Ami Ⅲ 第5章 新しい生活
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「クラト、すべてが変わった今、あなたは、どうするつもりなの?
都市に戻るの?」
とビンカが尋ねました。
老人は考え、いくつかの可能性を想像し、そして言いました。
「うーん、都会か...現代で初めて変身したテリス、うーん...悪評は嫌いじゃな......。
ここで静かに暮らしておる。
何ヶ月も誰にも会ってないんじゃよ。
ここにいるのも、とても幸せなんじゃ。」
彼が退屈で落ち込んでいることは知っていましたが、何も言いませんでした。
「テリスのパトロールが通り過ぎないの?」
「ズンボ族とワコ族の戦争が終わってから、誰もここを通らなくなったんじゃ。」
「退屈しているのではないですか?クラト。」
「まあ... 正直言って、ちょっと寂しい気もするけど... なあ、アミ。
ペドロ星への切符を持ってないかい?
あそこには、きっと素敵なおばあちゃんたちがいるはずじゃよ。」
「でも、悪評が嫌なら......地球にいる宇宙人も...。」
と、僕は笑いました。
「どうして、わしが他の惑星から来たと判るんじゃ?」
「その耳、その紫色の目、そのピンク色の髪......?
地球人じゃないと思われるし、みんな怖くて逃げちゃうよ......。」
僕は笑いながら言いました。
「外見を変えない限りは......。」
とアミは言い、僕たちは非常に興味をそそられたのです。
6つの目が本気で白い服の少年に突き刺さりました。
「そんな目で見ないでください・・・私は誰も殺していません。
私たちの技術で、生物の外形にある種の変化をもたらすことはできますが、だからといって、実際に......するわけではありません。」
「足を伸ばして!」とビンカ。
「身長を伸ばして!」と僕。
「わしのシワをなくしてくれんかの。」とクラト。
などなど、アミの可能性の高さを実感し、熱心にそれぞれの要望を出し合うと、アミは笑い転げました。
「もうやめてください。
「これは非常にデリケートな問題で、見栄のためには使えません。」
「じゃあ、何のためなの?」
と僕は尋ねました。
「フム... その話題に触れない方がよかったですね......。
進化した世界に生まれた人が、進化していない星で奉仕活動をすることが必要な場合もあります。」
ビンカは結論を急ぎました。
「つまり、私が進化した星で生まれなかったとしても、地球で暮らせるように私の外見を変えることができるってこと......。
耳を丸くして......。」
「いや、このままがいいんだけど。」
と僕は心配になってしまいました。
「そして、わしのシワを消して、ペドロような肌にしてくれたら......。
素晴らしい。
さっそく、お前さんの飛行物体で、美容整形手術をしようじゃないか。
これは... 痛くないのかい?」
「さっきも言いましたが、この技術は虚栄心を満たすためのものじゃありません。
本当に重要なことのためなのです。」
「若く見えることは重要だと思わんのか、アミ?」
「いいえ、クラト。いいえ。
私が大切だと思うのは、誰もが自分の内面を外見で表現しているということです。
シワがあっても、本物は美しいのです。」
クラトは、ジョークを言うきっかけを見つけました。
「そうじゃよ。
若さの不思議を知っとるんじゃ。
わしの場合、ハンサムに見えすぎて、ファンが平和に暮らせないんじゃよ。じゃから、わしは、ハンサムでなく、醜く伸びた顔でありたいと思うんじゃよ。
ホー、ホー、ホー!」
「繰り返しになりますが、虚栄心には従えません。」
「わしの巻物が、多くの人を助けたと言ったけど... それは、わしの価値を400年下げることにならないか?」
と隠者は尋ねました。
それで僕は、キアの年は地球の20倍も短いことを思い出し、彼が1400歳、つまり地球の70ほどの歳であろうと計算したのです。
しかし、後で調べたら、もっと若いことを知ったのですが。
アミは動かず、腕を組んで、真剣な表情で目をそらしたままでした。
「300歳はだめかの?
わしは悪臭もしとらんし・・・それに、最近は悪口も言っとらん。
「大根足め!」も言っとらんのじゃよ・・・あ、失礼したの!・・・・・・。
じゃあ、250歳ならどうじゃ......。」
「愛から生まれたものしか、取引の対象にはなりません。」
と、アミは、全く僕たちの顔を見ずに言いました。
「じゃあ200歳ではどうじゃ?
