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22秋の札六棚卸(決算号)

「どういうわけでこんな事件に深いりするのだい?解決してみたって得るところなんかないじゃないか?」
「ないだろうかね?仕事のための仕事さ。君だって誰かを診療するときには、料金のことなんか考えずに、必死に病症と取っくむだろう?」
「研究になるからね」
「研究に終わりはない。教程の連続で、最後には最大のものが控えているのだ。これなんかなかなかタメになる事件だ。金も名声も得られるわけではないけれど、それでも何とか解決はしたいのだ。」

「赤い輪」(シャーロック・ホームズ最後の挨拶)

◇総括

▢第一節_戦績・戦評

▢第二節_戦績・戦評

◇優勝:星槎道都大学

8勝1敗1分。無冠で過ごした21年を経て20年秋以来の王座奪還に成功。春季トーナメント戦での優勝、そして、タンチョウリーグでの充実ぶりから、躍進が期待されたが、予想を裏切ることなく、優勝を果たした。春足元をすくわれる格好になった学園に連勝してきっちりとやり返す。この辺りのやり合い<これが札六、これぞ札六>です。

□誌面版

◇投手陣

失点23でリーグ2位。最多登板は伊東佳希の7試合(先発3試合)、投球回数は29回2/3でリーグ3位。伊東は二節大谷戦でノーヒットノーランの快挙を達成。最高殊勲選手賞、最優秀投手賞、特別賞、ベストナインの4冠に輝く。
最多先発は滝田一希で4試合に先発。左右両エースが投手陣を引っ張った。

札六を代表しているともいえる両投手。他の5チームは両投手を打つことを目標としている筈。両投手がさらに力を増すことは、札六打者のレベルの引き上げに大いに影響を及ぼす。札六全体を俯瞰する観測者としては、伊東と滝田、そして彼らを狙い撃つ打者陣の切磋琢磨が札六全体のレベルアップに繋がってくれることを期待するばかりです。

その伊東、滝田の次を担う世代の印南伊吹が2試合、佐藤爽が1試合に先発。救援で松田航瑠、飛渡翔太、松山比呂、ルーキー藤澤大翔が登場した。

◇野手陣

49得点、95安打でいずれもリーグ最多。チーム打率も1位だが、率は2割5分9厘。春優勝の東海が3割を越えていたことを考えると、ここにも投高打低の傾向があらわれていたようにもみえる。
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ベストナイン獲得の三浦響が12安打、新人賞選出の菊池大翔も12安打で打率3割越えを記録。松下壮吾、福島一茶、岡崎翔太もそれぞれベストナインを獲得。
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納得の顔ぶれが並んだことをまずは確認。その上で、主軸打者の爆発が限定的であった中で勝敗を分けるポイントのひとつに脇役の活躍があったことを記録しておきたい(なお、主軸打者の爆発が少なかったことは、道都に限らず、他の5チームにも、概ね当てはまる共通の傾向)。

一人目は9打点で打点王に輝いた福島一茶。開幕スタメンを逃した福島だが、途中出場で結果を出すと、以降、主に7番に入って勝負強さを見せつけた。二人目が福島に次ぐ6打点をあげた堀越颯太。堀越は札大戦、そして東海戦での重要な場面でのスクイズを決めて役割を果たした。

この三遊間コンビの躍動を誘発したのがルーキー田中銀河の存在であったかはどうかは定かでないが、各チームでサード(三遊間)問題が勃発している中で、道都だけは少し違う意味合いでのサード(三遊間)問題が発生しているのかもしれない。
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これはひとつの例だとは思うが、控えメンバー含めた総合力で他のチームを道都が上回ったことが、秋の結果につながったのではないかと思う。

◇2位:北海学園大学

5勝4敗1分、2位。春4位からAクラスに復帰。序盤1敗1分とつまづくが、3戦目東海戦に勝利して一節後半を3連勝で乗り切る。二節開幕戦で道都に敗れるも、大谷と東海に連勝。道都唯一の追手として追いすがるも、北大に敗れて優勝を逃すと最終札大戦にも敗れて連敗で終戦。一節中盤以降、リーグ戦全体を大いに盛り上げたが、最後の締め括り役を買って出てしまった格好になった。大谷との引き分け、北大、札大にそれぞれ1敗。そして道都に2敗。とりこぼしをなくした上で、前を追えるか。課題、立ち位置は鮮明に浮き上がってきた。これこそ秋の成果物かもしれない。

□誌面版

◇投手陣

失点37でリーグ4位。最多登板は帯川瑠生で5試合(先発4試合)、投球回数はリーグ全体でも2位となる31回1/3を投げた。

工藤泰己が3試合、坪田瑠衣登が2試合、常谷拓輝が1試合に先発。救援で堀川怜央、小沼快登、高谷舟、木村駿太が登場。帯川を除く6投手全員が1年生という布陣ながら、春から登場した投手も多く、既に実績十分な感すら漂う。

