かつやと好青年
これから夜勤が始まる前の腹ごしらえなのか、6名分のテイクアウトを取りにきた、お前行ってこいよと言われたのか、僕行ってきますと名乗りをあげたのか、いずれにしても取りに来ることになった青年と、商品を渡す丁寧なおばはんとのレジ前での一幕。
やはり、これからの仕事に備え体力を蓄えておく必要があるのか、ご飯大盛りや、ダブル、なかにはソース少なめなど、バリエーションに富んだザ・カスタマイズな注文だったようで、丁寧なおばはんはお会計の前に、間違いがあってはいけませんのでおひとつずつ確認させてくださいとハキハキとしたハイトーンな声で、カスタマイズの全容を青年に伝える。
どうやら青年は志願兵ではないと見え、確認と言われても誰がなにを頼んだのか、そう彼は注文にも携わっていないのだから、自分の分こそわかれども、お前行ってこいよと送り出すやつらの、ましてやカスタマイズなど知るよしもなく、丁寧なおばはんの小気味良いリズム感で繰り出されるカスタマイズの確認連射に困り果てた。
彼は、好青年なのだ。
丁寧なおばはんは青年を見つめたままである。
……。
……。
二人の間を…、わたしはダブルロースはカラダに悪いなと、キャベツ追加で帳尻を合わせる注文をしながら見守っていた。
彼は渡された商品を確認しながら、ない記憶を呼び覚まそうと、確認する術を持たないにも関わらず、確認を続ける。
俺は、なにを確認しているのか…。
そう思っていたに違いない。
もはや、確認出来ることなど、丁寧なおばはんの主張と、目の前にある商品達が一致しているかのみである。
青年は言った。
もう一度お願いします。
おばはんは、もう一度言いだした。
一度目と寸分違わずの感じで。
青年は言った。
二度目の確認連射すべてを被弾する前に、むしろはね返す勢いで。
合ってます。
彼は好青年なのだ。