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北翔大学_渡部監督と春季リーグ戦を振り返る_その1

札幌学生野球を記録する者として、2022年春は重要なシーズンとなった。感染症拡大防止施策下で開催された2021年秋季リーグ戦は入替戦を中止、特別規定によって、2部優勝の北海道大学が自動昇格。この結果、2022年の春季リーグ戦1部は史上初の7チームによる開催となったことが、まずひとつめの重要な点。ふたつめは、2019年秋を最後に中止されていた入替戦が3年ぶりに行われたこと。加えて、1部・2部入替戦は、1部の6位と7位、そして2部1位の3チームが1部最後の椅子を奪い合うという巴戦開催(これも札六史上初の事態)。「二つの史上初」を経験することになった2022年春の札六、これが、記録を綴る者にとって、とても重要なシーズンになったことの理由である。

さて、この「二つの史上初」の渦に巻き込まれたかのように、2部降格となったのが北翔大学である。昨年秋3位ながら、今春は5位。同率で並んだ北海道大学との順位決定戦に敗退。6位として入替戦行きが決まると、2部1位の札幌学院大学には快勝したものの、7位の札幌大谷大には壮絶な打ち合いの末、敗戦。リーグ戦終了時点では、入替戦出場チーム最上位ながら、無念の2部落ちとなった。その北翔大学を率いる渡部監督に春季リーグを振り返ってもらった。ロングインタビュー第一弾を一挙掲載(文中敬称省略にて失礼しております)。

■春季リーグ戦を迎えるにあたって

まず、その目標としては、僕は「日本一になるぞ」というのを、ずっと選手に言っていました。意図としては「今日試合だ、明日試合だ」というときに、誰も今日負けるなって思って試合に臨む人って、誰一人いないと思うんです。今日試合だ、今日はなんとか勝つぞ、相手すごい強豪だけど、何とか勝ってやるぞって、毎回思うと思うんです。毎回試合のときは勝つ、勝つこと信じて戦うってことは、全部つながっていけば全国優勝までつながっていく、全国制覇を信じるってことじゃないのか、という話を選手にはして、日本一を目指そうぜ、って言う話をして。なかには「そんな大きい目標なんて」って思う選手もいるとは思ったのですが、やはり監督が一番勝ちたいんだ!という姿勢を見せないと選手たちはついてきてくれないと思ったので、そこを一番の目標として、チームとしては掲げて、スローガンも「レボリューション*」ということで、革命を起こそうぜっていう、全日本で、まだ北海道は道都さんの準優勝が最高だよ、そこを越してみないか、そういった声掛けをして、今シーズンはスタートしていきました。

北翔大学2022年チームスローガン
Revolution~この一球にすべてをかけろ~
今まで前例のないことを成し遂げるためには困難を乗り越えてこそ。
今年もコロナに翻弄される1年になるが、言い訳にしていてはカッコ悪い。
全てを力に変えていく。

