![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79555299/rectangle_large_type_2_25fdd457fa8fafd1b40e7489484761d4.png?width=1200)
リズムゲーム戦 #4
僕はメロンもない部屋でイルカ男の謎と共に取り残されていた。
リンゴ、バナナ、パイナップル、マスカット、オレンジ、キウイ、グレープフルーツ、マンゴー、梨、ブドウ…
このリズム、どこかで覚えている。箱から出した時、やけに高いスコアを出せたのは僕が過去をなぞっていたからか。そうだ、僕はこのリズムゲーム戦で一度勝ったことがある。僕は思い出す。
「いらっしゃいませ」
青いワンピースの女性は何も言わず、重たくて沢山の色が宿ったカゴを船に置く。
リンゴ、バナナ、パイナップル、マスカット、オレンジ、キウイ、グレープフルーツ、マンゴー、梨、ブドウ…
「4890円です」
「ごめんなさい、少し待ってくださる」
「かしこまりました」
そういってそのみずみずしい女性は、かなり遠くの青果コーナーからメロンを投げた。
ピンポーン
チャイムの音でハッとする。
ピンポーン、ピンポーン、ピピピピ、ピンポーン
仕掛けられている。さっきのイルカ男か?僕はチャイムのリズムを崩すようにゆっくり、ガチャリと重い扉をあける。
そこに立っていたのはイルカ男ではなかった。青いワンピース、白い肌はみずみずしい。あの女性だ。そうだ、果物を沢山買い、僕のリズムを翻弄し、エロ登山家と一緒に山に登った、あのニヒルな笑みを浮かべたあの女性だ。
「あなたが僕に果物を送ったんですか?」
「ご冗談を。」
彼女はやはりニヒルな笑みを浮かべて返す。
「私と山に登ったこと覚えてる?」
「はい。」
「あなた、海が好きと言ったわよね。」
「はい。」
「私ね、海って言うの。」
「海…」
「私ね、一緒に山に登ってくれた男の人と暮らすのが夢だったの。」
「イルカに似たあの男の本当の姿は、イルカなんじゃないですか?」
彼女は僕の質問を無視して部屋の中に入ってくる。そして彼女はおもむろにキッチンで料理を始めた。
トントントン、トトン、トントン
キャベツを切る。手際がいい。これは料理に慣れているのではなく、リズムゲーム戦になれているからだろう。
僕はその挑発に乗らないようにリビングでぼーっとする。
すると彼女は香ばしい匂いと共に、僕の目の前に現れた。
「これを一緒に食べましょう。」
彼女は机に大皿の焼きそばを置く。
「どういうつもりですか。」
僕の質問を無視して彼女はこう言った。
「ここは今日から海の家なの。私が住むから、海の家。海の家といえば焼きそばなの。」
こんな面白くない鉄板ジョークから、僕と海の不思議な暮らしが始まった。