Ami Ⅲ 第17章(最終章)-援助計画
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ビーチタウンの家に到着しました。
そこでは、なんと、クラトがヨガのレッスンを受けていたのです。
「リリー、どうやったら、こんなポーズが出来るんだい?
肩が外れそうじゃよ...。
お、帰って来たぞ!」
「あの子たちの顔を見れば、許可証が出たかどうかわかるでしょう。」
と言うおばあちゃんの声が聞こえました。
「おばあちゃん、ビンカがずっとここにいられる事になったんだよ!」
と僕が言うと、
「主よ、ありがとう、聖シリル、ありがとう、アミ、ありがとう!」とおばあちゃん。
すると、「本当に獣のようなゴローの野郎が許可をだしたのかい?」
と若返ったクラトが尋ねたのです。
「そうなんだよ、すごく喜んでくれたんだ...。」
「じゃが、そんなはずは...。
テリは固定観念から抜け出せんはずなんじゃがな...。
何をしたんじゃ、アミ?
催眠術をかけたのかい?」
「クラト、何を言っているのですか。
そんなことしていませんよ。」
「あ... じゃあ、スワマになったんじゃな。
そうじゃ、そうじゃ。
そうなんじゃろう?」
僕たちは、彼が要点を正しく捉えている事に、一瞬戸惑ってしまったのです。
アミも、驚いた様子で彼を見ていました。
「そうです、クラト、それが、まさに彼に起こったことなのです。
どうしてわかったのですか?」
「ああ、アミみたいな超心理学少年だけが精神的な力を持ってるわけではないんじゃよ...。」
「じゃあ、どうして知ってるの?」
とビンカも驚いて目を丸くして尋ねました。
「わしはテリじゃったからな。
彼らは、決して心を変えられないって知っとるんじゃ。ホー、ホー、ホー 。」
すると、アミは思慮深く言いました。
「クラトの言うとおりです。
スワマに変身してなかったら、ゴローが許可を与えたかどうか...。」
「彼が変身したのは、私が聖シリルを通して神にすべてを解決してくれるように頼んだからなのよ。
神が私の言うことを聞いて彼を変身させたてくれたに違いないわ。
ほら、神は存在するのよ、子供たち、神は本当に存在するの。」
すると「さっき、クラトとペドロに言ったのは、まさにそのことなのです。」とアミ。
「そうじゃな。その通りじゃ。
だから、わしらは、ワインで祝わなきゃならんのじゃ。」
「クラト、そんなことばかり考えないで下さい。」
「味見じゃよ。味見じゃ。
わしは、酒好き紳士の美食家なんじゃよ...。
で、ゴローとクロルカはわしの楽園をどう評価したんじゃ?
きっと一生そこにいると決めたんじゃろうな。
そうじゃろ?」
僕は、また、固まってしまいました。
すると、アミが笑い出し、こう言ったのです。
「そうです、クラト。
あなたの想像通りです。
今、彼らはとても幸せです。」
ビンカは、ますます戸惑って言いました。
「クラト、あなたには本当に不思議な力があると思うんだけど...。」
「どうかな?
それは、違うよ、美少女さん。
お前さんをだましてどうする。
理屈は通っとる。
行く当てもなく、タダで農場に住める小屋があって、マッフル酒もガラボロもいっぱいあるんじゃ...。
掘り出し物じゃよ! ホー、ホー、ホー!
で、可哀想な... トラスクは?」
「もちろん、幸せです。
パパとママが出来たのですから。」
「ああ...あの裏切り者め!
ブゴ(犬のような動物:トラスクの種類)は女と同じで浮気者じゃからな!」
「クラト、それは前時代的な、男性の考えです。」
「冗談じゃよ、アミ。
実はとても嬉しいんじゃ。
わしの古い心が癒されたよ...。
いやいや、それは以前の話。
今は、アミのお陰で若返ったんじゃからな。
それで、何か持ってきてくれたのかい?