2022年1月12日に行われた部会時の資料:北翔大学硬式野球部Instagramより

■トライベースボールへの転換

春の最初のあたりは、ミスをしないように、徹底的にミスに対して厳しくあれ、っていう方針で進んでいました。オープン戦をしていても、やはり、どうしてもミスが出てしまう、一生懸命やっていてもミスが出てしまう。そのときにサッカーの監督さんの本*を読んで、思いっきりトライしないと成長しない、「ミスをするな」って言うと、こうやってグローブを思い切って手を伸ばして、取ろうと思ってグローブにあたっちゃったらエラーになる、ミスになるんで、選手は次第にグローブを出さなくなる、と。野球に例えれば、サッカーの本なんで、そうは書いてはいなかったんですけど、手を出さなくなる、あるいは、取りに行ったけど、というポーズで終わってしまう。それはもう自分の持っている100パーセントを出さないということになってしまうんで、その本を読んでから、選手を集めて「今までと俺、全然違うこと言うね」って言って「もうミスしていいから」「トライしよう」「思い切って手を伸ばさないと、そこでグローブあたって、その一球はエラーしてしまったとしても、次、じゃあ、どう一歩目切ればその一球に手が届く、なんとか捕れる、なんとかアウトにできる、打てる、抑えられる、っていう風に考えようってなるんで、そこからもう、春の途中からトライベースボールっていうふうに銘打って、とにかくトライしようと。トライに関しては大いにOK、理由があってトライする分には、全然。ただ、根拠のない暴走とか、そりゃだめですけど。基本的には意図があって、こういう状況で、こうだから、これ走ってみても面白いんじゃないか、行ってみよう、アウトになった、それはもうナイストライ。次アウトにならない為には、何が必要だったかな、という振り返りをしながら、それやってから、やっぱりチームがこう・・・「やってもいいんだ、トライしてもいいんだ」っていう雰囲気で、いい野球の雰囲気に変わったかなっていう。しめつけられている野球から、のびのびできる野球に、雰囲気のいい野球に変わったかな・・・僕自身感じていました。なので、いいかたちでリーグ戦も入れていたと思いますが。どっちが良かったのか・・・結果としてはやっぱり二部に落ちているわけなので、このアプローチが良かったのかどうかっていうのはまだ結論は出てはいないですが、でもこれは続けて行こうかなっていう、やっぱり選手が挑戦、トライするっていうことは成長につながると思うので・・・。

(トライベースボールに転換したことで)思い切ってバット振れるようになってきましたし、選手にはあっているかなと思います。最後の入替戦あの点差からの攻撃*が物語っているかなっていう。「もうやるしかないだろう、思い切って振るだけだ」みたいな、ああいう。狙い絞ってダメだったらしょうがないよね、ぐらいの。思い切りのいいスイングができるようになった、あの追い上げができるようになったところまで成長かな、と思うので、続けていこうかなと思っていますね。

*北海道サッカーの挑戦

https://note.com/heatwave2020/n/nc9c3be0d7a9d

*6月27日勝てば1部残留、負ければ2部降格となる札幌大谷大学との一戦
5回終了して2対15と一方的な展開に。6回から9回まで毎回得点、
11点を奪い返し、最後及ばずも、13対17まで追い上げた。

■プラスの働き掛けを

(以前は逆のアプローチを?)まったくそうですね。ミスを厳しく指摘しあわないとだめじゃないのっていう、ドンマイドンマイじゃ成長しないよね。やっぱり、圧倒的にミスを指摘されて、これ、みんなに迷惑かけるな、だから練習しなきゃなってなると僕は思っていたんですけど。それって、でも、なんか、後ろ向きの動機付けであって、ミスしたら迷惑かけるからって、マイナス。じゃなくて、プラスのモチベというか、届かなった、グローブ先っぽだった、どうやって一歩目切ったらいいのかな、プラスの働き掛けにつながらないと、伸びていかないと思うので、そこはちょっと考えさせられたというか、本当にいいタイミングだったかなぁと。時期は、4月の2週目とかそのくらいですね。もうリーグ戦、末から始まるというとき。こんな時期だけど、今気づいたのも、何かの縁だなとも思ったので。方針をここで転換するのも、どうかなとも思ったのですが、選手には、はっきり、カミングアウトというか「いや、俺、ちょっと間違っていたから方針変えるわ」そこはちょっと歳も近いんで「ちょっとこうしたいんだよね、トライベースボールやろうよ」と。で、そこから少しづつですけど。ベンチからも「トライ」「トライ」という言葉も出るようになってきましたし。(監督自身の言葉で選手に伝えた?)言葉でしかないと思うので、監督ってもう、如何に言葉で選手に伝えるかっていうところだと思うので。なかには「いいですね」っていう表情している子もいましたし、キョトンとしている子もいましたし、「そんなんじゃ・・・」という顔は、逆になかったですね。今までの厳しい方がいいと思っている子、いなかったんだ・・・と。そういう意味では、この子達にたちにはあっているかな、と。トップダウンで、そこだけは~チームの方針として~伝えました。キャプテン・副キャプテンは、ずっと密に、コミュニケーションはとっているので、いいと思ったものは貫く、すぐにやりたい人なんだ、というのは、たぶん、よくわかっている、だいぶ、僕のことをわかってくれている。僕も一生懸命、彼らを理解しようとしますし、お互いに、選手は監督を理解しようとして、監督は選手を理解しようとしている、お互いにそういう姿勢があれば、必ず、どこかで歩み寄れるよねっていう、話をしているので。(昨秋は罰走も試行しているという話もあったが?)罰がなくなりました。パフォーマンスアップにつながる練習でなければ意味がないですし、ダッシュ10本やったから、じゃあ、そのボール捕れるようになるか、エラーしないようになるか、っていうと、全然話は違うので。まぁ、選手が望むのであれば、キャプテンが「いや、これはもう、みんなが、気緩んでいるから、やりたいです」って言うのは、もちろん、否定しないですけど、僕からは、そういうのをやるっていうのはなくなりました。春のその時期からは。

