Ami 第1章-アミとの出会い②
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夜が来て、少し寒くなってきました。
彼はそれに気づき、僕に尋ねました。
「寒くないですか?」
僕は突然、寒くないように感じましたが、自分の中のその急激な変化にさえ、その時には、気づいていませんでした。
数分後、僕は彼に「これからどうするの?」と聞きました。
すると彼は空を見上げたまま「使命を果たします。」と答えたのです。
僕とは違う、休暇中のただの学生ではない、何か重要な少年を前にしているのだと思いました。
飛行機を操縦し、ユニフォームを着て、何か秘密の任務があるのだろう......。
しかし、その一方で、彼はただの背の低い少年でした。
僕は彼にどこのクラブに所属しているのか、あるいはどんな任務があるのか、あえて尋ねませんでした。
彼は、とても小さいのに、何か尊敬や恐れのような感情を抱かせましたし、
とても物静かで何かが違っていたのです。
彼は、この事故によって少し意識がぼんやりとしているのかも知れないなとも思っていました。
「飛行機がなくなって
これからどうするの?」
「ん???何もなくなってなんかいません!」
と 彼は明るく答え、僕をさらに混乱さたのです。
「何処かへ行ってしまったんではないの?
全部壊れちゃったんでしょ?」
と言うと彼は「いいえ」と答えました。
「飛行機を海から引き上げることは可能なの?」と僕が尋ねると
「はい。
もちろん海から引き上げることも出来ます。」
と彼は同情したような表情で僕をみてから「あなたの名前は?」と言いました。
「ペドロだよ。」と僕は答えましたが、何か嫌な気持ちになり始めました。
この少年は僕の質問にはっきり答えず、話題を変えてしまったからです。
僕には、彼が「謎めいた男」、「僕より年上」を演じているように思え、
良い気持ちはしませんでした。
そんな僕のイライラに気づいたのか、彼は流れを変えようとして、
「ごめんね、ペドロ。気にしないで。
あなたは何歳ですか?」と尋ねました。
「13歳だよ。君は?」
すると彼はとても優しく笑いました。
彼の笑いは、まるで、くすぐったい時の赤ちゃんのようでしたが、飛行機を操縦できて、僕はできないので、僕より優れていることを示そうとしているようにも感じ、やはり僕はそれが気に入りませんでした。
でも彼は素敵な表情をしているのです。
真剣に悩むほどのことではないとも感じていたのです。
すると「私は、あなたが想像するよりもずっと長く生きています。」
と彼は笑顔で言いました。
彼はベルトから装置を取り外し、電源を入れるといくつかの明るいライトがつきました。
僕には、それが何か解かりませんでしたが、計算機の様な物だろうと想像しました。
なぜなら少年がその装置を見た時
「あなたは信じないでしょうが、私が生まれてから、あなた方の惑星が、太陽の周りをまわった回数は13回を遥かに超えているのです。」
と笑いながら言ったからです。
夜になり、美しい満月が海と浜辺一帯を照らしました。
彼は、僕が存在しないかのように、ずっと黙ってそのパノラマを、空を、星を、月を眺めたままでした。
僕は、この少年はここの出身ではないのではないか、誰も知らない遠くから来たのではないかと思うようになりました。
しかし、時間が経つと彼の沈黙と謎がまた好きではなくなってきたのです。
僕は彼の顔を見ました。
10歳か11歳以上には見えないのにもっと年上のような気配があり、彼は飛行機のパイロットなのです......。
彼は小人ではないだろうか?
