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「免疫」システムは諸刃の剣〜「免疫」をコントロールすることが重要


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「免疫」システムは諸刃の剣〜「免疫」をコントロールすることが重要

4月15日発表された論文では、新型コロナウイルスでの重症化は急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症と定義された。COVID-19に発症する致死的な急性呼吸器不全ARDSの発症の仕組みを考察し、その治療としてIL-6-STAT3経路遮断の有効性を示唆したのである。COVID-19に生じる致死的な急性呼吸器不全ARDSはサイトカインリリース症候群CRSであり、CRSを治療することができれば新型コロナウイルス感染症、COVID-19も恐ろしい病気ではなくなる。


ここで重要なのは、サイトカインリリース症候群CRSにおけるサイトカインストームの問題である。

サイトカインは免疫活性において重要な役割を担っている細胞である。サイトカインは、主に免疫細胞から分泌される低分子のタンパク質で、細胞間の情報伝達の役割を担っている。さまざまな種類のサイトカインが発見されているが、それぞれ細胞表面に存在する特異的受容体を介して細胞内へ情報が伝達される。がんや病原体などの異物が免疫細胞により認識されると、インターロイキン類、インターフェロン類、腫瘍壊死因子類およびケモカインなどのさまざまなサイトカインが放出され、多様な免疫応答が誘発される。

サイトカインの主な役割として、①免疫細胞を目的部位に集積する働き、②T細胞やB細胞など、獲得免疫系の細胞の分化を誘導する働き、③獲得免疫系および自然免疫系を活性化し、がんや病原体などの異物を排除する働きなどが知られている。このように、サイトカインは、私たちの身体を異物から守るうえで非常に重要な役割を果たしているのである。サイトカインストームとは、感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する状態をいう。

免疫系は何らかの物質を異物または危険な物質であると認識すると、その物質から体を守ろうとする。このような物質には、細菌、ウイルス、蠕虫などの寄生虫、特定のがん細胞があるが、このほかに移植された臓器や組織を異物と認識してしまうこともあるのだ。これらの物質には、免疫系が認識し、免疫系による反応を刺激する分子が含まれており、これらの分子を抗原と呼んでいる。抗原は細胞内にあったり、細胞(細菌やがん細胞など)の表面にあったり、ウイルスの一部であったりします。花粉や食物の分子などは、それ自体が抗原となる。

それぞれの人の組織内細胞にも抗原が含まれているが、通常であれば免疫系は異物や危険な物質に対してだけ反応し、自己の組織の抗原には反応することはない。ただし、ときに免疫系が正常に機能しなくなり、自己の組織を異物と認識して自己抗体と呼ばれる抗体や免疫細胞を産生し、これらが特定の細胞や組織を標的にして攻撃する場合がある。この反応を自己免疫反応と呼び、炎症と組織の損傷を引き起こす。こうした反応は自己免疫疾患の症状である場合があるが、多くの人では作られる自己抗体の量がごく少量であるため、自己免疫疾患は起こらない。

だが、T細胞表面受容体の活性化がサイトカインストームを引き起こす可能性があることはよく知られており、サイトカインストームは、臓器および身体組織に重大な損傷を引き起こす可能性があるのだ。たとえば、肺でサイトカインストームが発生すると、マクロファージや体液などの免疫細胞が組織の損傷を引き起こし、その結果、急性の呼吸困難と死の可能性が生じるのである。


私たちの体を守る免疫システムだが、コントロールできなくなり、暴走すると自分自身の組織を傷つけ、最悪の場合、死に至る。つまり、免疫システムは諸刃の剣である。だからこそ、私たちは免疫反応をコントロールする必要がある。

ウイルス感染時に死んだ赤芽球を食べた樹状細胞が免疫反応を抑制するサイトカイIL-10を出して免疫反応にブレーキをかけている。


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