■エラーの後の顔がよくなった

(トライベースボールに転換して)エラーに関しては、エラーの後の顔が良くなったと思います。エラーして今までだったら、落ち込んでいるというか一人で引きずっているというか、試合はまだ続いているんで、ただの一エラーなのでやっぱり試合のときはそう思えないとエラーして「しまった!」と言うのは、後でいいので、終わってから、次の試合に向けてどうするか、なので、そういう意味では、割とケロッとした顔をしているなっていうのは。なので、側から見ていたら「なにエラーしてヘラヘラしているんだよ」って思っている観客の方もいらっしゃったと思うのですが、僕は全然、あ、落ち込んでいないなっていうので、そのままでいいな、っていう感覚でしたね。

■3-2から腕を振れるか

フォアボールも難しいですけど、状況にもよるかと思うのですが。うーん、まあ、でも、フォアボールに関しては、ある程度、コントロールされたボールがボールとなってフォアボールになった場合には、なにも思わないです。審判さんのジャッジもあることなので、そこに関してはなにも。やはり、自分の意図していないところに、ボールが・・・(一例として)外構えたところがこっちに、ここに構えたのに、あちらに(逆玉)というのは、ピッチャーにとってはミスだとは思いますけど。でも、あまりコントロールに関しては、言わないですね。キワキワに・・・とは。それ投げられたらプロだなって思うので・・・。逆に、僕はやはり、3-2から思い切って「四球でもいい」と思って、腕振れるかどうかだと思うので、もっと上をいけば、3-2から、ど真ん中に真っ直ぐ放れるかっていうのが、いいピッチャーだと思いますね。自分のボールにやはり自信があって、投げ込めると思うので。普通、3-2から真ん中だと打たれると思って、変化球投げたいとか思うので。でも、変化球も、結局は、ただ体開いて、えいやーで、自信が無いような変化球って、やはり、曲がり早くなって見切られて終わりなので、そうじゃなくて、3-2から自信満々でど真ん中真っ直ぐ放れるっていうピッチャーがでてきてくれると、うち、もっと強くなるかな、と。それはこれからかな、と。四球出しちゃ駄目も言わない。たぶん、最近、言ってないと思います。ピッチャー陣もあんまりフォアボールに関して言われたことは最近記憶がないじゃないですかね。

■守備って守りじゃない

逆に僕はランナー出した方が、アウト取りやすくなる構図だと思うので。ランナーなしだと、普通に一塁に転送しないといけないですし。ランナー一塁だったら、セカンドでも取れますし、ランナー一・二塁だったら三塁でも、二塁でも、一塁でも。一、三塁でもゲッツーはとれるし、ランナーが三塁だとしても、ピッチャーゴロだったら、逆に、三・本間に挟んで三塁ランナー一気に死んでしまったら、攻撃側はすごくダメージが残りますし、1アウトプラス5ダメージみたいな。野球ってなんか、そこのなんか積み重ねだと思っているので、27個のアウトプラスどれだけ相手に精神的ダメージを重ねられるかっていうものだと僕は思っているので。だから、ランナー貯めて点が入らない方が嫌だけどなぁって、ずっと思っているので。守備で相手の攻撃を摘んでいって、相手にダメージを与える、高校のときもまあ、ずっと「攻撃は最大の防御なり」という言葉をいただいてはいたのですが、そのときはどういうことなのかをわかっていなかったので。『攻撃』っていう意味だと思っていた。でも、いま、監督っていう立場になって守備って守りじゃないよな・・・よく攻めの守備とか攻めの守りって言いますけど、そういうことなのだろうなーと。今になって気がつけたかな、と。