「エイリアンを信じている人もいます。」
彼は僕の考えを察したのか、ほとんど気が抜けたような表情で言いました。
僕は口を開く前にしばらく考えました。
彼は、好奇心と光に満ちた目で私を見ていましたが、夜の星が彼の瞳孔に映っているようで、普通ではありえないほど輝いて見えました。
そして彼の飛行機が燃えて海に落ちたのを思い出したのです。
彼によると壊れていなかったらしのですが・・・。
やっぱり、あれは何か、とても、とても奇妙でした。
彼の現れ方、奇妙な符号のついた彼の計算機、彼のアクセント、彼の髪、彼のスーツ・・・全てがです。
あと子供は飛行機を操縦しない... 。
「あなたは......地球外生命体ですか?」
と僕は、首筋の毛が逆立つのを感じながら尋ねてみました。
「もし、そうだとしたら、怖いですか?」
その時、僕は彼が別の世界から来たことを知ったのです。
僕は、怖くなったけど、彼の目が「怖がらなくて良いんだよ」と励ましてくれているように見えました。
「き、君は......悪い人?」
僕が、恥ずかしそうに尋ねると、彼は笑いました。
「たぶん、あなたの方がいたずら好きです。」
僕は、彼のその言葉にとても驚きました。
僕は、誰にも迷惑をかけず、成績もよく、むしろつまらない少年だったのですから。
「なぜ、そんなことを言うの?」
と僕が尋ねると「あなたは地球人だからです。」と彼は答えました。
僕たち地球人は優秀ではない、という意味だと理解し、少し気にさわったけど、とりあえず無視することにしました。
僕の惑星の自尊心を下げようとする、その宇宙人の少年には、とても気を遣うことにしたのです。
しかし、僕が別の世界から来た存在と話をしているというのは、本当なのだろうか?
僕はとても信じることができませんでした。
「あなたは...本当にエイリアンなの?」
「パニックにならないで!」
と、彼は笑いながら、冗談を言うように僕をほっとさせました。
「この宇宙は生命でいっぱいです。
この宇宙には何百万という世界があり、そこには善良な人々が住んでいるのです。」
と星を指さしながら言いました。
彼の言葉は、僕に不思議な影響を与え、何故か僕は、他のたくさんの世界に善良な人々がいることを理解し、疑いや恐れがどこかへ行ってしまいました。
そして、僕は、彼が他の惑星から来た存在であることを、これ以上複雑に考えずに受け入れることにしたのです。
彼がフレンドリーで害を与える様には見えなかったからです。
でも、まだ気になるのは、彼が、僕達地球人を侮辱した事です 。
「なぜ僕たち地球人は悪い人間だと言うの?」と僕が尋ねると
「地球から見る空は、なんと美しいことでしょう。
この大気が、空に輝きと色を与えているのです。」
と彼は空を眺めながら言いました。
僕はまた嫌な気分になりました。
またしても、彼が僕の質問に答えなかったので、もっと嫌になったのです。
自分は悪くないから、悪いと思われるのは嫌なんだ。
それどころか大人になったらハンターになりたかったんだ。
動物やかわいそうな子を捕らえるんじゃなく、動物も含めて悪者のハンターになって、大きな穴に全部入れて、投げ飛ばして、この世から悪がいなくなるようにしたかったんだ。
「プレアデスには高度な文明があります。
いや、信じないでしょうが...。」
「素晴らしい?