その中で、あえて、来春以降、個人的に期待する投手として、左腕の木村と完成度の高さを感じる高谷をあげておきたい。

◇野手陣

得点32でリーグ3位、打率は丁度2割でリーグ4位。

チーム内最多安打はルーキー杉林蒼太の9安打。杉林は打率3割越えで新人賞を獲得。

以下、池本航大、志村瞭、ルーキー関虎太朗が6安打。志村は春に続き本塁打も記録。きれいな放物線を描くホームランバッターとして来春も注目。

また、目立つ場面は少なかったかもしれないが、効いていた印象があるのが平手塁(5安打、3打点)。

チーム全体の数字を見ると盗塁、犠打がリーグ最少(盗塁7で札大と並んで最少、犠打は14で最少)。微妙な判定による犠打失敗もあったが、好機を活かしきれなかった場面が何度かあったように思う。攻撃の流れ、リズムとテンポに乗り切れなかったという印象。

投手陣同様、高校時代の実績十分なタレントが多く顔を揃える野手陣。新鮮力が十分であることは明確。彼らが新戦力、そして真戦力になるとき、古豪復活・第二幕の幕が上がるそのときと待ち構えている。

◇3位:札幌大学

4勝4敗2分、3位。春に続いてAクラスを確保。Aクラス、Bクラスの境界線を示すようなわかりやすい戦績。この勝敗数、不思議と札大らしさを感じるのは私だけだろうか。春の劇場感はやや沈静化した印象の秋。この秋が次なる盛り上がりの序章として位置づけられるかは23春以降の答え合わせ事項。
登場機会が増えてきているのが苫小牧中央高出身選手勢。次のチームの骨格を担う役割を果たすか。

2分の相手は道都、東海。札大が示す可能性と現時点での最高到達点の両方を示してもいる。来春、ここを越えていけるかどうか。

□誌面版

◇投手陣

失点19はリーグ1位。22年秋の札六~投高打低~を率先垂範した。最後のシーズンを迎えた左右のエース、山川、原田がそれぞれ3試合、成田康祐、阿曽伊吹がそれぞれ2試合に先発。

最多登板は松崎輔の6試合。その松崎は好救援で打線援護を引き出し2勝をあげた。松崎登場は個人的に22秋の札六の重要ニュースのひとつ。変則サイドスローが強力なピースになれる可能性を示してくれたように感じている。

他、救援で長谷隼兵が3試合、ルーキーの宮田文仁が2試合に登場。春4勝の吉澤佳祐は1試合のみ登板。

1年時からマウンドに立ち続けた山川、原田、そして最後に輝いた松崎は卒業するが、3年生以下も経験積んだメンバーが残る投手陣には来春以降の期待が高まる。さらなる高みを追いかけつつ、打線の奮起を待ちたい。

◇野手陣

得点21でリーグ最少。春53点(但し、春は12試合なので単純に比較できないのだが)をあげたチームだが、秋はその姿を変えた。「札大劇場」と書く機会もほとんどなかったように思う。少し以前の札大打線の雰囲気に回帰したような秋。

三振が76でリーグ2番目に多く(最多は大谷の79)、四球20でリーグ最少。数字と結果だけ見ての即断は控えるが、何かしらの傾向が潜んでいるかもしれない。

佐野翔騎郎が悲願のベストナイン(外野手)選出を果たす(12安打)。塩沢一郎はベストナインこそ逃すも本塁打2本の活躍(11安打)。チーム内安打数上位は、小坂凌平の8安打、太田光正の7安打(太田は本塁打も記録)。塩沢、太田は共に春は大不振にあえいだが、秋に結果を出した。札大スラッガーナンバー24を背負う小坂、来春以降も中心選手としての躍動に期待。

◇4位:東海大学札幌キャンパス

4勝5敗1分で4位。3連覇に挑んだ秋であったが21年秋から続いていたリーグ制覇が途切れた。防御率リーグ3位、打率リーグ2位と数字的に大きな欠落があったとは思えないが、春と比べて、何かが不足している状態が解消されないままシーズンが終わってしまった印象が拭い去れない。その何かについて、仮説をひとつあげるならば、守備の安定感。安定感を損なったものは14を数えた失策(リーグで2番目に多い)。安定感の欠如が流れを阻害し、当然、勢いにも乗れない。そんな状態だったのかもしれない。来春に向けて、この欠落をどのように埋めてくるのか、注目したい。

□誌面版

◇投手陣

失点26でリーグ3位。登板数は6試合登板の登坂真大(5試合に先発)と橋本大昴がチーム最多。登坂は防御率0.61で優秀投手賞に選出された。

以下、山下泰世と小泉皓士朗が4試合、渡部雄大と高木健人が3試合で続く。渡部、登坂、小泉、橋本がそれぞれ1勝をあげた。

春6勝、最優秀投手賞含む3冠を獲得、全日本大学野球選手権大会ではノーヒットノーランを達成した渡部であったが、秋は苦しんだ。他、救援で高田洸弥、山優斗が登場。

◇野手陣

得点35でリーグ2位、犠打24はリーグ1位。服部大(11安打)が遊撃手、岡本魁(10安打)が外野手でベストナインに選出。

チーム内での安打数上位は石橋翔が8本、鈴木彪我が7本。チーム内での打点最上位が相馬大河、鈴木大地の5打点。5試合の出場であった相馬の打点が最上位(しかも4打点は二節道都戦での満塁本塁打によるもの)となった結果をみると攻撃陣が迫力を欠いていたことは否めない。春首位打者・ベストナイン選出の鈴木大地が低調に終わったこと、同じくベストナイン選出組の林祥大、塚本和真(出場4試合のみ)の不在が響いたか。また、その不在をカバーする目立った新戦力も秋には登場を見ることができなかった。