■一節・二節を振り返って

一節、戦った感じでは、本当に、実力差というよりかは、やっぱり、なんか、勝てるゲームをことごとく落としているなっていう雰囲気あったので、そこをどう埋めるか、力がないわけではないということはわかったので、僕としてはそんなに悲観的にはならない、というか、うまくかみ合えば、二節は全部勝っていけるんじゃないかな、と。(一方で)やっぱり、10試合、12試合、選手のモチベーション保っておくっていうのが、すごく難しいことだなとは思いますね。やっぱり、優勝がなくなるということは、選手にとってはすごく大きいことだと思うので、そこもそうですし、まぁ、良くも悪くも大学生って大人なので、考えてしまう。星勘定するので「これ、もう、たぶん、道都と東海がこんな負けるなんて、もうないしな、じゃあ、自分たち、もう(優勝は)ないな」と目標が一気に下がって「入替戦行かないように」って、いうところ、たぶん、下がってしまった。そこが問題かな、ハードルを下げてしまった、本人たちに確認したわけじゃないので、わからないですけど・・・見ている感じでは、そういう雰囲気だったかな、と。(目標は日本一を掲げている、どのような軌道修正を図るのか?)そうですね・・・やはり・・・先を、先じゃなくて、今の積み重ねが未来をつくるっていうのが紛れもない事実なので、今の試合、つぎの試合、つぎの最初の試合に対して、自分がどういう準備をするのか、どうやって臨むのかっていうところを大事に、で、その試合が終わったら、そのつぎ、つぎ、つぎ、っていうことかな・・・選手はそこでいいと思うんです。監督がその先を考える(たとえば)ピッチャー誰をこうまわして・・・だから、選手もちょっと、監督チックになりつつあるというか、それは、大学生になってくると~高校野球だったら、監督さんという絶対的な存在がいますんで、選手の中には「俺出たいなぁ、出たかったのになぁ」という子はいるとは思いますけど~大学生になると「いや、あいつがスタメンの方がよかったんじゃないですか」とか「ここでピッチャー変えた方がよかったんじゃないですか」まぁ、ある意味野球を、ある程度、理解してきているので、そういうのもあるとは思うんですけど、その分、先を意識してしまうというか・・・如何に今だけ見させられるかっていう*、次の、秋に向けてのテーマかなっていう。今を見るということは、ものすごく難しい・・・。

*「今を見るということ」については、この後に「試合中、勝つことだけを見ることができている」と東海大札幌キャンパスを評価されたこととの対比が興味深い。

◇完敗だったのは・・・

でも、本当に、だめだったなっていう・・・完敗だなぁっていうのは、学園さんの試合(二節)*だけですね。あれはもう点数取るところなかったので、あれは仕方ない。ただ、それ以外は、こっちが、余計な点、やってやって、やって、なので、全然・・・こっちに(敗因が)。ここ(二節・学園戦)だけかなって、全部試合やって、どうしようもない試合をしてしまったのは、ここだけかなっていう。(他は勝敗が入れ替わっていてもおかしくない?)そういう試合だったと思います。

