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【ATOMO連載】体験型エンタメ情報局出張所 #4「リアルな証拠品が登場する体験型ミステリー」(2023年1月号掲載)
全国の体験型エンタメ施設/店舗等にて隔月刊で配布中の体験型エンタメ情報誌「ATOMO」で連載している「体験型エンタメ情報局出張所」のバックナンバーを紹介。この連載では毎回体験型エンタメやそれに近しいカテゴリをピックアップして簡単な解説を行っています(2023年1月号掲載分/表記等は掲載時点のものです)
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リアルな捜査資料が入ったSCRAPの犯罪捜査ゲーム『DETECTIVEX CASE FILE#1御仏の殺人』(以下『御仏の殺人』)が売れているようです。そこで今回は、リアルな証拠品が登場する体験型ミステリーを取り上げたいと思います。
道尾秀介氏✕SCRAPタッグが生んだ『御仏の殺人』
まずはその『御仏の殺人』から。作家の道尾秀介氏とSCRAPがタッグを組んだゲームです。
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パッケージの中には事件が起きた寺の見間取り図や、被害者のインタビュー記事、検視調解剖報告書、現場の写真、ビデオ映像、現場で検出された指紋、容疑者たちの取り調べ調書など、さまざまな資料が同封されており、それらを調べながら事件を解いていきます。
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ネタバレになるので詳しくは書けませんが、道尾氏らしい物語展開もあって、道尾氏とSCRAPそれぞれの得意な部分がうまく活かされた作品になっています。「FILE#1」とあるように今後のシリーズ展開も念頭においているようで、更に進化した続編に期待したいところです。(追記:2024年に2作目も発売されました)
月間売上15万個の『Hunt A Killer』シリーズ
次に取り上げるのは、『御仏の殺人』にも影響を与えたと思われる『Hunt A Killer』です。
2016年からアメリカでスタートしたこのシリーズは『御仏の殺人』と同じようにパッケージにさまざまな証拠品が入っているミステリーゲームですが、違うのはサブスク形式で毎月新しいパッケージが送られてくるということです。
各パッケージ単体でも楽しむことができますが、6ヶ月続けると大きなエピソードが完結するという形式になっており、サブスクがうまく活かされた形式になっています。(最近は1パッケージで完結する作品も出てきていますが)創業時はわずか56人の購読者でスタートしたというこのシリーズは、その斬新さから今や月間の総出荷数15万個という大ヒット作となりました。
英語版しかないのでちょっとハードルは高いですが、ヒントサイトもしっかりあるので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
オリジナルは1936年!書籍『マイアミ沖殺人事件』
では、こういったリアルな証拠品の入ったミステリーエンタメが最近のものか、というとそうではありません。私の知る範囲では80年以上前から存在しています。中央公論社から1982年に日本語版が発売された書籍『マイアミ沖殺人事件』は、リアルな証拠品が綴じ込まれている書籍ですが、実はこの本のオリジナル版が発売されたのは1936年!なのです。(日本語版の元になったのは1979年のリメイク版)
日本語版の表紙には「世界で初めて企画された捜査ファイル・スタイルの推理小説」と書かれており、この本の特長をうまく表現しています。調査書や写真などの紙モノだけでなく、血痕のついたカーテンの一部や、頭髪、マッチの燃えカスなどがそのまま書籍に綴じ込まれているのは、いま見ても斬新です。
『マイアミ沖殺人事件』は発売当時かなり売れたようで続編と合わせて翻訳版が4作、さらに日本独自の企画として石ノ森章太郎氏の「佐武と市捕物控」を使った日本オリジナルの『死やらく生』も発売されました。特に1作目の『マイアミ沖殺人事件』はヒットしたためか、今でも手頃な価格で古書が手に入りますが、もし入手したい場合は文庫版だけは買わないようにしましょう。証拠品がすべて写真になってしまってこの本の特長が台無しになっています。
事件もライブで楽しめる『ミステリーナイト』
証拠品だけでなく、事件そのものもリアルな体験をしたいと思う方には、演劇型ミステリーイベント『ミステリーナイト』がオススメです。
スタートは1987年という非常に歴史のあるイベントです。新型コロナの影響で3年間中断していましたが、2022年の夏についに復活しました。眼の前の舞台上で事件が発生し、そこに登場する容疑者の行動・発言や、展示されている証拠品や証言などによって犯人とそのトリックを暴き出す本格ミステリーイベントです。ホテルに宿泊するイベントのためそれなりの参加費はかかりますが、自分自身で参加する探偵捜査のライブ感はなかなか得られない体験です。
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主催するE-Pin企画は、『ミステリーナイト』以外にもさまざまなライブ型ミステリーイベントを開催しています。参加者と同じ空間で事件が起きて臨場感が更に増している『ミステリー・ザ・サード』や、いくつもの事件が最後にイマーシブシアター的につながっていく『密室迷宮倶楽部』、旅行ツアー形式で事件が起きる『探偵ミステリーツアー』などなど。コロナで3年お休みしましたが、2023年は復活するとのことで期待したいところです。
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(執筆:SIG-体験型エンタテインメント石川淳一/編集:田中宏明)
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