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日本の現実が教科書のファイナンス理論に追いついたらしい

銀行の人とは定期的に会社の用事で会うのですが(主に銀行の人事異動の挨拶だが)、雑談のついでにやはり金利や為替については聞くようにしています。まあ為替については銀行の連中は円高になると言い続けて全く当たりませんが。そんな彼らが金利の話題になると、やや興奮した口調で「2X年働いてついに金利があがるんですよ!!」と言われたことがありました。実際に入行以来合併と支店統廃合でポジションも減っていき、40を過ぎたあたりから黄昏研修を受けさせられると酒を飲みながら自虐が入っていた彼らからしたら、漸くビジネスが成長する環境になって感慨深いのかもしれません。

もっとも2024年末の挨拶に来られた時には「人数では20%弱の海外が収益の半分を稼ぐようになって益々国内はリストラなんですよ、HAHAHA」って言っておられたので国内で働く人にはまだまだ難しいのかもしれません。。。

さて、ファイナンス畑の人間なら意思決定に割引率というのを使うと習ってきたかと思います。英訳が悪いのかもしれませんが、いまいちピンと来ないこの概念も、最近の金利や物価の上昇で漸く考慮に値するようになったように思えます。なんせ割引率?金利のこと?ほぼゼロじゃん、っていうね。
割引率=リスクフリーレート+リスクプレミアムなんですけど、長く続いた超低金利政策と内部留保を積み上げて投資に消極的だった日系大企業でどれくらい意識されてたのか微妙です。外資系企業の日本法人なんかでも2桁成長のターゲットやらが来ても日本のGDPはほぼゼロ成長でそんなの無理だって真顔で事業部長あたりがよく言ってましたが。そういう時には私はたかだか1000億かそこらの売上でGDPとか関係ないだろ、競合からシェア取ってこいよカスみたいなことをオブラードに包んで話すようにしていました。

海外帰りのMBAホルダーなんかが日本で冷遇される話は以前はよく聞いたものですが、英語かぶれがデフレの日本で割引率10%を超えないと投資する価値が無い(キリッとか言ってたらこいつ頭おかしいんじゃないかって思われたとしても解らなくはない。そんな感じで主に米国発のファイナンス理論にある話というのはあくまで教科書の中の話で特に日本で現実に適用するとしても、浮世離れした感じは否めませんでした。

しかしながら、2023年くらいから急激に円の価値が毀損されていくのは多くの人が実感できたのではないかと思います。例えば都心のマンション価格が僅か数か月で20%くらい上昇したり、インフレのはずのアメリカドルが相対的に物価上昇が見られない日本円に対してやたら強かったり、コロナ後で飲食店のランチが10%くらいカジュアルに値上げされたり。なんかコンビニのお菓子のパッケージが薄く空気ばかりになったり。個人的な体感では10~30%くらい日本円の購買力は落ちたように感じています。
物価上昇や金利の上昇の兆しが出てくると、将来価値の低減や資本コストの重要性が急に現実味を帯びてきます。これまでは投資判断が「現金が余っているから回せばいい」で済んだ企業も、時間価値や投資効率を真剣に考える時期に入っているのかもしれません。

そうなってくるとファイナンスの教科書にある手元の1万円の価値は1年後の1万円よりも価値が高いみたいな与太話も、値下がりすると機会をまって見てたらもっと値上がりしてタワーマンション買えなくなっちゃったみたいな。去年と同じようにやってたら社会保障費で手取りも減って物価上昇でなんか生活が厳しいとか。今までとなんか違くね?って感じることが増えて、少なくとも私はこれまでと同じにやってたらよくないのだろうなと思うことが増えてきました。

割引率が機能する世界では現状維持では下りのエスカレーターに乗っているようなもので、将来どんどん苦しくなってしまいます。インフレと同程度に稼ぐ力を持って漸く現状維持、生活を良くしたいならば+5%~10%くらい頑張らないと中々実感できないと思います。実際やってみるとワークライフバランス(笑)みたいなことを言ってる余裕はぶっちゃけなくて、やはり圧倒的成長でしか自分は救えない。現実に平均+5%~10%くらい賃金を上げようと思うならば、サラリーマンならやはり出世してポジションを上げるくらいしかないのです。これが個人事業主とかだと請求書をどんどん上げていくことになるのですが、そこはダイレクトな価格競争があると思われるのでやはり楽な道は無さそうです。

個人と企業のこれからを考えるなら月並みな結論としてはやはり、
1)インフレ連動型の投資: 手元資金の価値を守るため、実物資産(不動産、商品)やドル建て投資
2)スキルの向上と競争力強化: 労働市場の付加価値を高めるため、専門性やスキル向上に投資
3)海外収益の最大化: 国内市場の伸び悩みを補うため、海外展開や外貨建て収益の強化
みたいな面白くもなんともない結論になってしまうようです。

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