*二節北海学園大学との一戦。
北海学園大学帯川に2安打完封負けを喫した。

■北大との順位決定戦での継投について

ピッチャーの、もちろん、信頼度・・・というか、どれぐらい我々、僕が、信頼しているかっていうところと関係しますが、ピッチャーって、あの5回跨ぎって、すごく僕はとても難しいものだと思うんですよね。新しい試合が始まるので。前の回までの5回までの雰囲気とはガラッと変わりえる、流れが変わりうるイニングだと思うので。6回というのは、整備後。なので、この時点での、島本に関しては、5回跨ぎができる、っていう信頼度がまだなかった。それだけです。もちろん、高い評価や信頼もありました。しかし、まだ、この時点の島本は、いいピッチングはするけど、5回跨ぎの経験も少なかったので、まだ、ちょっと難しいかな、と思って。後ろに18番を背負う選手がいるので、彼に何とか託すために、他のピッチャーで1イニングもてばいいと思ったんですけど、もたなかったですね。そこは、まぁ、誤算ではあるんですけど。でも、もう、このあいだの、入替戦のピッチングを見れば、もう、島本は、もう、もちろん6回以降も任せられる投手にはなったな、というのは、あるので。もう一回、いま、同じような展開がくれば、変えないとは思います。この時点では、5回跨げる投手としての信頼がまだなかった。

□継投について

うーむ、なんか、もっと、選手のときの自分の感情はない方がいいなぁって、いま、思っているんですけど、なかなか、消し去れなくって、やっぱり自分がピッチャーだったら「投げたい!」って思うと、思うんですよね。そこも、なんか、なかなか、ピッチャー変えるっていうのが、後手後手になりがちというか、わかっちゃいるんですけど。5回跨ぎは、理論というか、考え方としてはあるんですけど、僕、個人的には・・・というか、感情だけで言えば、やっぱり投げさせたい、長く投げさせたい、もちろん、いいピッチングしていれば、特に。行けるところまで行きたいとは思うんですけど。そのへんが、・・・難しいところですね。打たれてから代える、というのは、僕は失敗かなと思っている、もっと投げれらたのになぁって。代える、代えなきゃいけない、っていうのは、わかっているんですけど、やっぱり、いま、大事なところを任せられるピッチャーが二人しかいないので、行けるところまで、長く島本引っ張って、もうダメだってところで、代えるしか方法はない。あとは、そこに、得点力が~相手のピッチャーさんにもよりますけど~イケるなっていうのもあるんで、そういう戦い方に今回はなったので、だから、ある意味、ちょっと攻撃に自信があったゆえに、なかなか(降ろしにくかった)・・・ちょっと打線を信じすぎたのかなっていう。選手たちの気持ちとか、メンタル面も考慮して、考えなきゃいけないなっていうのは。相手のメンタルというか、自分の選手のメンタルですね、を、もっと感じ取れるようにならなきゃいけないなっていうのは、ありますね。

■順位決定戦から入れ替え戦までのひと月をどのように準備したか

この期間は、まず、グラウンド含め、周辺の整備ですね。部室の写真だとか、グラウンド廻りの散らかっている写真を僕がパパっと撮って、全員集まれるようにオンラインにして、写真をパワーポイントで見せて、これが今のチームの現状だ。こんなチームが勝てると思うかって。当たり前のことを当たり前にやろうって言ってきたよね?これって、頑張んなきゃできないことなの?ヒット打つより難しいの?エラーしないより難しいことなの?という話をして。そこですね。そこから、もう一回環境整備というか、身の回り立て直すところから、やって行こうっていうような・・・雰囲気になっていきました。

■今まで何を積み重ねてきたか対決

(身の回りを立て直したことで)ここ(学院大戦)は勝てたのかな、とは思います。ここは学院さんを上回ったのかな、という。僕は、勝敗決めるのって、プロ(野球)ではないですし、学生野球って、今まで何を積み重ねてきたか対決だと思うんですよね。うちがいくら積み上げてきたと思っても、相手がそれ以上積み上げてきたら、勝てないですし、たぶん、そういうことだったと思うんですよね。今回は、うちは学院さんには、かろうじて勝てたんですけど、大谷さんは大谷さんで積み上げてきたものの方が多かった、大きかったっていう、ただ、それだけだと、僕は思っています。

