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バトルショートショート   ――『A』VS『B』――

栄《エイ》と備《ビー》は相対していた。

両者、互いに顔無しのっぺらぼう。白い光沢を持つ継ぎ目のないマネキンのような姿は、見る者に艶やかで硬質な印象を与えるだろう。

ただ、そのシルエットは明らかに備が男性型、栄が女性型であった。
備の髪型が坊主な一方、栄が白の長髪である点も、男女で分かれている印象を助長させる。

「……」

「……」

無言で両者は拳を構える。正面、1mの至近距離。

先に動いたのは、備。

「パンチ」

機械音で男性の声が発せられる。
同時に栄の顔面に向かって繰り出された備の右ストレートは、硬質な音を立てて外側に弾かれた。栄が前腕で防御したのだ。

「カウンター」

同じく抑揚のない機械音のような女性の声。
栄の行動は防御で終わらない。

前腕で弾いた相手の右腕、それによって空いた空間に右半身を滑り込ませそのまま右の拳で備の顔面を打ち抜いた。

ガラスが割れるような音が響く。というより、実際備の顔面が盛大に割れ飛び散っていた。

「……」

備が後ろ向きに倒れ、彼の頭部が地面を打つと同時に完全に砕け散った。
もう動かない。完全にただの首なしマネキンになったよう。

「借りは返したわよ」

最後に、淡々とした言葉が栄から発せられた。


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ビーバーの尻尾
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