巻物は巻物じゃないのか?」
とクラトは嘲るように主張し、僕は恥ずかしくなりました。
「偉大な魂にとって、偉大な奉仕の報酬は、単にそれを実行する恵みを得たことなのです。
奉仕は恩典ではなく、特権なのです。」
「2日間ならどうじゃ?
今日、わしは、耳を洗い、祈ったんじゃよ。」
と、クラトが、とてもコミカルな声で言ったので、僕たちは彼がずっと冗談を言っていたことに気づき、爆笑しました。
そして、ビンカがこう言いました。
「アミ、真面目な話、私が地球で暮らせるように、私の外見を少し変えてくれないかしら?」
「わかった、わかった。
できるけど、あまり期待しないでください。
ゴローおじさんの事を覚えていますか?」
「その話を聞かせてくれんかの?」
クラトがそう言うと、ビンカは僕たちの悩みを話し始めたのです。
その話を聞いた老人は、とても喜んでくれました。
「わしが、お前さんの叔父さんに話をして説得しようじゃないか。
もし彼が受け入れないのなら、この硬い拳で......。」
彼は、片方の手のひらを叩きながら言いました。
当然、誰も感心しませんでした。
「叔父はかなり大きなテリスなのよ......。」
「叔父さんが大きなテリス?
ああ... 簡単な方法で彼を納得させようじゃないか。
我々は常に平和と対話の道を追求するんじゃよ。
決して暴力はいけないよ、子供たち、 ホー、ホー、ホー!」
そこで、僕は素晴らしい考えを思いついたのです。
「アミ、ゴローがスワマに変身することもあるの?」
「そうなれば、素晴らしいいことですが、私が調べたところでは、彼は、変身を始めるのに必要な進化のレベルには程遠いのです。
ですから、その素敵な可能性は忘れてください。」
それを聞いたクラトは、「どんなテリスも、この絶妙な精神的高みに到達するのは簡単ではないんじゃよ。ほ、ほ、ほ!」と、うぬぼれるふりをしました。
「彼を説得する方法はないの、アミ?
催眠術をかけることはできないの?」
とビンカが尋ねました。
「夢にも思わないで下さい。
催眠術で人を操ることは、銀河当局の目には重大な誤りとして映るのです。人の選択の自由は、どんな理由であれ、侵害されてはならないのです。」
「でも、最初の旅行で警官に催眠術をかけたよね?」
彼は、僕の困惑を笑い飛ばしました。
「あれはゲームです、ペドロ。
彼らにとって何の害もない事です。
精神的に過激にならないように、何でもかんでも、ひどく深刻に考えるべきではないのです。」
「でも、君は、岩に描かれた翼のあるハートが見えないように、僕に催眠術をかけたよね......。」
「直後に、あなたに嬉しいサプライズを与えるためにでしょ?」
彼は、朗らかに笑って言いました。
「その通りだけど、でも後でテリスに催眠術をかけて、僕たちを見られないようにもしたんだよね......。」
「あなた達を守るためです。
何の害もありません。
害があるのは、誰かが催眠術をかけられて、本当はやりたくないことや必要でないことをさせられたりした時です。
広告の場合のように、大勢の人の心を操作して、売りたいものを欲しがるように仕向ける......そういうことなのです。
ある広告戦略を計画する人たちが、普遍的な法則の前に自ら陥っている恐ろしさを、彼らは知らないのです......。
そして、お決まりの『なぜ神様はこんなに私を罰するの?
何も悪いことをしていないのに。』と嘆くのです。」
「どういう意味なの、アミ?」
「宇宙の基本的な法則は『愛』です。
それが破られた時、悲しい事に。。。
そして、多くの人に影響を与えたとしたら、ああ。
すべての行いは自分に返ってくるのです。
もし、この宣伝マンたちが、自分の知識や才能を人類の向上のために、意識の進化を助けるために使ったとしたら、同じ『ブーメランの法則』によって、不思議な見返りを受け取ることができるでしょう。」
「ブーメランの法則って?」
と、僕たち3人は質問しました。
「原因と結果、作用と反作用、それは、ほとんど同じことです。
大きな善を行えば、大きな善が返ってきます。
大きな害を行えば、やったことと同じ『色合い』の害が返ってくるのです。
その法則は、すべての存在の秩序において働いています。」
クラトは、「つまり、わしの巻物の件は、冗談ではなかったということじゃな。
つまり、わしは今、何か良い見返りを期待できるようになったんじゃな?」と熱く語りました。
「そうです。
たとえ、あなたが、虚栄心からそれを受け取らないとしても、法則は数学的に実現されるのです。」
「でも、最近いいことが何もないんじゃよ。」
「悲しみが終わったというのに、そんなことを言うなんて、なんて恩知らずなのでしょう......。」
と、アミはやや咎めるような目で彼を見ました。
「うっ。それはそうじゃけど......。」
「もう隠れる理由がないことを無視して、一生を過ごしていたかもしれないのに。
『何か』が私をここに来させたのです。
あなたの巻物は、それと関係があると思いませんか?」
「陽子坊や、お前さんの言うとおりじゃと思うんじゃ... じゃが.…。」
「なんですか?」
「じゃが、わしが孤独なのは知っとるじゃろう。」
「もう街に帰ってもいいのです、クラト。」
「わしみたいな年寄りが、どうやって生きていけばいいのか、わからんのじゃよ。
それに、あそこには知り合いもおらんし、わしの家族は、わしが変身したとき処刑しようとしたんじゃよ。
あの日ほど速く走れた者は、おらんかったじゃろうよ。
ホー、ホー、ホー!