でもはっきりさせておきたいのは、僕たちのすべてが悪人ではないんだよ!」
「あの星を見てください、100万年前はこうでした。
でも今はもう存在しません。
その地域の文明がゼータ・レティキュリス・コルドンを植民地化し、今住んでいるのは......。」
「全員が悪者ではないんだよ。
どうして僕たちを悪党なんて言うの?」
僕は彼を遮って繰り返しました。
「そんなことは言っていません。」
彼は答えました。
彼は、輝く目で空を見て、そして「奇跡だ...。」と呟きました。
「君が言ったんだよ!」
僕は声を張り上げながら、なんとか彼を空想の中から取り戻そうとしたのです。
僕にしてみれば、彼の様子は、近所の女の子がスクリーンに映るアイドルを見て、理屈抜きで夢中になっているようなものに見えましたから。
すると、彼は、僕を注意深く見ましたが、怒っているようには見えませんでした。
「他の世界に比べて、この世界には優しさも共感も連帯感もあまりない、という意味です。」
「ほらね?僕たちがガラクタだと言っているわけだ......。」
「そんな事を意味しているのではありせん。」
と、彼は微笑みながら僕の頭を撫でようとしたのです。
僕は、それがさらに気に障り、頭を引きました。
彼が僕を子供のように、特に僕より年下の男の子のように扱うのにイライラしたのです。
僕は学校では最優秀生徒の1人だし、チェスの試合では優勝して、新聞の学校スポーツのチェスの年少者コーナーにも名前が載った事もあるのですから。
しかも、僕はもうすぐ13歳です・・・。
「この星がそんなに悪いのなら、君はここで何をしているんだい?」
「えーと、月が海にどう映っているか気づいていますか?」
彼は、僕を無視して話題を変え続けました。
「また!月の反射を見ろと言いに来たの?」
「そうかも知れません。
私たちが宇宙に浮いていることを実感しましたか?」
彼がそう言った時、嫌悪感で頭が曇りました。
真実を理解したつもりでいましたが、それまでの根拠を一気に忘れ、突然、この少年が狂っているように思えたのです。
そうか!あんな奇妙な事を言うなんて、彼は地球外生命体だと思っていたけど、金持ちのイカれた少年で、数百万はかかったであろうそのスーツを纏って、幻想的な物語で人を騙したかったのだ。
もしかしたら、あの偽者は飛行機も持っていなかったかもしれないし、水の中から照明弾を投げて僕を混乱させたのかもしれないし、他にどんなトリックがあるのかわからないけど、僕は家に帰りたくなって、彼のファンタスティックな話を、数分間信じたことを後悔しました。
もしかしたら、彼は僕をからかっていたのかもしれません。
・・・「エイリアン」・・・そして僕はそれを信じてしまったのです。
僕は恥ずかしくなり、自分にも彼にも腹が立ちました。
そして彼の鼻を一発殴ってやりたくなったのです。
すると彼が「私の鼻はあまりにも醜いと思いませんか?」と言いました。
僕は、固まってしまい恐怖を感じました。
彼は、僕の考えを読んだのだろうか...?
僕は彼を見て、彼が勝利の笑みを浮かべて嘲笑していると思いました。
僕はそれが嫌で、僕が考えたことと、彼が言ったことの間に、偶然の一致があっただけなのだと信じようと思いました。
もし、それが真実だとしても、僕はそれを確かめなければならなかったのです。
もしかしたら、僕は別の世界から来た存在、思考を読むことができるエイリアンと直面していたのかもしれない......。
あるいは、クレイジーな少年を前にしているのかもしれない。
すると良い考えが浮かびました。
「僕が何を考えているか当ててみて!」
僕はそう言って、バースデーケーキを想像してみたのです。
「どうして私があなたの考えを当てられると思うのですか?」
と彼は尋ねました。
「いや、何のために?冗談だよ。」
彼は僕の不器用なごまかしを面白がっている様子で「あなたがすでに持っているすべての証拠で十分ではありませんか?」
でも、僕は1ミリも譲るつもりはありません。
誕生日ケーキのことを言わなければ、何も気づかれないないでしょうから。
「証拠?何の証拠?何の証拠?」
「一体何の話ですか?」
彼は足を伸ばし、岩に肘をつきながら答えました。
「ペドロ、他の種類の現実、他の存在、もっと見るのが難しい他の世界、
他の世界の知能のための、そして他のコミュニケーションの方法があるのです.....。」
「見るのが難しいとは一体どういう意味?」
僕は、彼がまるで奇妙なおかしなことを言っていると感じているように、馬鹿を装って尋ねました。
すると「そのバースデーケーキの上に小さなろうそくが幾つかついています。」
と彼は微笑みながら言ったのです。
それは胃に一撃を加えるようなものでした。
泣きたくなるくらい、ばかばかしく、気まずい気持ちになりました。
やっと気を取り直した僕は、彼を疑っていたことを謝りましたが、彼は僕に嫌な顔をせず、何も気にせず笑いました。
そして僕はもう二度と彼を疑わないと決めたのです。