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フジテレビの会見と『失敗の本質』

昨日1月27日の16時から開催されたフジテレビジョンの「やり直し会見」は、とても長かったですね。
私は全ての内容を見ていないのですが、10時間を超える会見だったようです。

この記者会見で、フジテレビは、今回のトラブルを把握した当初、コンプライアンス(法令遵守)の担当部署と情報を共有していなかったことを明らかにしました。
そしてそれは、フジテレビのコーポレートガバナンス(企業統治)の不全ぶりが浮上した内容だった、という新聞記事の記載もあります。

ただ、では、コンプライアンス部署に伝えれば事前に全てが解決していたのか、と問われたら、私はそんなことはなく、そもそもその企業の体質や文化が変わらないのであれば、各部署が取る対応についても変わらなかった可能性があるのではないかな、と感じました。

先日、お亡くなりになられた経営学者の野中郁次郎さんらが書いた『失敗の本質』には、太平洋戦争で敗北した日本軍のことが書かれていますが、
「日本軍の戦略策定は、一定の原理や論理に基づくというよりは、多分に情緒や空気が支配する傾向が、なきにしもあらずだった」
とあります。
また、
「日本軍は、はじめにグランド・デザインや原理があったというよりは、現実から出発し状況ごとに、時には場当たり的に対応し、それらの結果を積み上げていく思考方法が得意であった」
との皮肉も。
実は、こうした姿は、戦前から変わりがなく、日本の社会に今でもあり得ることであって、それだけに一部の部署に伝えていなかったことだけが問題であるとは思えないのです。

野中郁次郎氏ら『失敗の本質』

また、今回のフジテレビの対応のような、周囲から批判されないよう、コトを大きくしないように自社で対応したものの、社会からの批判を受け、それによって再度対応をし直す、というのもよく起きてしまうことかな、と思いました。
当初、フジテレビ側としては、説明をしたのに、ダルトン・インベストメンツに「真相隠蔽」とまで言われてしまった、というのは、少なくとも会見をした港元社長からすれば、意外であり、驚きでもあったことなのでしょう。

これも私自身は他山の石としないといけない、と感じました。
最初の会見の際に、この問題に対して、自社がどういう解決をしたいのか、そのために何をするべきなのか、といった「目的」が大事にされるべきだったのかなと思います。

加えて、今回の会見の形として、16時の段階で500人ものジャーナリストや新聞記者が集まっている状況において、全ての質問を受け入れる必要があったのかな、とも感じました。
もちろん、1月17日の会見(「回答を差し控える」という説明やテレビカメラの撮影を認めなかった、というもの)を受けて、改善したということでしょうが、多くの記者からの集中砲火を受ける状況に加え、叱るような口調で追求したり、怒鳴ったり、ヤジを飛ばしたり、というのは正しい会見の姿なのか、疑問でした。
私は映像で見ていただけですが、この会見が国会の議論のようになっていて、とても醜い姿で不建設だな、これで被害者やフジテレビ社員は納得いくのだろうか…と悲しくなってしまいました。

例えば、会見の最初の段階で、フジテレビが関わったこの問題には答えられるが、第三者委員会の報告を待つ内容については答えられない、時間を決める、といったようなグランドルールがあった方が良かったのかな、とも思いました。
そうした場の運営、というのも今後の自身の課題かなと考えさせられました。


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