#21クソみたいな日に名前を付けるとしたら③
何でもできる気がしていた無力なあの頃
朝練の前に1人、まだ空が闇に包まれている時間に目を覚ました。
この空を見ると思い出すのが高校2年生の頃だ。
自分は何にでもなれると思っていた。
何でもできると思っていた。
客観的に見ても部活中に怪我したこと以外全て上手くいっていた。
羨むくらい思い通りになっていた。
高校2年の冬、僕に恋人ができた。
他校の同じ部活のマネージャーだ。
他校なのに当時通っていた学校でも噂になるくらいの人と付き合えて鼻が高かった。
今だから話せるが、最初は「こう言えば嬉しいんだろうな」くらいでLINEのやり取りをしていた。
ある種エンターテイナーだと思っていたのかもしれない。
高校1年生の頃もそんな流れで付き合って後悔したのに、再び後悔しようとしていた。
LINEと通話でしか話せない日々。
もどかしさもありながら、素敵な毎日だったと振り返る。
「1時で終わりにしよう」と言って11時から始めた通話は、僕が朝練のために起きる時間まで続いていた。
お互いに盲目になっていた。
5時の暗がりが長崎の夜景を見ている気分になっていた。
そんなあの頃を懐かしく思いながらご飯が炊けるのを待っていた。
あの頃も家族の中で1番最初に起きてご飯を炊いていた。
石油ストーブの匂いが優しかった。
世界が違って見えていた。
本当に好きだと思った頃、彼女は僕の前から消えていた。
全く長く続かなかった。
残念ではあったが、それが最善の選択だったと思い込んでいる。
もう彼女とは会いたくない。
けど、見返したいとは思っている。
「なあ、俺今どうよ?あの頃の自分を越えられた?」
そんな問いかけを今でもやってしまう。
それだけ過去に囚われているんだから、人生のハイライトは高校2年生なんだ。
散々人から「頑張っている」と認められてきた。
でも、自分は全く認めていない。
この世の最大の理解者に認められない人生を送ってきたんだ。
「お前、まだまだできるっしょ?」
問いかけてくるのは高校2年生の僕。
まだまだなんだ。
走り続けなければ。
結果を出さなければ。(35.9℃)
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