榴の味と人肉の味

※タイトル画像:『普賢十羅刹女像』(部分)、鎌倉時代・13世紀、絹本著色、1幅、縦112×横55cm、奈良国立博物館蔵、重要文化財、出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/) 森雅秀先生(仏教美術、金沢大学教授)の『仏教の女神たち』(春秋社、2017)を読んでいます。仏教の「女神」や「女性のほとけ」とは何なのかと、かねて関心はあったのです。 森先生によれば、部派仏教の時代(釈尊入滅〔入滅年は大別して3説ありますが、紀元前380年頃とする

泉鏡花『眉かくしの霊』の奈良井宿「桔梗ヶ池」

きのう奈良井宿に立ち寄った。江戸・明治の時代まで時間を遡ったかのような錯覚に陥る。道路開発の対象とならなかったことからこの街並みが残った、と聞いたことがあったが、そういう偶然があったとしても、大変なご努力で守ってこられたのだろう。 奈良井宿は中山道六十九次、そのうち木曽十一宿の一。江戸時代に栄えたという。 木曽路というと、文学では島崎藤村『夜明け前』の舞台として有名で、奈良井もたびたび登場する。が、私にとって奈良井といえば、なんといっても、泉鏡花の怪異譚『眉かくしの霊』の舞