それに、わしは何年も前に山に隠れて来たから、現代社会のことは何も知らん、迷惑な存在になるじゃろうな。
その一方で、これが一番大事なことなんじゃが、わしが愛しているのは、お前さんとこの二人の子供たちだけなんじゃよ。
わしは、お前さんに愛着を持ちすぎたから、一緒に暮らしていたと作り上げたんじゃ。
別れるのは耐えられんのじゃ。」
ビンカと僕は、親愛なる老人を感慨深げに抱きしめました。
「また新たなドラマが......。」
と、アミは微笑みながら言いました。
「一度でいいから、3人で暮らさない?」
と僕は尋ねました。
僕が想像したのとは反対に、アミは笑ったりはしませんでした。
真剣なまなざしで、「ペドロ、それは本当にあなたの望みですか?」
「そうだよ。
またビンカと離れるのは心が痛むだろうし、この見捨てられた中で、クラトが独り言を言っているのを思い出すのは.…。
いや、僕はそれに耐えられないよ。
そうだよ、これが僕の願いだよ、アミ。」
「それなら、それを求めるのです。
叶うと決めて、叶うという信念を持ったほうが良いのです、ペドロ。
あなたが、本当にそれが可能で、叶うと信じれば叶うけど、疑ってかかると......。
もうひとつ言っておくと、善良で美しい欲望は、あなたの最も高い部分、あなたの中に宿る神聖な部分からやってくるのです。
そして、もし愛すべき大いなる知性が、あなたの中に欲望を入れたとしたら、それは、あなたにそれを実現する能力があるからです。
しかし、それを実現するためには、あなたの信仰、確信、そして確証が必要です。」
「それなら、僕たち3人はきっと地球に行って、永遠に仲良く暮らすことができるよね。」
と僕は、今度は、とても熱心にそう言いました。
「私(わし)の願いも同じ。」
と、ビンカとクラトも嬉しそうに言いました。
「さて、君たち、その意気です。
さあ、ゴローを説得に行きましょう。」
とアミが元気よく言ったのです。
「わしも行っていいのかい?」
とクラトが聞きました。
「もちろんだよ。」
ビンカと僕が叫びました。
「問題ありません。
一緒に行きましょう、クラト。」
「ほ!ほ!ほ!ほ!ほ!ほ!ほ!」
「アミ、何かプランはあるの?」
「特にありません。
願いは叶うのです。
そうですよね。」
「そうだね!」と僕たち3人は大合唱しました。
アミは、僕たちがビンカの街へ小旅行に出かけると言いました。
それは別の大陸、実際にはその世界の反対側まで行くということでしたが、あの宇宙船のスピードを考えれば短い旅でした。
しかも、クラトは初めての「UFO」の旅で喜んでいました。
今回は、クラトが喜ぶように「ゆっくり」旅をしていたのです。
彼は、窓ガラスに鼻をくっつけて、フライトの詳細を見逃すまいとしていたのですから。
「ホー、ホー、ホー!これは壮観だ!
でも... 危なくないのかの?
