奈良の交通対策大全集-地域連携計画から見る【連載交通⑨】
4期10年を超える取組
この「連載交通」ではこれまで「ぐるっとバス」「パークアンドライド」「奈良公園バスターミナル」について詳しく紹介してきました。
これら取組の他にも奈良市内、とりわけ奈良公園を中心としたエリアに対して様々な交通対策が施されています。
この記事では、それら対策について「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」を中心に紹介していきます。
奈良中心市街地公共交通総合連携計画
奈良公園を中心とした交通対策は奈良市内の行政や交通事業者らが集う奈良中心市街地公共交通活性化協議会で決定される「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」によってまとめられています。
この連携計画に掲載されている取組は、それぞれ県、市、民間事業者など実施主体が異なりますが、年に2回程開催される協議会の場で、連携計画にまとめられた各取組の状況が報告されています。
この計画では主に奈良公園への交通流入を抑制し回遊性を高める為、主に「渋滞の緩和」や「移動環境の向上」を目標に平城宮跡や西ノ京方面を含めた平城京エリアにて、様々な施策が定められ具体的な取組が実施されます。その結果をそれぞれ設定されているモニタリング指標によって観察を続けています。
これまでに2011年~2013年、2014年~2016年、2017年~2019年、2020年~2022年の4期に渡ってその都度見直され計画が発出されています。
これまでの取組の一例
それでは、この計画で紹介されている取組の一例をご覧いただきましょう。
尚、一部取組については実施期間によって計画目標や施策が移動していることがあります。また、各項目のタイトルについては資料を基にしたこの記事オリジナルのものであり、総合計画とは共通していません。
広報
季節になるとよく目にするパークアンドライドやぐるっとバスのチラシの他、街頭の看板や、ウェブサイト「奈良公園・平城宮跡アクセスナビ」や、Twitter「奈良 交通情報」アカウント、Youtubeでの動画配信がこれにあたります。
パークアンドライドの実施
奈良市内で春、秋の観光シーズンに開催される「パークアンドライド」の実施や「パークアンドサイクルライド」の実施が実施されています。また、「奈良県コンベンションセンター」の開業後は同施設駐車場を活用した通年でのパークアンドライドの実施などが見られます。
パークアンドライドの詳しい事は過去の記事をご覧ください。
道路上駐車場案内システムの改良
奈良市内の道路上にある駐車場案内システムをわかりやすい内容の表記に改良されています。
過去では土地勘があってもわかりにくい内容でしたが、近年では遠方からのドライバーに対しても直感でわかりやすい内容へと改良されました。
JR奈良駅駐車場の利用促進
駐車場利用の平準化をする為、JR奈良駅西口地下の市営駐車場の料金改定や繁忙期での誘導が実施されました。
奈良公園団体バス駐車場予約システム
当初は「県営大仏殿前駐車場」の入口付近での駐車場入庫待ち渋滞を解消すべく大仏殿前駐車場と高畑駐車場に導入されましたが、「奈良公園バスターミナル」開業度は同ターミナルを中心とした団体バスを対象とした交通誘導システムの一環として駐車場予約システムの利用が必須となっています。
主要駅におけるデジタルサイネージでの案内
奈良市内主要駅においてデジタルサイネージを設置、市内交通の案内を行っています。
木簡型一日乗車券の販売
奈良市街の主要観光地を結ぶ「ぐるっとバス」や民間の路線バス「奈良交通」の一部区間で使用できるバス一日乗車券を、奈良時代の「木簡」の形に加工した木材に印刷し販売しています。
奈良県コンベンションセンター内店舗での通年販売の他、繁忙期にはパークアンドライド駐車場などの臨時販売所が設けられることもあります。
公園周遊バス、観光拠点間移動(ぐるっとバス)
広大な奈良公園内に点在する観光スポットを結ぶバスや、奈良公園や平城宮跡などを結ぶルートで運行されている「ぐるっとバス」の運行です。過去には西ノ京方面を結ぶバスも運行されるなど試行錯誤の歴史がありいます。
ぐるっとバスについては過去の記事に詳しく記しています。
奈良公園バスターミナルの検討
当初は「団体バスの乗降」「パークアンドライドのシャトルバス発着」「奈良公園内外の交通結節点」=ぐるっとバスの乗り継ぎ拠点として計画されましたが、現在は団体バスの乗降や、奈良公園のエントランス部として展示やホールでの学習拠点や、飲食、物販による店舗誘致による交流拠点となっています。
コンベンションセンターの駐車場、ターミナル
奈良県コンベンションセンターの整備に伴い、パークアンドライドに活用できる駐車場の整備、高速バスとぐるっとバスの乗り換え拠点となるターミナルの設置が検討され、実現に至っています。
ならまち界隈の導線確保
従来の奈良公園側(北側)からの導線だけではなく、ならまち南側でのエントランス拠点「奈良町南観光案内所」の整備や京終駅からの観光案内看板の整備がなされています。
2022年までの今の計画と今後
2022年現在有効である連携計画は2019年から2022年までの計画となっています。この4期目の計画は奈良公園バスターミナルの開業や、パークアンドライド、ぐるっとバスの実施=社会実験がある程度落ち着いてきたことなどからなのか、2期目、3期目とは異なり「実験後のレギュラーバージョン」ともとれる印象でした。
来る2023年以降の連携計画では、2011年、ひいては1300年祭前から続けられてきた取組をさらに発展させ、PDCAサイクルに則った改良が加えられることを期待したいところです。
最後に
このnoteでの【交通連載】は、この記事を持ちまして最後となります。ご覧いただきました皆様に心より御礼申し上げます。
この連載では、1988年のシルクロード博、2010年の1300年祭を見据えた社会実験、そして2011年から現在に至るまでの交通対策を紹介して参りました。
奈良県に住む筆者個人としても、かつての状況とは比べ物にならない程、スムーズな公共交通の利用が可能になっていると実感しております。
関係者の皆様の多大なるご尽力による成果は着々と世界に誇る観光資源「奈良公園」の価値、魅力向上に繋ることを確信しております。
この連載をご覧いただきました皆様、交通対策に従事された関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
参考文献
「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」(H23~H25)https://www.pref.nara.jp/secure/40508/nararennkeikeikaku.pdf
「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」(H26~H28)https://www.pref.nara.jp/secure/40508/keikaku.pdf
「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」(H29~H31)
https://www.pref.nara.jp/secure/40508/keikakuH29-31.pdf
「奈良中心市街地公共交通総合連携計画」(R2~R4)https://www.pref.nara.jp/secure/40508/keikakuR2-4.pdf