ガラボロはどこじゃ?」
「いや、クラト。
鍋の中でズタズタにされるより、空に舞う幸せそうなガラボロを見たいのです。」
「その通りじゃ、アミ。
二度とそんな有害なことはしないと約束するよ...。」
「もう肉は食べないの、クラト?」
「もう二度とガラボロを食べないってことじゃよ。
もうどこへ行っても手に入らんのじゃからな...。」
「なんて面白い冗談でしょう…。」
とアミは笑わずに真剣に言いました。
「この世界での新しい生活の準備を始めます。
まず、ビンカの外見の問題を解決しましょう。
直ぐに終わりますから。
船に行きますよ、ビンカ。」
「うわ~~~!!!」
彼女は嬉しそうに叫びました。
「僕も行くよ、彼女がここから居なくならないように確認してたいんだ。」
「ペドロ、あなたはここにいて下さい。
私が仕事をしている間、アドバイザーがいつも不満を言うのは気が散るのです。
行きましょう、ビンカ。
クラトも一緒に行きましょう。」
「でも、わしはすでにカッコいいんじゃよ、アミ...。
まあ、もっと可愛く、若くしたいんなら、それはそれで構わんのじゃけどな。」
「そんなことを考える必要はありません。
この世界に適応させるために、もうひとつ小さな工夫をしなければならないのです。
あまり時間がないから、急ぎましょう。」
彼らは去り、僕とおばあちゃんは話し続けました。
「ビクトルがここに現れたら、クラトとビンカのことをどうやって説明したらいいのかな?
おばあちゃん...。」
「彼に本当のことは言えないわね…。
でも私は嘘が嫌いなのよ、ペドロ...。」
「それに、彼らはスペイン語を話せないからね。
どこの国から来たかと尋ねられれば、他の国から来たと答えるだろうし、もし彼がその国の言葉を少しでも知っていれば...。
ビクトルは何でも知ってるからね。
古代ギリシャ語ですら学んだらしいよ。」
「そうね、それに彼の前では名前で呼べないわ、だって本に書いてあるのと同じだから...。」
「その通りだよ、おばあちゃん...。」
「彼らには正式な書類もないし...。
で、ビンカはどうやって勉強するの?
クラトとどうやって結婚するの?」
「えーーー!
おばちゃん、クラトと結婚するつもりなの?!」
すると、彼女はとても厳しい表情を僕に向けました。
「ああ...おばあちゃんはとても信心深い人だからね...。
もう1つの問題は、クラトが何をするのか、どんな仕事をするかだよ。」
「まあ、アミと聖シリルを通して、神が助けてくれるでしょう。」
その瞬間、庭のドアから家に入る力強い男性の声が聞こえたのです。
「ここに誰かいるのかい?」
それはスペイン語でしたが、見知らぬ声でした。
女性の声も聞こえたので一人ではないのでしょう。
「おばあちゃん、誰なの?」
「わからないわ...あの声には聞き覚えがないわ...。」
「アミがこの瞬間に姿を現さないことを祈るよ...だって...。」
すると「ただいま。」
と、ちょうどアミが帰ってきてしまったのです。
アミが入口に入ったところでした。
見知らぬ2人組に会ったのだろうと思い、僕は困惑してしまいました。
しかし、そこにいたのはクラトでした。
「スペイン語で話すのって面白いな、ホー、ホー、ホー。」
なんと、クラトが完璧なスペイン語で話しかけてきたのです。
僕は、驚きのあまり真っ青になっていたにちがいありません。
すると「はーい!、愛しいペドロ!」と、黒くて少しウェーブのかかった髪に、大きくて美しい黒い瞳をしたかわいらしい女の子も現れました。
彼女は美しい体にぴったりとしたビーチウェアに身を包んでいたのです。
そして、彼女はスペイン語を話していました。
あまりにも可愛いかったので、僕はビンカを裏切っているのではないかと心配になったほどです。
でも、直ぐ、僕は彼女がビンカだと気づいたのです!
でも、彼女の外見は、とても可愛らしいけど、かなり違って見えましたが。
うーん...。
でも顔は同じなんです。
それに、彼女は今、僕と同じくらいの身長でした。
すると、僕達が心臓発作を起こす前にアミが説明してくれました。
「スミレの瞳とピンクの髪がビクトルに怪しまれないように、今は完全に普通の地球の女の子にしてみました。
身長も少し低くしたのです。
スペイン語が話せるようになったのは、どんな言語でも数秒で習得できる装置を使いました。」
「ホー、ホー、ホー!
