ジョブ型雇用の行きつく先について
コロナ禍で久しぶりに同僚とランチを一緒に取りながら話したことについてまとめておきましょう。
産業によって優先順位や進化の進み方は結構違って米系IT企業が15年くらい前に終わらせてるイベントも別の業界はまだやってたりします。メディカル業界はそれほど遅れてる業界という認識はありませんが、私からするとBusiness transformation, Center of Excellenceみたいな単語はとっくの昔に経験済みだったりするのでかつて来た道という思いはあります。コンサルティング業界なんかはそうやって同じネタを順番に売り歩いて何年もメシの種にしているんでしょうね。
さて、高難度の複数のプロジェクトを同時進行させているという外資系企業にありがちな曲芸飛行により圧倒的にリソースが足りなくなった結果、7割くらいがBPOとコンサルティング会社になっています。コンサルタントには1人月200万前後は払っているはずです。
それって高コストで内部に知見も溜まらんし勿体ないんじゃないの?って話したのですが。曰く、社員にすると見えないコストが色々あって割高に見えてもそれなりに帳尻が合うとのこと。では具体的に見えないコストとは?
1)まず採用。中途採用なんかは年収の30%~35%のコストがかかりますので400万くらいか。鶴の一声で業務が海外に移転するご時世果たして無期雇用はペイするのか。
2)#1に関連して育成。
3)ピープルマネジメントに費やすコスト。これはよりけりですがよりコアな人材に集中という意味ではありでしょう。部下がちょっと機嫌を損ねるとハラスメントとか言われるご時世ですし、関わりたくないというのもあるかもしれん。
コンサルティング会社に丸投げしたら契約によりますが採用と育成は不要、パフォーマンスや相性に問題があれば人を変えればいい。確かに無期雇用だと特に辞めていただかないといけない事情ができた際に年収の数年分のコストが追加でかかるので広い視点では帳尻は合うように思えてきます。
では運用面ではどうか。
税務を例に出されていたのですが、会社のことをよく知らない仕事にすべてを初めから任せちゃうと間違えるし作業も遅いしとても無駄になります。そんなわけで何を社員にして、何をBPOにして、何をプロフェッショナルサービスに委ねるかのアレンジが重要で、定型業務(BPO)、専門家の見解(プロフェッショナルサービス)、最終的なクオリティチェックと問題対応(社員)みたいな感じで分けることで総コストを上手く抑えられる感じかと。全部丸投げはぼったくられるだけなのでやってはいけませんね。
逆に全部内製化したら本当に安いのか?というと、特に税務だと専門家に確認したのか?という質問を必ず受けますし、同様に監査法人にその処理確認したの?ってなるわけで。何かあった時に社員を守る意味でも適宜インボルブしたほうが結局は物事はスムーズにいくものです。あと、税務も決算も季節労働的な側面がどうしてもありますので、繁忙期に合わせてリソースを持つのが正解か?という視点もあるかと。
そんな話をしていたのですが、そうなると社員は何をする人なのかってなるのですが説明責任とプロセスのオーナーシップくらい?でしょうか。特にバックオフィスについては業務の大半をITにリプレイスされるか、資格持ちのプロフェッショナルファームに外注されるという流れは業界により差異があれど方向性は変わらないと思います。まあ日本だけは経済合理性が成り立たないくらいの低賃金路線で文句を言いながら粘るのかもしれません。なかなか自分の周囲だけを見てると想像できないかもしれませんが、日本のバックオフィスのIT合理化や専門家の活用が遅れてる理由なんか、解雇規制云々より安くてその割に便利な人がいっぱいいるからです。人間ほど融通が利いて高性能なリソースはありませんから。
課題があるとしたらやはり人が育たないんじゃないかってあたりですが、アメリカなんかみたいに資格取って監査法人に入って事業会社に行くというキャリアパスが当たり前になるのではないかと思います。まあ日本の公認会計士の無駄な難易度がそれを遅らせてる面はあると思っていてUSCPAみたいに働きながら取れるならば前述の流れはもっと起きやすいと思います。(経理財務)業務の遂行に必ずしも必要が無い資格取得に数年間を費やすというのはやはり無駄でしょう。この辺は社会人大学院が補うのかもしれませんが、今の国内社会人大学院への評価はそういう意味ではまだまだ低いでしょうね。いずれにせよジョブ型雇用を推進すると資格や高等教育機関が重要になると思います。
さてメンバーシップ型雇用は生き残れるのかですが、国内の議論なんかは実はどうでもいいと思っており、日本だけユニークな制度を維持しようと思っても人が集まりませんし無理ですから。
なお最後に中途採用を募集した経験からポテンシャルでは見なくなる35歳以降の総合職というのは専門職へのコンバートはかなり厳しいとだけ書いておきます。経験不足で職務経歴書が圧倒的に見劣りしててその人を採ることを上手く説明できません。
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