Ami 第6章-真の知性とは①
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市街地の上空百メートルの高さまで下り、ボンベイの空中を散歩し始めました。
何千何万という人々、中には様々な色のチュニックやターバンを身につけた人々、路上を走る牛、僕の国とは全く異なる家や建物、たくさんの路上販売者、これらを全て上空から見ているのです。
まるで映画や夢を見ているようでした。
なんて素晴らしいんだ!!
そして何より、表示灯が消えているので誰も僕達を見ていないのです。
人の多さに目を奪われました。
僕にとっては、そこは別世界だったのです。
すると、突然、僕は『現実』に戻りました。
「大変だ......おばあちゃんが!
「おばあちゃんは今、大丈夫かな?
今は日中だよ。
起きているはずだよ!
僕の不在を心配しているに違いないよ。
帰ろう!」
アミにとって、僕は常に楽しみの種でした。
「ペドロ、彼女はいつものように深く眠っています。
地球の裏側は、まだ昼じゃありません。
あっちは、まだ夜中をちょっと過ぎた頃ですが、こっちは朝の10時くらいなのです。」
「昨日の時間?それとも今日の時間?」
僕は、時間に翻弄されながら尋ねました。
「明日の時間です!」
と彼は笑いで死にそうになりながら答えてくれました。
「本当に、アミ、心配だよ。」
「なんて面白いのでしょう!」
と彼はからいました。
「 でも、そんなに心配しないでください、ペドロ。
私たちには、まだ時間がたくさんあります。
彼女は何時に起きるのですか?」
「知らないよ。
僕が起きた時には、いつも起きているし、夜中に眠ることが出来ないって言ってるからね。」
僕たちはお互いに顔を見合わせ、笑いました。
「それなら、まだ数時間『眠れない』時間があります。
時間を伸縮できる出来ないに関わらず、私達には時間があるのです。」
「とにかく心配なんだよ。見に行かない?」
「何を見に行くのですか?」
「おばあちゃんだよ。
目を覚ましたかもしれないよ。」
「ここから見た方がいいでしょう。
そうすればあなたは納得できます。
地球人は、どうして人生をより苦しくすのでしょう!」
彼は息を吐くようにつぶやき、その唇には、いたずらな笑みが浮かんでいました。
彼がスクリーンのコントロールを操作すると、非常に高いところから見た僕の国の海岸が現れ、その後、驚くべきスピードで地球に向かって、垂直に落下していきました。
やがて僕は、湾、町、海の家、屋根、そして僕の祖母を見分けることができました。
信じられないことに、まるで祖母はそこにいるようで、前と同じ姿勢で口を開けて寝ていたのです。
「寝相が悪いってことはないですね?」
アミは、ユーモアたっぷりにこう付け加えました。
そして「静かにしてください」と言って、マイクのようなものを手に取り
、どこかを触ると、「プシュッ」と音がしました。
祖母はそれを聞いて目を覚まし、立ち上がってダイニングルームに向かったのです。
足音や息づかいが聞こえてきました。
そして、僕の部屋に行き、ドアを開け、電気をつけて、僕のベッドを見たのです。
しかし、何かが彼女の注意を引きました。
それが何なのか僕には分かりませんでしたが、アミには分かったようです。
マイクを手に取り、その近くで息をし始めたのです。
彼女はその寝息を聞いて僕のものだと思い、電気を消してドアを閉め、寝室へ向かいました。
「今、幸せですか?」
「そう、今はね。
でも信じられないような感じなんだ。
あっちは夜で、こっちは昼。地球の裏側なんて。。」
「あなたは距離と時間に縛られすぎています。ペドロ。」
「でも、それは受け入れられないよ。」
「今日、旅に出て、昨日帰ってくるなんてどうだい?」
「僕を狂わせたいんだろうね。
頭ではわかるけど…。
でもそれは無理だよ。」
「 中国に行くことはできないの?」
「もちろん行けます。
どの都市に行きたいですか?」
今度は恥ずかしくしないようにしようと思い、僕は自信と誇りを持って『東京』と答えました。
「じゃあ、日本の首都、東京に行きましょう。」
と、彼は笑いたい気持ちを抑えながら答えました。
僕たちはインドを北東に縦断しました。
ヒマラヤ山脈にさしかかった時、宇宙船は止まり、「命令です。」とアミが言うと、スクリーンに奇妙な文字が映し出されたのです。
「証拠を残せということです。
スーパーサイバー は、私たちがどこかの誰かに見られているはずだと示しています。」
「何て面白いの?どこで、誰に?」
「わかりません。案内されています。待て、よし、着きました。
私たちは瞬間移動のシステムを使っていたのです。
高さ50メートルほどの森の上空にいます。」
ボード上の光は、僕たちが見えていることを示していました。
そこには、雪が積もっています。
「ここはアラスカです。」
アミは、スクリーンの地球地図の点滅で、その場所を認識しました。
太陽が海に隠れ始めると、僕たちの宇宙船は、さまざまな色の光を放ちながら、空に巨大な三角形の軌跡を描いたのです。
「何のために、こんなことをするの?」
「印象づけるためです。
そこに来る友達の気を引くのです。」
アミはスクリーンに映る男を見て言いました。
僕は窓ガラス越しに彼を探し、遠くの木々の間に彼を見つけました。
赤いハンタージャケットを着て、ショットガンを持っていました。
そして、とても怖がっているように見えました。
すると、彼は銃を僕たちに向けたのです。