二節北大戦(9/15)1回裏、北大の佐々木が放った大飛球をセンター岡本が好捕。秋の札六イチの美技であったことを記録。

◇5位:北海道大学

4勝6敗で5位。順位としては5位だが「4位グループ」として捉えるのが、22秋の札六の風景として、適切かもしれない(もっとざっくり整理するならば、1位道都、6位大谷を除いた中位集団の最後方が北大だったという見方でも良い)。開幕戦を勝利で飾るが、その後4連敗で一節を終える。しかし、春に続く二節巧者ぶりを発揮(岩見沢スイング・バイ成功)して、二節は3勝2敗。今春一部昇格後対東海戦3戦目にして初の東海越え、そして、学園にとどめを刺す勝利と「事件」の主役を務めた。主力の4年生投手数名は抜けるものの、野手主力は多く残る。来春以降「事件」は「茶飯事」に変わっていくかもしれない。

□誌面版

◇投手陣

失点42でリーグ最多。しかし、1試合に均せば5点以内。2桁失点の2試合(23失点)を除くと8試合で19失点(2.3点/1試合)と奮投。エース宮澤太成の離脱を全員でカバーしていたことが明確。

吉丸拓実、高橋祐太がそれぞれ4試合に先発。田所大貴、小岩宥光がそれぞれ1試合の先発を任された。開幕戦で遠藤彰、二節開幕戦で小岩、橋爪が二節の東海戦、リーグ戦の行方を決した学園戦で高橋がそれぞれ勝利をあげた。救援陣で飯島孝平、遠藤、保田泰生が登場。

ルーキー小岩、保田が札六デビュー。小岩はチーム最多の14回2/3を投げた。この経験が来春以降につながっていくことを期待したい。

◇野手陣

得点24でリーグ5位、チーム打率は2割に満たずリーグ最下位。投高打低は22年秋札六全体の傾向だったが、北大は特にその傾向が顕著。盗塁数16はリーグ1位だが、逆に見ると、この数字でよくぞ4勝したともいえる。

その中で和田侑万が打率3割越え(9安打)でベストナイン(外野手)に選出。和田は8打点を叩き出して、リーグ全体でも2位の好成績。また、近江徹太も6打点と勝負強さを見せた。

チーム視点を離れての(札六全体での)ジョーカー候補は大澤楽汰。二節学園戦での学園優勝の望みを打ち砕く先制の本塁打が候補選出の理由。秋、対学園戦では7打数3安打。来年4年目、学園との対戦は続く。引き続きジョーカーぶりを発揮するかに注目。

◇6位:札幌大谷大学

2勝7敗1分で6位。春の7位に続き最下位脱出ならず。コールド負けはなく、二桁失点が1試合、5点以上失った試合も2試合のみ。守れてはいるものの得点で上回ることができない。基本的には積年の課題が継続している状況とみる。

□誌面版

◇投手陣

失点40でリーグ5位。投手陣の軸は伊藤嶺。先発5試合を含む全8試合に登板。一節最終北大戦では6安打完封、二節北大戦では1安打完投勝利とチームの全勝ち星をあげる。投球回数49回2/3でリーグ1位(2位学園・帯川が31回1/3、この数字を見ると伊藤の突出ぶりが際立つ)。春から継続していた全試合登板は途切れたが、守りを固める大谷の中心に伊藤がいたことは間違いない。

開幕を含む2試合の先発を託されたのが鳴澤聖弥。香月辰哉、伊東優希、山森誠矢がそれぞれ1試合に先発。救援で奮闘したのが柄目大作で伊藤に次ぐ6試合に登板、伊藤と共に試合を作り、整える役割を担った。

◇野手陣

総得点26点でリーグ4位。安打数はリーグ2位の72安打(1位は道都の77安打)ながら併殺打が8でリーグ最多。好機を逸して得点に繋がらなかったということか。

大見晨藍が春に続きベストナイン(二塁手)に選出(13安打)、飯田柊哉、佐藤颯馬、高橋彰馬が8安打で続いた。打点は大見、飯田、佐藤、高橋がそれぞれ4打点でチームトップ。この4人で16打点を稼いだ。小山、飯田、大見から始まる新打線に期待が高まったが、4番に入った佐藤及び佐藤以下(5番以降)の調子がやや上がり切らなかった印象が強い。

来春以降は、佐藤、高橋の復調、石鳥颯の本格化が得点力向上の鍵を握りそう。内外野の要であった林涼太と小山朝陽の後釜にも注目をしたい。

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