見出し画像

中国経済の「成長痛」について

日経新聞に掲載されている「経済教室」、今日は久しぶりに中国についてでした。
執筆者は北京市生まれで国際マクロ経済学、中国経済がご専門のジン・クーユーさん。
彼女は昨年、『新中国経済大全』という単著も書かれています。この本は中国経済のありのままの姿を世界の人へ伝えたいという意図をもって書かれたものであり、中国と付き合う人々に有益な視点を示すと評判です。

ジン・クーユー『新中国経済大全』

クーユーさんは、「経済教室」本論文の中で、まず中国経済の当面の悩みは不動産部門である、と書いています。
というのも、不動産部門は国内総生産の20%、歳入の40%、家計資産の60%という大きな割合を占めているためです。この部門が不況になって仕舞えば、経済を支える銀行の役割と財政維持の役割とが麻痺してしまうことになります。
事実、中国不動産のバブルについても報道されたことがあり、そうした不動産への依存が強い地方政府は経済損失を受けた敬意もあります。

また、中国経済の成長は「市長経済」と呼ばれる経済運営だったことにも触れられています。
「市長」とは、地方行政の幹部のことを指します。
数十年前から、そうした「市長」がGDP目標値を達成しようと躍起になり、インフラ建設の推進や民間企業の育成に力を入れてきました。
その結果、中国各地は「世界の工場」と言われるほどの成果を上げました。
ただし、こうした供給サイドの成功は同時に犠牲を伴ってもいました。
例えば、地方政府が経済成長を福祉より優先した結果、社会保障が整備されませんでした。
こうした影響で、農村部は十分な医療、教育に手が届かないという状況も発生してしまっているようです。

とはいえ結論として、クーユーさんは、中国経済が多くの課題を抱えているのは事実としつつも、乗り越えられないものではない、と書いています。
そして、富裕国の仲間入りをするには、製造大国から内需主導の経済大国へ移行することが提案されています。
つまり、財政改革と堅実な社会福祉への投資が必要ということですね。
経済成長という一方向への努力だけではなく、国民へのさまざまな配慮が必要であり、クーユーさんは、こうした状況を「成長痛」に近い、と書いています。

本論文を読んで、考えてみれば、企業も同じだな、と思いました。
会社経営において、順風満帆に行くような企業が全てではありません。
様々な部門がバランスよく成長すれば問題ないのでしょうが、そう上手くはいかず、さまざまな課題を抱えつつ、アンバランスに成長していくのが実態ではないでしょうか。
そうした状況で「成長痛」を楽しみながら経営やマネジメントができるか。
私も、仕事においてはそうしたことが日々問われているな、と感じました。


いいなと思ったら応援しよう!