■勝ちきれなかった要因は・・・

(トライベースボールに転換して上手く行った部分もあったが、最終的には(どの試合がということではなく)「勝ち切れなかった」。その要因について尋ねた)しいて言うなら、たぶん、ベンチにいる選手ではないですかね。グラウンドでプレーしている9人ではなくて、ベンチにいる選手が如何に自分の出番が来たときを想定して、あるいは、出ている選手が力を十二分に発揮できるように、自分が何をすべきかっていうのを考えられていたかどうかの差ではないかどうか。オープン戦も重ねてくれば、この状況になれば、俺いつもこの辺で代打あったな、とか、代走ありそうだな、ピッチャーそろそろ変わるかもしれないなって、想像はつくと思うのですが、やっぱり、受け身なんですよね。準備しとけよ、って言われて、はじめてガード、防具つけて、バット持って、手袋履いて、っていう感じなので、そこがちょっと、準備が出来てないなーって。準備って、手袋つけて、防具つけるのが、準備だと思ってないので。控え選手の場合は、代打で出るか、守備から出るか(選手によって違いはあるが)、だいたい、代打で出る選手は代打で出るという、何となくイメージあると思うので、初回からベンチで声出しながらも、相手ピッチャーの配球を見たりだとか、ブルペンのピッチャー変わったら、そのたびに、変化球これ持っているな、あれ持っているなーと準備をしておいて、自分の前〜代打送られる前のバッター〜を見ていたら、こういうふうに入ってきているから、俺のときは絶対変化球からくるだろうって、準備して打席に入るのが僕は準備だと思うんです。それが、ちょっと。そういう部分が。で、代走だったら、ピッチャーの牽制見ておいて、2球以上絶対放ってこないな、で、自分代走で出たら、足速いと思われるから、2球多分牽制くるな、じゃあ3球目だな、って言うのを頭の中で、準備しておかなきゃならない、そのへんが、まあ、伝えきれてなかったところなのかな、っていうのは思ったところです。やっぱり、ちょっと指示待ち的なところが、少し、あるのかなと。どうしてもコロナもあって、こちらが指示しないで動くことに対して大人側が制約をしてしまったので、練習は何時間だよ、とか、早く帰りなさいよと、言われたら、彼らは忠実にそれを守ってきた。彼らに責任はないと思うので、こっち側が今度、秋に向けて、そういう自分で考えるっていう、考えるってこういうことだよ、っていうのを具体的に示してあげる必要があるかな、と。(春季リーグ戦中、踏み込んでは話さず?)具体的までは話さなかった。自分がいつ行けてもいいように準備しておくんだよっていうところまでは話してはいたんですけど。そっからその先は想像力を働かしてくれるかなと思ったんですけど、まあ、まあまあまあ、そう思った通りいかないっていう。(コロナ含めた周辺の環境の要因も・・・)影響もあるなとは思いますけど、そこをまあ、負けて気づくのではなくて、もう少し早く気づくべきであったなあとは思いますが。

■他チームと感じた差は・・・

そうですね・・・やはり、他のチーム。ウォーミングアップが違いますね。試合前のウォーミングアップ見ていたら、強いか弱いかわかります。やっぱり、うーん、道都さん見ていたときに〜今回、東海さん優勝しましたけど〜試合前のウォーミングアップでキャッチャーの三浦君と他のキャッチャーふたりでセカンドとピッチャーとキャッチーの距離にして、外野でスローイング練習していたんですよね、試合前に。そのへん、まず、意識として違うなぁと。絶対、走らせないのが、自分の仕事だというか、三浦君の中にそういうのが、あったのだと思います。逆に試合前でこれだけ連戦があるなかで、多分最後の方、二節の方の試合だったと思うのですが、そこでも、やっていたので、10試合(今回は12試合)を戦い抜けるだけの体力というか、肩肘の耐久力もそうですけど、そのあたりは普段から練習だけではなく、しっかりウォーミングアップとクールダウンをしていなければ、なしえないとこだと思うので、そこにまず差を感じました。丁度、うちの下級生キャッチャーも外野にいたので、二人呼んで「今日、何試合目?」「ああいうことができるんだよ、強いチームのキャッチャーは」「そうですね」って言っていたので、彼らが今後どうなるのか、楽しみです。