わしの体重は、かなり重いし、これはトパの殻みたいなもんじゃろ...。」
その言葉は、ナッツのような事を意味しているのだと解釈しました。
「その通りです、クラト。
この船はとても軽いのです。
超軽量素材を使っていますが、問題ありません。
この乗り物はどんな重量でも持ち上げることができます。
この中では外部の重力が相殺されるからです。
今、地面に張り付いているのは、この中で人工重力を使っているからです。ほら、変更することもできますよ。」
と、彼は言って、いくつかのコマンドを操作しました。
すると、突然、全員が宙に浮いたのです。
僕たちは体重を失いましたが、アミは座席にしがみついたまま、その場に留まっていました。
「こりゃ空中を泳いでるようなもんじゃな! ホー、ホー、ホー!」
クラトは壁に足をつけて体を推し、部屋の中で水平に宙に浮いていました。ビンカと僕も真似をしたのです。
彼女は、直ぐに、テレビで見た水中ダンスのような、跳躍をするようになりました。
そして、空中で芸術的な動きを見つけることに夢中になっていきました。
アミが笑いながらボタンに触れると、僕たちは全員、床にふわりと倒れ込んだのです。
「首が折れたようじゃな。
損害賠償と病院代を払って貰わなならんよ。
ブーメランの刑に処すぞ、ほれほれ!!」
「全ての人工重力をいきなりかけるほど油断をしていません。
ところで、不注意は悪の一形態であることを知っていますか?」
僕には、あまりピンと来ませんでした。
「もし、乗客でいっぱいの飛行機のパイロット、あるいは、整備士が不注意だったら... 。」
と彼が言ったので、僕はすぐに理解しました。
「不注意は、意図的な悪と同じくらい害を及ぼ可能性があるのです。
だから、気を散らさないように、全てのものを整理するようにしてください。
物忘れがひどい人は、メモをしたり、日課にしたりして、すべてを管理するようにしましょう。
道を渡るときは注意深く。
要するに、宇宙は不注意を助ける事が出来ないので、何事も怠ってはいけないのです。」
「例えば、アミ?」
「泥棒がたくさんいる地域に住んでいて、ドアの鍵をかけ忘れたらどうなりますか?」
「もちろん...それはわかってるよ。」
「不注意は大きな損失を生むのです。」
「じゃあ、命令に不注意にならんようにな。星の少年よ。」
「心配する必要はありません、クラト。
これは自動操縦できるのです。
コンピュータで、落ちたり墜落したりしないように、 プログラムされています。」
「じゃが、常に目を光らせておくに越したことはないじゃろう?
油断は禁物じゃよ。ほっほっほ!!」
数分後、僕たちはビンカの街の上空、正確には彼女の家の上空で見えなくなりました。
モニター画面越しに中を覗き込むと、他と同じような、かなり醜いテリスが肘掛け椅子でくつろぎながら新聞を読んでいます。
しかし、このアニメのような、いや、この紳士は、とてもフォーマルな服を着ていて、非の打ちどころがない外見でした。
頭と手だけは、長い緑の毛がとてもよく手入れされていて、指の爪と同じようにつやつやしていました。
スワマの女性が、彼の前でテレビを見ていました。
「おじさん! おばさん!私はここよ!」
「ビンカ、幸いなことに彼らには聞こえません。
もし、彼らが、あなたが宇宙船に乗っていると知ったら...。」
「でも、彼らは知らなければならない。
他に方法がないんだよ。」
と僕は落胆して言いました。
もちろんアミも同意してくれました。
「ゴローを説得するための計画をたてましょう。
数日、いや数週間はかかるかもしれません。」
「そんなにかかるの!?」
「いや、もっと長い、数ヶ月......最悪、数年かもしれません。」
僕たちが大きく口を開けたので、アミは怖がりました。
「そんな怖い顔しないでください。
考える時には、楽観的にならなければいけないと言ったのに、自分でも忘れてました。
でも、非現実的でもありません。
石のように硬い心を持った人が相手なのですから、彼らの立場に立って、考えてみましょう。
自分たちの責任下にある子供を、異世界に行かせるのは、簡単ではありません。
彼らにとって『エイリアン』とは何か?
つまり、、、あなた方は判ってますか?」
そうです。
しばらく考えてから気づきました。
そして、僕たちの精神は地に落ちたのです。
つまり、床に落ちました。
乗り物の中には、土はなく床だからです。
「でも、信念も失わないようにしましょう。
今夜は、皆さん家で寝るのです。
明日、私がまた迎えに行きます。
同じことをずっと続けるのです。
そして今度は、叔母さんと2人きりで話をしてみてください。
少しずつ準備をするのです。
一日であまり進めたくないのです。
私たちは、モニターで彼女の反応について情報を得るために観察ています。」
「なんて簡単なの?
