マイク・ケリーの幼児退行性の表現

マイク・ケリーの幼児退行性の表現

「技術の習得や社会的成功に向けて努力しない」という〝無力〟によるアートアプローチ

ゲイジュツは「障害」に恋をする。黄金率でないもの、弱いもの、足りてないもの、はそれを見た時、本能で補ってあげようとするそれがゲイジュツのクオリアだ。

意識、あるいは高尚芸術の外部へと無意識に追いやられていたこれらキッチュで幼児的な素材や感覚、思春期特有の暗い感覚を呼び覚ますマイク・ケリーの表現は、家父長制の社会秩序や文化体系に対する抵抗で、20世紀初頭のシュルレアリスムに共通しているといわれている。サブカルチャー、神話や哲学、記憶の共有や抑制、アメリカ中西部の労働者たちのメンタリティとその凡庸さなど、彼の関心の対象はきわめて広範囲にわたり、それらは作品に反映されてきた。

1988年に、ケリーは「喜びのための代償(Pay for Your Pleasure)」というインスタレーションを制作、それは、詩人、哲学者、芸術家の偉人のポートレイト作品が並べられたもので、並びの最後には有罪判決を受けた犯罪者によって絵が書かれた絵がかけられた。

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