◇準備は「作業」ではない

掛け声ひとつ、ピッと鳴ってからスタートしていますね、強いチームは、ダッシュも。弱いチームは鳴る前に、もう、鳴るっていう前提で走って・・・作業なんですよね・・・作業というか、準備なので、ウォーミングアップ作業化されたら駄目なんですよね。そういう意味では、トレーナーも、作業にならないように、いろんなメニューを変えるのも、もちろん大事ですけど、手を変え品を変えて、というのも、もちろん大事ですけど、一番は選手自身がどうするか。そこに差を感じるな、すごく、思いました。

■勝つことだけを見ている

東海さんは、まぁやっぱり、勝つことにみんな貪欲ですね。勝つためだから受け入れるというか、いろんな監督の起用法や采配にしても、「勝つために監督が出したサインだから勝つために、俺ここでちゃんバントやらなきゃならない。」そういったところが見える感じがしました。ある意味、勝つことしか見てない、試合中、勝つことだけを見ることができているっていうのは、すばらしいと思いますね。たぶん、試合中に、星勘定とか、たぶん、してないですね。俺が監督だったらとか、たぶん、考えていない、みんな。みんなが、いま勝つために、ここで、いま、この状況でランナー進めるために、何をしなきゃいけないか、この状況で相手は何を投げてくるか、だけを考えている選手が他のチームより多かったのが東海大学さんかな、っていうのは思いますね。

◇ふくらみと厚み

そこには、監督さんもそうですし、コーチの藤田さんの存在も、たぶん、大きいのだろうなと思います。選手からしたら、やはり、日下部先生は年齢も、離れていて、大監督なので、遠慮や言えない部分もあると思います。そこの部分を藤田さんが、たぶん、上手くアプローチというか、つなぎ役というかを担っておられるのだと思います。そういう意味ではうちには安田コーチや玉木コーチなどありがたいOBコーチがいてくれるので、心強いです。組織が熟するために、トップとその下との差がありすぎても、もちろん、良くないと思いますし、縮みすぎても、組織としての厚みがなくなってしまう、適度なこうふくらみと厚みって、組織には必要だと思います。うちの連盟では、ふくらみと厚みをもっているチームっていうのが東海大学さんだと思います。すごく身近にいる、いいチームですね。

■このチームが今二部に落ちたのは・・・

一番はもう野球じゃないところですね、このチームが今二部に落ちたのは、そこ(野球)じゃないと思っています。野球の実力ではなくて、できることを、あたりまえのことをあたりまえにやるっていうことが、まだ、できていないので。今はだいぶ、意識して、やっていますけど。ここは、やらせるところかな、と思っていて、やらせて、当たり前なんだっていう、毎日朝起きて歯を磨くのが当たり前のように、学生コーチが「バッティング、行くぞー」って言ったら、みんなが返事するのが、当たり前のことだと思います。そのへんがちょっと、なあなあだったんですね。使った物をきれいに片付ける、ですとか、部室をきれいに使う、靴を並べておく、そういったところが、出来てないっていう部分が多々あったので、その辺はもう1回立て直しかなっていう。できることをやらないっていうのが、僕が一番駄目な事だと思うので、やっぱり、続けられる人が強くなっていくと思います。野球の練習も。当たり前のことを当たり前にできるようになりましょう。僕らにとって当たり前だったことが、たぶん、彼らにとっては当たり前じゃない場合も多々あると思うので、コロナもありましたし、そこはもう1回立て直すっていう意味で、練習のときも、掛け声にちゃんと反応しなかったら、やり直しとか、高校野球みたいですけど。でも、なんか、みんながやっているから、俺はやらなくても、ばれないだろうみたいな発想している時点でもう人間としてレベル低いですし、プレイヤーとしてもう上がって行けないと思います。人間としての器、受け皿があって、そこに、いろんな技術は乗っていくと思っているので、この器が小さかったら、技術は乗ってこないので、そこかなって、すごく思うので、そこを広げないと、どんなに練習しても、落ちていくだけだよ、小さな穴があるだけで、バケツに水は貯まらないですし、そこをちゃんと補修できるか、埋められるかということだと思うんですよ。そこさえやれば、選手たちは一生懸命やっているので、野球を。そこだけだと思うんです。野球は頑張れるので。気づかないところとか、嫌なところとか、そこは、我々大人達が口酸っぱく、言ってあげることが大事なのかな、っていう、そこを秋までに立て直して行けたらいいかなって思っています。