僕は撃たれないように、恐る恐る身をかがめると、アミは僕の恐怖を面白がりました。
「心配しないで、この宇宙船は防弾だし、弾丸以外のもの防げます。」
僕たちは、常に色とりどりの閃光を放ちながら、上昇し、とても高い位置にいました。
「彼がこの出会いを決して忘れないようにすることが必要なのです。」
僕は、彼がこのショーを決して忘れないようにするためには、そこまで怖がらせる必要はなく、空中を通過しただけで十分だと思いました。
だから、僕はアミに言ったのです。
「君は間違っているよ。
多くの人が、僕たちの宇宙船が通り過ぎるのを見たことがあるけど、覚えていないよね。
僕たちを見たとき、もし彼らが醜い心の話にとても夢中になっていたのなら、ほとんど気にせず僕たちを見て、そして忘れてしまうんだよ。」
「それについて印象的な統計があるのです。
時によっては、忘れられないように努力しなければならないのです。」
「なぜあの人が僕たちを見る必要があるの?」
「正確にはわかりません。
おそらく彼の証言は将来、他の興味深い、特別な人のために重要なものになるのでしょう。
あるいは彼自身がそうなのかもしれません。
センサーで彼に焦点を合わせてみましょう。」
別のスクリーンにその男が現れましたが、ほとんど透明に見えました。
彼の胸の中心には、とても美しい金色の光が輝いていたのです。
「その光は何なの?」
「彼の進化レベルを示しています。」
「進化レベル?」
「彼が『獣』か『天使』かに近い度合いです。」
とアミは言いました。
『センサー』は善悪の度合いを測るものだと理解しました。
「彼のレベルは750です。」
「それは何を意味するの?」
「彼はとても興味深い存在だということです。
だから『スーパーサイバー』は彼にこの特別な体験をさせたのです。」
「興味深いとは、どういうこと?」
「なぜなら彼の進化レベルは高すぎるのです。
狩りをする地球人であるには...。」
「僕はハンターが嫌いなんだ。」と言いました。
「誰も憎んではいけません、ペドロ」
「まあ......憎しみというより、怒り、憤りだね。
どうして彼らはあんなに悪党なの?」
「それは共感や連帯感の欠如の問題で、内なる獣が彼らの心の中で自由に動いているのです。
しかし、今回のケースは違います。
沢山の計る基準があります。
彼は、連帯感や進化度が低いのではなく、それらをブロックしてしまっているのです。
おそらく、彼の家族や周囲では、猟は評判がよく、本人はあまり好きではないのですが、この愚か者は他人の意見に流されてしまっているのでしょう。
ですが、この目撃体験は、彼が真の進化を遂げるため、真の自己に従って行動するのに役立つと思います。」
それから彼は熊を画面に集中させました。
熊も透明に見えたましが、胸の光は男のそれよりも遥かに少なく光っていました。
「200です。」
そして、魚に焦点を合わせました。
今度は光は最小限でした。
「50」
「アミはどうなの?」
「760です。」彼は答えました。
「猟師より10だけ多いんだね!」
地球人との違いが小さいのに驚きました。
「確かに、私たちは同じようなレベルです。」
「でも、地球人よりずっと進化しているはずなのに・・・?」
「ペドロ、地球には、800以上に達する人もいるのです。」
「君より高い人がいるの!!」
「もちろんです。
私の長所は、彼らが無視するある種の事柄を知っていることで、そのおかげで私はあまり不器用にならないだけなのです。
しかしここには、教師、芸術家、看護師、消防士...といった非常に貴重な人々がいます。」
「その通りだね。
だから核物理学者の叔父もとても貴重な存在に違いないと思うんだけどね。」
「神は知性に殺されたと言っているあの天才ですか?
貴重な?...確かに有名かもしれませんが。
叔父さんは物理学で何をやっているのでしょうか?」
「彼は新兵器を開発しているんだ。
とても破壊力のある核ビームをね。
素晴らしいよね!」
「もし彼が、人間の知性がより高い知性の反映であることを理解できず、その小さな視野のために傲慢で、不器用で、他人の信念を馬鹿にして、多くの信じる人々を不快にさせているなら、そして彼が受け取った才能を武器製造に捧げているなら、私は彼があまり高いレベルを持っていないように思うのです。
そう思いませんか?」
「なんだって! 彼は賢者だよ!」
と僕は抗議しました。
「また混乱していますね。
あなたの叔父さんは情報量が多く、記憶力もいいし、技術もあり、データの関連付けも速い。
しかし、それは必ずしも彼が知的であることを意味しないし、ましてや賢者であるとは限りません。
電子頭脳は見事なデータバンクを持ち、素早い演算を行うことができますが、だからといって賢いわけではありません。
自分自身が落ちる危険のある落とし穴を掘る人が、とても賢い人だと思いますか?」
「いや、でも......。」
「銃はそれを使う者、推進する者に敵対するのです。」
このアミの言葉は、私にはあまりピンと来ませんでしたが、彼を信じることにしました。
でもまだ僕は混乱していました。
叔父は僕のヒーローなのですから。
あんなに賢い人が......。
「彼は頭の中に優秀なコンピューターを持っています。
ただそれだけです。
これは言葉の捉え方の問題です。
地球では、脳の機能のうち1つだけが素早く動く人を知的な人や賢い人と呼びますが、本当は3つあるのです。」
https://note.com/hedwig/n/n5619efd17ed1