スペイン語の文法も語彙も、1万8千の詩も、550の小説も、地球史の要約も、人類のあらゆる知識の統合も、最も重要な普遍的原理と秘密も。
これは素晴らしい! ホー、ホー、ホー!」
クラトの発音はほぼ完璧でした。
「私も同じよ。」
とビンカも嬉しそうに言ったのです。
僕は驚きから立ち直り、状況を理解すると、すぐに彼女の耳を見たくなりました。
すると、彼女は髪を持ち上げたのです。
「うーん...。普通の耳、素敵だけど、普通。
でも、とてもきれいだよ、ビンカ...。
外見はちょっと変わったけど、内面はまったく同じだね、もう君を見上げる必要もないしね。」
やっと僕たちは通訳のヘッドホンを外しました。
もう必要ないのです。
「それに、アミは、足を太くしてくれたのよ!」
「そうです。
地球上の普通より少し細かったので。
ビンカの虚栄心に媚びるためにやったわけじゃありません。」
すると「え?虚栄心よ。」
とビンカは答えましたが、
「何を言ってるのですか、ビンカ?」とアミ。
「何も、聖書のコヘレトの言葉(伝道者の書)の1節を思い出したのよ。」
「コヘレトの言葉って何?」
と僕尋ねました。
「聖書の一冊よ。」
彼女はそう答え、僕の無知を軽く笑ったのです。
僕は何か嫌な気分でした...。
すると、クラトも楽しそうに、まるでイギリスの俳優を真似るかのように、大げさに身振り手振りをしながら、詩を暗唱し始めたのです。
コミカルな過剰の動作をつけて…。
「嫉妬は無知のしるしであり、人真似は自殺行為である。
自分で何とかするしかないと悟った時から人の成長は始まるのだ。」
ホー、ホー、ホー!ラルフ・ウォルドー・エマーソン、1803年マサチューセッツ州ボストン生まれのアメリカの詩人の言葉じゃよ。
ホー、ホー、ホー!」
すると、ビンカもとても嬉しそうにこう付け加えました。
「賢明なる善が宇宙に満ちていようとも、人に収穫が訪れるのは、その人が耕すよう与えられた大地での労働によるのみである。」
彼女は同じ詩の続きを朗読し、彼女もまたクラトと同じことを知っていることを示したのです。
そして僕は、これから彼女との間には大きな文化的隔たりがあることに苦悶の思いで気づき、こう抗議しました。
「もう。不公平すぎるよ、アミ。
彼女の隣にいると僕は無知になっちゃうよ...。」
誰も僕の話を聞いてくれませんでした。
「ペドロ、私の新しい脚、気に入った?」
と、彼女は履いていた短いスカートを少し持ち上げながら、コケティッシュに僕に尋ねたのです。
「フーム!」
僕は、困ったようにそう言うと、一人で庭に出ました。
実は、僕が気になったのは彼女の外見の変化ではなく、逆に彼女が色々なことを知っているのに、僕は知らないという事実でした。
擦ると、アミが僕についてきて言いました。
「ペドロ、君が動揺するのは当然です。」
「ああ、同情してくれてありがとう...。」
彼は笑い出し、話を続けました。
「カップルにとって、文化的、精神的レベルが違いすぎるのは都合が悪いのです。
それはコミュニケーションやカップルでいることの意味を損なうのですから。
だからこそ、今この瞬間、あなたにも船に同行してもらいたいのです。
クラトやビンカが持っているのと同じ知識をあなたたちにも与えます。」
再び僕に明るい光が挿してきました。
「さあ、私と一緒に来て、それと、リリーも一緒に行きましょう。」
おばあちゃんにもアミは状況を説明しました。
彼女はあまり興味を示さなかったのですが、僕たちと一緒に来てくれたのです。
船に乗り込むと、アミは収納スペースからヘルメットのようなものを取り出し、僕の頭の形に合わせて、かぶせたました。
すると、突然、脳が非常に活性化し、むしろ心地よい感覚を感じ始めたのです。
数秒後、アミはプロセスが終わったと言ってヘルメットを外してくれました。
そしておばあちゃんにも同じことをしたのです。
僕は何の変化も感じなかったので、こう言いました。
「何も起こってないよ、アミ。前と同じだよ。」
「そうでしょうか?
アムステルダム歴史博物館の住所を教えてください。」
「知ってるわけないよ。
え?待って、知ってる!
Voorburgwal 359...。
世界中の重要な建物の住所は全部知っているよ!」
「私はインターネット上のウェブサイトのアドレスを全部知ってるわ。」
おばあちゃんも嬉しそうに付け加えました。
「おばあちゃん、本当?」
「もちろんです。」とアミが答えました。
「じゃあ、電子動物園のホームページのアドレスを教えて。」
「http://netvet.wustl.edu/e-zoo.htm。」
なんと、おばあちゃんは、すかさずそう答えたのです。
僕はそれが正しいアドレスだと解っていました。
戦争、発見、重要な人物の誕生などの日付、原子の各部分、有名な小説の内容、地球の密度と重さ、普遍的な生命の基本、とても役に立つ秘密、などなど、僕とおばあちゃんはこの世界のことなら何でも知っていたのです!
