ウイルスとは、腸内細菌叢(フローラ)における、「雑草」のような存在である。
ウイルスとは、腸内細菌叢(フローラ)における、「雑草」のような存在である。
この国の人間は、問題が起きても目の前の花や果実に目を奪われ、その問題の「根幹」、「種」そして、さらにその「土壌」については、決して意識を向けようとはしない。
地面にちょろちょろとしか生えていない「雑草」を引き抜こうとしてもまったく手に負えないときがある。大きくて複雑な根が土の中に深くはびこっているからだ。難問とはえてしてそういう厄介なものだ。今までのやり方で解決できるものではない。目に見えるところだけ対処していてもどうにもならない。根こそぎ引き抜く必要がある。というのがウィトゲンシュタイン以降のフィロソフィーの淵源である。
だが、実は「雑草」の根を残して刈ることで、土が軟らかく栄養豊富になり、だんだん刈るのが楽な「雑草」が生えるようになるという不思議なことが起こる。つまり、重要なのは「土壌」であり、現在においては、収穫が終わった作物の切り株や根を残し農地を耕さずに行う栽培方法「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)が注目されている。
生態系には、多様な生物・大気・水・土壌などの構成要素が密接 に相互作用し機能することで恒常性を維持するという、自然界が生み出した秀逸な自己調節機構が備わっている。
ウイルスの存在は、生物の進化と多様性、宿主生物の生理機能や生命現象、および、生態系における恒常性維持などに関与していることが示唆されており、ウイルスが生命の源流ともいえるゲノムから超個体、そして地球生態圏に至るまで、地球全体の生命活動に広く関わっている。
また、ヒト生体においても、腸内にも皮膚にもすでにたくさんのウイルスや細菌が共生していて、それらなしでは生きてはいけない。ウイルスの不顕性感染が、 宿主個体の細菌感染や癌の発症を予防するといった事例もある。不顕性感染が、マクロファージの活性を向上させ,細菌感染を防御することや、I 型インターフェロン・システムを刺激することで、創傷治癒能を促進していることも報告されている。
なぜ、「雑草」を根から取らない方が良いのかというと、「雑草」を抜くたびに土が締まって硬くなっていくからである。土が固くなると、固い土でも繁殖できるような「雑草」が生えて来やすくなる。このような「雑草」は根の張りがとても強いのが特徴で、根から抜くことを繰り返すことで、土壌の環境が「変異」を誘発する悪循環に陥る危険性が生まれる。
ウイルスとの「共叢」とは、枯れた後の植物の根が、微生物たちによって分解され、土の栄養となり、根があった部分は土の中でトンネルのように空洞として残るので、土がフカフカになり、細菌ウイルス叢(フローラ)というヒト生体において、微生物たちと協力して住みやすい環境を築いていくようになる。
「土壌」の環境が変わっていくと、少しずつ生える「雑草」も変わっていく。つまり雑草の根っこを残して切ることで、土がフカフカになり、フカフカの土を好む微生物や雑草が増える。このような環境で生える「雑草」は、根の張りが浅く、背が低く、柔らかいのが特徴だ。こういう性質の雑草は草刈りするのにも楽であり、野菜の生育の邪魔にならない。このような「雑草」が生える環境になってくると、畑の手入れはかなりしやすくなる。
ウイルスの中には、ヒトに感染して病原性を持つものだけではなく、病原性を示さずに不顕性感染をしているものがあることが知られている。すなわち、特に顕著な病徴(症状)を示していない健常人においても、不顕性感染しているウイルスが、生体内のさまざまな組織においてヴァイローム(ウイルス叢)を形成していると考えられている。ヴァイロームとは、ヒト体内に存在するウイルスの総体のことであり、病気を発症していない健常人においても、さまざまなウイルスが、さまざまな組織に、病状を示すことなく感染していると考えられているのである。
だからといって、この「雑草」を放置しておけばいいという問題ではない。基本は、根を残して「根元より下」を刈ること。「雑草」には「成長点」と呼ばれる成長が始まる部位が根本にあり、この位置よりも下で、鎌を少し土に入れて根をできるだけ残すように刈っていくことが大事なポイントになる。つまり、「雑草」は生えては切るの繰り返すことにより、肥料に頼りすぎず、「土壌」の力そのものを育てていくことで、生える雑草も柔らかくなって草刈りが楽になるだけでなく、新たなウイルス変異や強力な非自己との侵入に対しての感染防止や病気や害虫・障害に対する耐性も強化されることになる。
ワクチンという「除草剤」のすべてを否定するわけではないが、一時期に集中して「雑草」をねごそぎ排除するというやり方は、細菌叢フローラというヒト生体の「土壌」に対しても大きな影響を及ぼすことになり、この国の先人が築き上げてきた、世界に類を見ない日本人の優秀な腸内環境は、エピゲノムにプロミングにより、たった一世代で崩壊することになり、将来世代に対して、バトンをつなぐことが出来なくなることは決して忘れるべきではない。