私が、宇宙船で異世界に行きたいと知ったら、彼らは喜ぶでしょう。
だって、彼らは、私を精神病院送りにするでしょうからね!」
「でも、おばさんがUFOを見たらどうでしょうか?」
と、アミは、僕たちに希望と勇気を与えてくれるような笑顔で、こう言いまし。
「おばさんにこの船を見せるつもりなの、アミ?」
「はい。必要であれば、そして当局が許可すればですが、今日ではありません.....。」
ビンカは、「今日じゃないの?何のために待つ必要があるの?」
と焦って言いました。
「一歩一歩進むしかないのです、ビンカ。
急ぐことは出来ません。」
「アミ、大丈夫だと思うのよ。
クロルカ叔母さんは、私の本を書いてくれているので、私が口述したことを少しずつ信じてくれるようになってるの。
最初は、心を閉ざしていたんだけど、今は、喜んで信じてくれるようになってるわ。」
「ビンカ、君が書いたことは全部本当だと信じられてる?」
と僕が尋ねました。
「いいえ、それ程ではないのだけど、おばさんは、この世界の外に知的生命体が存在するかも知れないことを受け入れているのよ。
だから彼女なら簡単だろうけど、叔父さんは....。」
「もしかしたら、運が良ければ、今すぐ全てが解決するかもしれないよね。
今夜、ビンカのスーツケースが僕の家に届くかもしれないし、部屋も空いてるからね...。」
僕は、希望に満ち溢れて言いました。
「楽観的なのはいいことです、ペドロ。
でも妄想は良くありません。」
と、アミは同情的に私を見て言いました。
「その違いは何なの、その境界はどこなの、アミ?」
僕は知りたかったのです。
「まあ、実際、あらゆることが可能です......。」
「すべて、すべて、すべてなの?」
とビンカが信じられない様子で尋ねました。
「まあ、不条理や異常は別としてですが。
もちろん、誰かが有名な演説家になりたいのに、舌がないとか、憎しみや嫉妬や羨望に満ちた心でこんな船に乗りたいとか......。
しかし、通常では、必要なプロセスを踏めば、本当に望むものは何でも実現できるのです。」
「それをもっとうまく説明してくれない、宇宙少年さん。」
「木の種が木になるためには、時間、栄養、世話に関係する一定のプロセスが必要なように、あらゆるプロジェクト、夢、願望が必要とするプロセスも考慮しなければならないのです。
すべては可能ですが、すべてに時間と労力を必要とする手順があります。」
「マフロス酒の発酵のように、一朝一夕にはいかんのじゃな。」
とクラトが言いました。
僕は、その夜、ビンカが僕と同居する可能性の方にもっと興味がありました。
当然、アミは私の考えを察知し、その話題を取り上げたのです。
「悲観論者は間違っています。
なぜならすべては可能だからです。
しかし幻想論者も間違っているのです。
なぜなら、不条理と本当の可能性の違いを知らないか、あるいは、何かを実現したり手に入れるために、必要なプロセスや時間を考慮していないからなのです。
ゴローの心を深く研究した結果、『不可能』であることは明らかだと言いました。
だから、我々はあらゆる論理に反する試みに取り組んでいるのです。
ペドロ、数時間で解決できる問題ではありませんが、悲観的に考えることもないのです。
全てがうまくいくと信じることです。
忍耐力の欠如に注意しなければならないのです。
ビンカ、そしてペドロもです。
それはともかく、今夜は一人で家に帰るのです。
おばあちゃんが待っているのですから。」
「ペドロ、お前さんには、おばあさんがいるのかい?」
と老人は興味深げに尋ねました。
「そうだよ。」
「うーん... 別居中かい?それとも未亡人?」
「あ、いえ!おばあちゃんは聖人だよ、クラト。
それで、おじいちゃんは、とても気性が荒いんだ。」
僕は嘘をつきました。
祖母は未亡人なのですから。
すると「嘘をついてはいけません、ペドロ」とアミ。
「あぁ、お前さんには、お祖父さんがおらんのじゃの......。
じゃあ、わしの事を『おじいちゃん』って呼んでもいいんじゃよ、ペドロ。」
2人は笑い出しましたが、僕はそれが、面白いとは思えませんでした。
アミは、背の高い茂みの多いビンカの家の中庭の奥に船を置き、そこで彼女は降りることになりました。
翌日の朝早く、同じ場所で待っているように、とのことでした。
僕たちは、まるで彼女が戦争に行くような、気落ちした別れ方をしたので、アミはいつものように、「またドラマです!」と笑いました。
しかし、今回は白い服の少年が間違っていて、僕たちは正しかったのです。
ビンカの目前には、醜い「戦争」が待っていたのですから。
僕たちの再会はそう簡単にはいかなかったのです。