全てです。
僕は、とてつもなく嬉しくなりました!!
特に、本を書くために従兄弟のビクトルの助けが必要なくなると判ったときは、本当に嬉しかったのです。
家に帰ると、クラトは僕のパソコンでインターネットに熱中していました。
ビンカは街の中心部を見に行っていたのです。
クラトによると、僕のソウルメイトは、新しい外見で、スペイン語を操る僕の世界を見に行きたがっていたと言っていました。
「どうしてインターネットに接続できたの、クラト?
パスワードなんて教えてないのに...。」
「どう言う事?
わしとビンカは、どんなコンピューター・システムでもパスワードを知ることができる、巧妙なトリックを思いついたんじゃよ、ペドロ。」
やっと僕の名前を正しく発音してくれました。
なぜだか僕の顔は少し赤らんでいました。
クラトが僕の大切な人と仲良くなっている事への嫉妬なのでしょうか?
しかし、彼がニューヨーク証券取引所のウェブページを閲覧しているのを見て、好奇心に駆られ、彼にこう尋ねたのです。
「クラト、そんなページを見て何をしているの?」
「コロンビア産のコーヒーを買っているんだ。
今は安いけど、来週には集中豪雨でコロンビアの農園が壊滅的な打撃を受け、価格が暴騰するからね。 ホー、ホー、ホー!」
またしても彼は僕を困惑させたのです。
「コロンビアで大雨が降るって、どうしてわかるの?」
「わしの膨大な気象学の知識のおかげじゃよ!」
その瞬間、どういうわけか、僕はクラトの言うことが本当であること、1週間後にコロンビアで大雨が降る条件が整っていることを理解したのです。
また、アミが私たちに与えてくれたこの世界に関する膨大なデータのおかげで、僕たちの頭脳はそう遠くない未来の気候条件を完璧に推測できることも明らかになりました。
「最も影響を受けるのは、まさにコーヒー農園がある地域よ。」
と祖母が言いました。
彼女もまた、この優れた知識を知っていたのです。
「おばあちゃん、僕たちは、お金には困ってなかったよね...。
でも、クラトは、法的な書類もないし、お金も持ってないのに、どうやって証券取引所で取引できるの?」
「わしには何もないけど、お前さんにはある。
お前の資金と名前で取引しとるんじゃ。
未成年なんだから、ゴローのようにわしが責任を持つのは当たり前じゃろ。
そうじゃな、アミ」
「その通りです、クラト。
銀河当局から見れば、君の言うとおりです。」
「でも、僕にはお金なんてないよ...。」
「あるんじゃよ。
国立銀行の口座番号432837-1だ。
知らなかったのかい?」
「そんなはずないよ、クラト 。」
「間違っとるのは、ペドロじゃよ。
わしのシステムのおかげで、この国の税務サービスに入ることができたんじゃ。
そこで銀行口座のリストを見た。
お前さんの苗字で検索したら、そこにあったんじゃよ。
口座の詳細も載っておった。
それでお前さんの銀行にオンラインでログインして、今、ニューヨークに送金しているところなんじゃ。」
「クラトの言っていることは本当よ、ペドロ。
ビクトルが口座を開いて、あなたの本から得た収入の10パーセントを入金してくれているのよ。
まあ、彼だけが知っている口座なんだけど…。」
「たった10パーセント?