◇練習のための練習ではなく

野球のことで言ったら、まぁ、いろいろありますが、練習の練習をしていたらダメだなっていうのは・・・いろいろ考えながら、この場面、ランナー二塁想定して打つとか、ノーアウトランナー一塁で~ウチは送らないので~それを意識して打つだとか、送りバントはもう絶対、確率的に点数あまりならないというのはわかっているので、ランナー二塁は送って三塁にした方が点数入いるので。それはもう、セイバーメトリクスを参考にというか、あとは、一生懸命こうやって(グラウンドでのバッティング練習を見ながら)バッティング練習って一日何百回もバット振りますけど、バント練習一日何百回もやる選手いないので・・・そう考えたら、打つ方がいいんじゃないかな、と僕は考えて。打つために練習しているので。(そのあたり)コミュニケーションを取りながら「いま、何考えて打っている?」っていうふうに聞いたりします。考えてやってないと進歩がないので、聞かれるということは、次も聞かれるかもしれないってことなので。授業と一緒ですね、当てられる可能性があるから、ぼーっととしているみたいな。先生が延々と喋っている授業って、ぼーっとしていても、全然問題ないので。そこはちょっと意識しますね、話しかけて、コミュニケーションを取って。

◇共育者として

よく言えば、僕は選手を信じているというか、悪く捉えれば、甘い部分かなという。また、僕は勝負師ではないと思っています。私自身は学生野球の監督である以上、教育者であるべきだと思っているので。その教育も教えるじゃなくて、共に育つだと思っているので、僕もやはり成長していかないと、彼らに今後、良いものを伝え続けられないですし、「俺は指導者だとか、経験がお前らよりあるぞ、野球知っているぞ」って高を括っていたらそこで終わりかなと思います。あくまで、共に育つという、僕は共育者なので、そういう意味では、彼らを信じたいっていうのはありますね。嬉しいですけどね、純粋に彼らが活躍して喜んでいる顔を見ていたら、勝つことももちろんですが、勝つよりもそっちの方が嬉しいですね、いいプレーしたときの顔とか。

■培われにくものを、培っていく

野球って、チーム力というか組織力だと思うんですね。組織力があるところが、強い、勝つ、と思うので。強いチームって個じゃない、高校野球とかもそうですけど、いい選手がいるから甲子園出られるわけじゃない。意外と、この代は過去最弱だ、みたいな代が甲子園行きました、優勝しました、みたいな話は、よく聞く話なので。
 
そうでなければ、だいぶ昔ですけど、佐賀北高校さんが甲子園優勝するなんて、ないと思うので。練習時間も短い、特待生なんか、もちろんいない。じゃあ、何が勝敗を分けるんだと考えた時に野球っていうスポーツは集団スポーツなので、組織力、いかに戦い方をみんなで共有できるか、組織として、相手とどう戦うか、考えられるっていうところに尽きるのかな、と思って、そこが一番難しい。本当に。ただでさえ、コロナで、リモートで、人間関係が希薄になって、つながりみたいなものが、なんだかこう、あんまり、わかりにくい、感じにくい世の中になってきているので。培われにくいものを、いま、我々は培ってあげなきゃいけない立場にいると思うので、すごく難しいですし、もちろん、そこに、やりがいも感じますが。

取材日:2022年7月1日

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