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ひとり、清澄白川へ

春待ちの人と行く約束をしていたのだけれど、まだいつにするか決めることができず。なんだか毎週末(だけではなく平日も)混雑がすごくて、撮影可能エリアが2/11以降に制限されることがアナウンスされ始めたので、とりあえずひとりでふらっと行くことにした。坂本龍一展、年末くらいから観たかったやつ。



この写真、行ってしまった感があって寂しい気持ちになる
荒い映像から鮮明になる映像の部屋。
これは波打ち際の映像に端の方から鮮明になっていく。
まるで海岸にいるような気持ちになった。
小さな映像をiPhoneやiPadの画面に再生している、
組写真ならぬ組動画みたいな展示。この右側の部屋が好き。
霧の水槽。
これは見ている人も含めて作品になっていた気がする。
水槽はそれぞれ色や、様相が変わる。

展示は12のエリアから構成されていて、SNSによく投稿されている霧の彫刻もそのうちのひとつ。なんで写真がないかっていうと、相棒のデジイチを持っていきはしたのだけれど、興ざめしてしまったから。何が何でもいい写真を撮るんだ、みたいなテンションで展示を見ている人が多かったこと、単純に人が多くてカメラをカバンから出して持ち歩く気になれなかったこと、「音」や「空間」を大切にしている展示だと思ったのでシャッター音をさせて写真を取るのが憚られたこと、あたりが理由だ。他にもたくさん写真を撮っている人がいるし、図録をみたら(2月の発行になるらしい)いい写真はたくさんあるだろうから、自分が好きだなぁと思った展示を思ったように撮れたらそれでいいかなと思った。ライブもそうだけれど、カメラ越しではなくて自分の目で見るほうが大事かなと。
トドメを刺されたのは、ピアノの上に映像を投影する大きなスクリーン?がある部屋で。そこはピアノの音が不規則にしていて、スクリーンの映像が絶えず曇天のように変化しているところだったのだけれど、みんなそのピアノの音に耳を澄ませているのに、背後に立った外国人がガムをくちゃくちゃさせて噛みながらピアノを覗き込んだのを見たとき。ああ、この程度の解像度の人が、これだけ人がたくさんいたらもっといるだろうな、と思ったら、繊細な音や表現を探すことが途方も無いことのような気がしてしまって。それで、もう全部をちゃんと見て、何を感じるかまでを隅々堪能するのは無理だと思ってしまった。

あとは先日見に行った銀座の展示のほうが、個人的には好みだったのだと思う。人の多さもさほどではなかったし、もっと坂本龍一氏を近くに感じる内容だった気がする。特に生前の演奏を記録したピアノが置いてあるところは、今でもまた行きたいなと思う。こっちの展示にも、実際に演奏している坂本龍一が投影されたピアノが置いてある展示があったのだけれども、人がたくさんいて雑音のほうが大きく感じてしまった。終始、群衆や、今回の展示をプロデュースしたアーティストたちの向こうにいる坂本龍一を遠くから眺めている感覚だった。個人の感想だけれど。

でも霧の水槽や、組動画、水滴が落ちてくる水盤、坂本龍一の音を表現する方法は、それぞれ繊細でとても好きだなぁとも思った。彼は日常の中の音も集めていたので、組動画の風の音や鈴の音を聴いていると、そのときの坂本龍一の気持ちを想像したりもできた。わたしはたぶん、美術展などに行ったあと、自分の中に残るものを反芻するのもすきなのだと思う。

この展示はイベントとしては大成功だろう。作品を世に遺す、という意味や、商業的な意味でも。でも坂本龍一の音楽が好きだなぁとぼんやり思っている私からすると、ちょっと不完全燃焼だった。

美術館の中にカフェが2カ所ほどあって、100本のスプーンというお店の方で、今回の展示とコラボしたパフェを出していた。気が向いたので空いてたら食べて帰ろうかなと思ったけれど、混んでいるのを見て諦めた。平日でもまあまあの混雑で、帰路についたお昼くらいにはますます人が増えている感じがしたので、空いている時間に見ようと思ったら、平日の開館時間に行かないと厳しそうだった。土日祝は入場まで60分待ちという日もあって、空いている状態っていうのがそもそも難しそう。春待ちの人と行くとしたら土日祝になるだろうから、このあと会期の終わりに近づいて更に混雑が予想されるところへ、予定通り行けるかどうか怪しいような気がしてきた。というか、春待ちの人もそれどころじゃないだろうしなぁ、というのもある。

2回目があるかもしれない、と思いながら途中までは展示を見ていたけれど、もしかしたらないかも。年末くらいから見る気満々でいた期待値もあったのかもしれないけれど、そんな気持ちになった。行けてよかったとは思う。この規模感で、あらゆる感覚で坂本龍一をひもとくような機会は、そうそうないだろうから。

清澄白川は我が家からそんなに遠くないし、最近カフェがたくさんある人気のエリアのイメージがあったので、帰り際に資料館通りを通ってみた。何年か前に友人とぶらり途中下車みたいなことをして来たことはあったので、そのとき寄ったなぁというお店を見つけて懐かしくなったり、うなぎのお店がいくつかあって久しく食べてないなぁなんて思ったり。お散歩するにはいいところだね。美術館に行くかどうかはともかくとして、晴れた穏やかな日に、意味もなくブラブラしてみようかな。前に行った時にあった、理科室みたいなカフェとか、テラリウムの専門店とか、答え合わせみたいに探したりして。

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