まるで詐欺師だよね。
でも僕とは何も知らなかったのです...。」
「もちろん、未熟な若いうちにお金に目がくらんで欲しくなかったから、言わなかったんだけど......。
でも、今は、かなりの大金を持っているはずなのよ。」
「家と車が買えるくらいじゃ。
もちろん高価なものじゃないんじゃよ。
中古品なら買えるってことじゃ。」
とクラトは言いました。
「じゃが、そのお金をコーヒーに投資すると、来週には2倍の価値になっとるはずじゃよ。」
アミはあまり嬉しそうではありませんでした。
「それは憶測です、クラト。
ペドロのお金はきれいな金です。
多くの人に良い知識を与えて引き換えに得たお金なのです。
しかし、投機で得たお金は、十分に稼いだお金ではないのです。
それは集団からの窃盗なのです。
原因と結果の法則、ブーメランの法則は知っているでしょう。」
「じゃが、これは完全に合法的なことなんじゃよ、アミ... 。」
「地球上の法律の前では、合法です。
でも宇宙の普遍の法則では、公平ではない資源交換のシステムは合法ではありません。
それは、他の人より遥かに多くを知る事による「罠」ではないでしょうか。
だから、その操作を取り消したほうがいいのです、クラト。」
「フム... わしが "accept "をクリックする直前に、この小さな宇宙人がやってきおった...。
わかった、わかった。
キャンセルしたぞ。」
そこへ、ビンカが入ってきました。
「素晴らしい気分よ。
まるで自分じゃないみたいだわ。」
と彼女は言い、僕を抱きしめたのです。
再び、僕たちは時を超えた次元に入ってしまいました。
「エヘン...。」
「ああ、ごめんなさい。」
「どうして邪魔するの、アミ?
とても幸せそうなのに...。」
「おばあさん、私にはもう時間がありません。」
でも、僕は、クラトが1時間足らずの間に、どうしてこんなにたくさんのことを素早くこなしたのか理解できず、聞いてみたのです。
「わしが何を知っているかって?
この世界で物事が組織化されているシステムなら何でも知っておる。
わしはプロのコンピューター・サイエンティストだから、誰にも何も聞く必要もないし、何か知りたいことがあれば、どこでその情報を手に入れられるかもよく知っとるんじゃ。
簡単なことじゃ。
この世界で生きていくのがとても好きになりそうじゃよ...。
で、トレードは罪 なのかい?アミ?」
「何を取引するかによるのです。
害になるものを取引するのなら、そう、愛の法則の違反になります。
でも、それまで何もなかった場所に良いものを与えるのなら、そして、そこにそのものを必要としている人がいるのなら、そして値段の投機をしないのなら、それは良いことをしたことになるのです。
ブーメランの法則によれば悪いことは何ももたらさないでしょう。」
「アミ、それは良いことをもたらすの?」
「ええ、儲けはあるけど、それだけです。」
「ボルドーでワインの、国際的な格付けに従った高品質のワインを格安で提供しているそうなんじゃ。
ドバイの輸入業者がそのワインに興味を持っとるらしい。
この取引はコーヒーの取引ほど旨味のあるもんじゃないが、一度の取引で資本金を7.5パーセント増やすことができそうじゃ。
ホー、ホー、ホー!
楽して大儲けしようじゃないか、お前さんたち、任せとけ。」
「あなた達はきっと上手くやっていけます。」
とアミは微笑みながら言いました。
そして「やがて、あなた達は『利益』だけのために生まれてきたのではないことを思い出すでしょう。
そうすれば、あなたたち4人は、今持っている膨大な知識のおかげで、この世界の進化のためにもっと役に立つことができるようになるのです。」
僕はこの機会に、エマーソンの詩も知っていることを皆に示したくて、その続きを暗唱しました。
「自分に何ができるかは、自分以外の者には分からない。
いや、自分でもやってみるまではわからないものだ。」
それを聞いて、おばあちゃんがとても喜んでいました。
「そうなると、あとはビンカとクラトが新しい身分証を持つだけだね。」
「出発したらすぐに、この国の市民登録局で働くフェローシップの人たちに連絡する予定です。
2人の指紋と写真を渡すから、数日後には書類が郵送されてくるでしょう。
これから何と呼ばれたいですか?」
「わしの名前はボンド、ジェームズ・ボンドじゃ!」
クラトはとても力強く英語で言いました。
「ふざけないでください。
東欧っぽいものから探しましょう。
東欧から来たように聞こえるかもしれない訛りが少しあるのですから。」
クラトは、記憶の重要なアーカイブの中から何かを探し、それを見つけて言いました。
「じゃあ、ペトレと名乗ろうか。
ペドロという意味じゃよ。
わしは、ぺトレ・ポペスク。
ルーマニアのブカレスト出身ってことにしようじゃないか。
実は、ラピッド・ブカレストのファンなんじゃ!」
アミの笑顔から、クラトはいい名前を選んだんだと思いました。
「じゃあ、私はペトレ・ポペスクの娘で、ナディア・ポペスクと名乗らせてもらうわ、それでいい?」
「完璧です、ナディア!」
「で、友達はナディって呼ぶのよ。」
と、彼女がおどけたように言うと、皆が笑い始めました。
すべてが解決したと思ったのですが、突然、おばあちゃんが学校のことを思い出したのです。
「あら、学校ではこの子たちは退屈しちゃうわよ。
だって、あそこで教わることはもう全部知ってるんだから...。
他にも山ほどね...。」
「本当だよ!
