パークアンドライドとは?奈良の事例を踏まえて【連載交通⑤】
ちょっと離れたところに停めてバスに乗る
パークアンドライドは自家用車による観光地周辺での渋滞を緩和すべく、少し離れたところに対象の駐車場を一か所ないし複数設け、そこからバスなどの交通機関に乗り換えて観光地へと向かう渋滞緩和策の一つです。
この記事ではパークアンドライドの概要と奈良市内における事例を開設します。
奈良公園の駐車場事情
奈良市内有数の観光地である「奈良公園」には、大規模な駐車場が存在していません。
奈良公園周辺にある駐車場で最大なのは奈良県が管理する「県営登大路駐車場」の284台。次いで、「ならまち駐車場(タイムズならまち)」の132台。「春日大社駐車場」の100台となります。
2020年9月の調べではありますが、奈良公園周辺(近鉄奈良駅、ならまち、高畑の各地区を含む)には40ヶ所以上の駐車場がありますが、駐車場によっては収容可能台数が1ケタの駐車場も存在しています。
同じ調査ではその40ヶ所以上の駐車場の収容台数合計が1600台程度となっています。これはテーマパーク「USJ」の2800台、「TDR」の18000台、商業施設「奈良ファミリー」の2000台、「イオンモール大和郡山」の4100台と比較すると有数の観光地「奈良公園」周辺の駐車場収容能力1600台がいかに足らないかが明らかになります。
※この調査に収録できていない駐車場もありますが、それを加算しても劇的に増えることはありません。
そして、1600台分の駐車区画にスムーズに案内ができれば「ともかく」なのですが、テーマパークの駐車場のようにスタッフの方が案内してくれるわけでもありません。
有数の観光地奈良公園に、少ない駐車台数の駐車場をめがけて車がやってくる現象に加え、駐車場をさがし「うろつく」現象が奈良公園の渋滞の一因と言えます。
パークアンドライドとは何か?
「パークアンドライド」は、目的地周辺の道路渋滞を抑制する為にその目的地から離れた場所(郊外)に駐車場を確保してそこで駐車してもらい、訪問客は他の交通機関(バス、鉄道、レンタサイクルなど)で目的地まで向かう渋滞抑制政策の一つです。
多くの車が向かう目的地周辺での車の台数を減らすと共に、目的地周辺で不足する駐車場収容能力を補う効果が期待されます。また郊外駐車場を複数作ることにより、一つの場所に車が集中することを避ける効果が期待できます。
これは奈良だけではなく、京都や愛知万博でも採用されておりこれ以外にも事例は全国にあります。事例によって、バリエーションは色々あります。
駐車場は「無料」or「有料」
駐車場からの輸送は「バス」or「鉄道」or「レンタサイクル」
駐車場は「仮設臨時」or「休みの公共施設」or「余裕のある常設駐車場」など
奈良の場合は、場所により有料及び無料の駐車場で、バスまたはレンタサイクルで、仮設臨時もあれば、休日の市役所もあれば、余裕のある駅前駐車場や商業施設の駐車場が対象となります。
呼称は輸送サービスによって変化することがあり、バスによる輸送の場合は「パークアンドバスライド」、レンタサイクルの場合は「パークアンドサイクルライド」と呼ばれることがあります。略称は「P&R」「P&BR」となります。
奈良における事例
奈良市内では1988年に開催された「なら・シルクロード博'88」で実施されたパークアンドライドが筆者の調べた限り初めての実施となります。その後、「朱雀門・東院庭園復原記念事業 平城京'98」での実施も確認できています。また2010年の「平城遷都1300年祭」では平城宮跡を目的地としたパークアンドバスライドが実施されています。
1999年からは毎年ゴールデンウィークと秋の観光シーズンにパークアンドライドが実施され、これは2022年も続く取組となっています。これまでの取組では奈良阪や宝来の奈良大学跡地などを活用し、年や場所によってはシャトルバスが運行される場合もありました。
近年では同じく春秋の繁忙期に奈良市役所駐車場(通常は市役所の来庁者用駐車場)と、国道24号線奈良高架道下の駐車場(通常は近くの職員駐車場と思われる)をパークアンドライドの駐車場として活用し、駐車場から奈良公園までの輸送を観光客向け100円バスの「ぐるっとバス」が担っています。
また「ぐるっとバス」沿線のJR奈良駅駐車場、奈良県コンベンションセンターの駐車場のいずれも常設で有料の駐車場もパークアンドライドの駐車場として指定され、その時の取組内容にもよりますが条件を満たせばバスの1日乗車券の進呈される場合もあります。
次回の記事では、奈良市内のパークアンドライドの事例についてさらに詳しく紹介します。
尚、この記事で紹介している内容はこれまでの一例です。実施回により取組内容は変更されますのでお出かけの際は「奈良公園・平城宮跡アクセスナビ」で最新の取組内容をご確認ください。
参考文献
こちらのページに記載しております。
https://note.com/heijo_tourism/n/n97ee63e406fe