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【ATOMO連載】体験型エンタメ情報局出張所 #3「TRPG(テーブルトークRPG)」(2022年11月号掲載)
全国の体験型エンタメ施設/店舗等にて隔月刊で配布中の体験型エンタメ情報誌「ATOMO」で連載している「体験型エンタメ情報局出張所」のバックナンバーを紹介。この連載では毎回体験型エンタメやそれに近しいカテゴリをピックアップして簡単な解説を行っています(2022年11月号掲載分/表記等は掲載時点のものです)
『体験型エンタメ情報局出張所』3回目は「TRPG」を紹介します。
TRPGとは?
TRPGとは「テーブルトークロールプレイングゲーム(海外では「テーブルトップロールプレイングゲーム」)」の略です。複数人で集まって、1つのテーブルを囲んで遊んだことからこのように呼ばれています。
TRPGは複数人で遊ぶゲームです。ひとりはゲームマスター(GM)と呼ばれ、冒険の舞台や敵を用意します。他はプレイヤーとなって戦士や魔法使いなどのキャラクターをひとり1キャラクターずつ担当します。そして、GMが用意した冒険の舞台を探検し、ドラゴンのような強い敵を倒すなどの目標を達成するべく動きます。
GMは随時、キャラクターが今どんな状況かを口頭で説明し、プレイヤーたちはそれを聞いて協力して目的を達成するためにどうするか考え、時には話し合ってゲームマスターに答えていくことでゲームは進んでいきます。
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TRPGの元祖『ダンジョンズ&ドラゴンズ』
世界で最初のTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下 D&D)』は1974年に発売された、ファンタジー世界を舞台としたTRPGです。
今日のTRPGは書籍として発売されていることがほとんどですが、 D&Dはボードゲームのように箱に入って発売されました。中にはルールブックをはじめとする数冊の本と、ゲームで使用する様々な種類のダイス(サイコロ)が入っており、この箱だけでゲームを遊べるようになっています。
これらのダイスは、プレイヤーのさまざまな行動の判定に使われます。たとば罠の解除や攻撃の命中、武器や魔法の種類によるダメージを決めるためにダイスを振るという、TRPGの基本がここから始まっているわけです。
D&Dは日本語版の取り扱いが一時終了となり、行く末が心配されましたが、版元であるWizards of the Coast社が2022年12月より直接日本語版も取り扱うことが発表されました。これを機会に元祖TRPG(初版とはずいぶん姿を変えていますが)を触ってみるものいいかもしれません。
日本で大人気『クトゥルフ神話TRPG』
現在日本で最も流行しているTRPGのひとつである『クトゥルフ神話TRPG』(原題:Call of Cthulhu。以下CoC)は1981年にアメリカで初版が発行されたクトゥルフ神話を取り扱ったTRPGです。
2つの10面ダイスを使うことで判定する技能の判定基準を%とする直感的なルールと、恐ろしい状況に遭遇するたびに徐々にキャラクターの正気が蝕まれていく可能性のある「正気度」というパラメータがホラーという題材にうまくマッチしています。
日本では第2版が1986年に出たのを皮切りに、出版元が変わりつつも継続して出版されています。2012年にニコニコ動画で同人ゲームの人気キャラクターを使って『クトゥルフ神話TRPG』を紹介した動画が投稿されて大きく注目を浴び、現在もなおその人気が継続しています。
新世代のTRPG『Kutulu』
そして、2022年注目のTRPGが『Kutulu(クトゥルー)』です。こちらもクトゥルフ神話をモチーフとしたTRPGですが、ルールはCoCとは全く異なります。
謎解きに焦点が当てられており、シナリオの謎を解くのに必要な情報はキャラクターが持っている技能レベルに応じてダイスを振ることなく渡されます。また、CoCでいう正気度にあたるデータがプレイヤーには秘匿されていること、またゲームマスターはキャラクターが見て感じたことしか描写しないことも大きな特徴です。このため今見聞きしているものは本当に起きていることか幻覚なのか、キャラクターはおろかプレイヤーにも判断ができません。ラヴクラフトの小説の語り手のような視点で没入感高く遊べるのが魅力です。
もともとKutuluは2017年にスウェーデンでリリースされたTRPGです。2022年2月に日本でKutuluを紹介したツイートが数千リツイートされたことをきっかけに、なんと4月下旬には日本語版がPDFでリリースされました。SNSが趣味の発信の場として日常的に使われている現代ならではの広まり方をしたTRPGといえるでしょう。
TRPGはどこで遊べるの?
TRPGに興味をもったけど、周りで一緒に遊んでくれる友人がいない場合はどうすればよいのでしょうか?
謎解きやマーダーミステリーとは異なり、TRPGを常設で遊べる店舗は多くありませんが、東京・神楽坂にはTRPGカフェ『モノドラコ』があり、店員や常連客がゲームマスターとして、TRPGセッションのプレイヤーを募集しています。他にも、有志が公民館などの公共施設を借りて開催する「コンベンション」と呼ばれるTRPGを遊ぶイベントが各地で開催されています。
またコロナ禍の現在ではオンラインセッションがかなり活発化しており、Twitterでセッション募集が行われているほか、TRPG専門SNS『TRPGオンセン」でもセッション募集が盛んに行われています。
TRPGはたったテーブル1枚の上で繰り広げられる遊びですが、言葉や想像、そしてサイコロの力でファンタジー世界の冒険から館を脱出するホラー、はたまた超能力バトルなど様々な非日常を体験できる素晴らしい体験型コンテンツでもあります。少しでも興味があったら、ぜひ遊ぶための一歩を踏み出してみてくださいね。
文:上総観久(かずさ・みく)
ゼロ年代からTRPGを遊んでいるTRPGプレイヤー。長年オフラインセッション専門だったが、コロナをきっかけに本格的にオンラインセッションでTRPGを遊び始めた。
Twitter @dragoste_eu
編集:田中宏明(IGDA日本SIG-体験型エンタメ/ATOMO編集長)
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