僕達には、先生が、無知に見えてしまうよ...。」
アミは同意しました。
「でも、私立の試験を受けていくことも出来るし、学校に行かないとすれば、本を書いたり、この世界の進化のために重要なことをする時間がたっぷりあるのですよ。」
「やったーーーー!!!」
(何か問題があるわけでもなく、不名誉でもなく、無責任でもなく、怠惰でもなく、恥知らずでもなく、学校に行がなくてもいいいのですから。
最高です......。
また、誰もが異世界に行ったり、ソウルメイトを見つけたり、僕のような友達に恵まれたりするわけでもないのですからね。)
とうとう、夜が訪れ、別れの瞬間がやってきました。
僕たちは、アミの旅立ちの予感に目を潤ませていたのです。
「もう少し...一緒にいてくれない?」
すると、彼はとても愛おしそうに僕たちを見て、僕たちを抱きしめて言ったのです。
「この皮膚の感覚はしばらくなくなりますが、あなたの内側を覗けば、私がそこにいることがわかります。
私はいつもそこにいるのです。」
僕たちが悲しみに暮れながら彼を見続けていると、彼はこう叫びました!
「あと1年もしないうちに、ビンカが書いたものを取りに来ますよ。」
そして、あなたをキアに連れていきます。」
それで、みんなの心が慰められたのです。
しばらくして、船がどんどん遠ざかっていくのが見えました。
上向きではなく、水平線に向かって、光の点が小さくなっていくのです。
悲しみが胸に迫るような光景でした。
が、その一方で、僕たち4人にとって幸せが約束された人生が始まったのです。
見事に澄んだ夜空に星が散りばめられていました。
地平線から上に向かってピンク色の光の線が上がり、そこから花火のように小さな色とりどりのハートが現れ、ゆっくりと消えていくのが見えたのです。
僕たちが感傷にひたろうとすると、クラトが、突然、叫びました!
「どうしたの?」
「自分が何のために生まれてきたのかが解ったんじゃ!
自分が何をしなければならないのか、わしらが何をすべきなのかが解ったんじゃ。」
ペトレ・ポペスク は喜びに陶酔していました。
僕たちは、彼に射貫くようなまなざしを向けました。
「わしらは、普遍的な法則に従って、未来の人類の基礎を築くためのプロジェクトを準備するんじゃ。
準備ができたら、国連に提出しよう。」
そして、彼は笑ってこう付け加えたのです!
「すると、彼らは、わしらを邪魔者の狂人のように見るじゃろう。
しかし、我々は戦うよな?」
「もちろん!!」
と僕たちは胸を張って大合唱したのです。
すると、おばあちゃんが言いました。
「それから、教育が人々の内面的な成長、ひいては人類の内面的な成長にもっと注力できるように、別のプロジェクトを準備しましょう。」
この世界では、このようなことは大いなる妄想とみなされることを知りながら、僕たちは笑いあいました。
全ての世界に求められていることを既に知っているのですから。
「そして後日、宇宙文明間の会合を促進するための別のものを発表する予定よ。」
とビンカも熱っぽく語りました。
そして、そのプロジェクトについて聞いた国連職員の顔を想像して、僕たちは再び笑いあったのです。
「最後に、妄想ではないものをひとつ。」
と僕は付け加えました。
「世界の多くの未開拓地域で農業を奨励し、飢餓と栄養失調を永久に終わらせようという計画もね。
地球には80億人弱いるけど、30億人ほどが飢えているんだ。
でも、もし耕作されていない土地を今の技術を駆使して利用出来れば、80億人が楽しくふっくらして生きる事が出来るんだ。」
「その通り!!」
3人が記憶の中にあるデータを見つけて叫んだのです。
「よし、みんな。地に足をつけて。」
近くにいたアミの声がはっきりと聞こえました。
彼は最後に指向性マイクを使っていたのです。
僕たち4人は、地上の知識と普遍的な知識の間に同じ法則があることを知っているのです。
僕たちの先には、美しい仕事があるのです。
熱意と喜びに満ちて仕事に取り掛かり始めました。
FIN
ここまで読んでいただきありがとうございました✨
心から感謝しております✨
全ての人に良きことが雪崩のごとく起きますように✨