トランプ政権の統治機構「政治化」の動き
1月28,29日の日経新聞「経済教室」に書かれていたのは、トランプ政権の統治機構についての論文です。
昨日は、鈴木紘平オランダ・ライデン大学助教授が「政治介入が招く行政の後退」というタイトルで寄稿されていました。
内容は、公務員を含めた官僚機構のあり方についてです。
どのような政治体制の政府であっても、リーダーや政治家の意思を具体的な政策として実行するには、官僚機構の存在が欠かせません。というのも、政治家は必ずしもその分野の専門家であるとは限りませんし、無数の意思決定の全てに彼らが参画するというのも現実的ではないためです。
民主主義国家では、選挙で選ばれた政治家が政策の方向性を決めますが、実際に実行するのは官僚組織です。官僚組織の中心は公務員ですから、政策の実行は公務員に依存するより他ない、という現実もあります。
では、どのような官僚組織が政策を進める上で効果的なのか。
日本の公務員任用については、学歴や職業経験を採用基準とする「メリットシステム」が採用されています。これは、政府の汚職が減少し、業務の効率化や市民からの信頼も得やすく、公務員のモチベーションも向上する、という調査結果が出ています。
他方、米国では、政治的な影響度が高い(=特定の政治家や政党との関係性が強い、イデオロギー的な立場が近い)人員が公務員として任用されることが多いことが知られています。
こうした公務員の人事を政治的判断基準で決めることを「政治化」と呼ぶようですが、今回の第2次トランプ政権は、この政治化をされに推し進める動きと捉えることができる、というのが鈴木さんの主張です。
これにはもちろんメリットもありますが、ただ、過度な政治化は、政府の汚職や効率性の低下、優秀な人材が行政を目指さなくなること、政府への信頼低下を招く等の可能性があることも知られています。
トランプ大統領は意図的に政治化を進めようとしているわけですが、この改革がどのような成果を出すのか、この動きを見て、格好も政治・官僚体制を変えていく可能性もあるため、注視したいところですね。