22春の札六棚卸(決算号)
■1位:東海大学札幌キャンパス(11勝1敗)
11勝1敗で札六を制圧、連覇に成功した。唯一の敗戦を喫した星槎道都大学以外のチームにはほぼ手を足も出させなかった。
□投手陣
投手陣を引っ張ったのは渡部雄大。6戦登板して無敵の6勝。内外角への丁寧な投げ分け、ゾーン境界(線)への巧みな出し入れで打者との駆け引きで主導権を握り続けた。左の渡部と並び立ったのが右の登坂。「道都番」に当たったこともあり、負けが一つついたが、一節は伊東佳希に投げ勝つ。佐藤優真、鈴木一茶、山優斗、高木健人が救援で登場。強力な左右のエースと最小限の救援ユニットで12試合を乗り切った。
□打撃陣
昨年秋までの従来組に加え、この春から加わった新戦力組がさっそく存在感を発揮。新旧融合のどこからでも点を取れる打撃陣を形成。首位打者を鈴木大地、打点王に佐藤豪紀、本塁打王は相馬大河と三冠を独占。安打数上位10傑に6人(相馬大河、竹内大介、岡本魁、塚本和真、林祥大)が入り、リーグ最多の84得点を叩き出した。開幕戦で正捕手の鈴木彪我が負傷、離脱という緊急事態が発生したが、竹内大介、羽田倖大がカバー。鈴木彪我には気の毒なシーズンになったが、チーム全体で危機を乗り越えた。
□TIPS
今春最初の得点は北海道大学との開幕戦、4回表無死満塁で佐藤豪紀遊ゴロの間に挙げた1点。佐藤はその後、6回にも満塁の場面で打席へ。センターへの犠牲フライで打点を挙げる(北大守りの乱れもあり走者一掃の犠飛になった)。中軸起点の攻撃で走者がたまって佐藤を迎えるという状況が多発しそうなことは既に開幕戦で見てとれていた。全日本大学野球選手権大会二回戦・佛教大学戦で何度か訪れた好機は、まさにこの開幕戦の状況とよく似ていた。
□戦績一覧
■2位:星槎道都大学(9勝2敗1分)
20年秋以来に参戦するフルシーズンで優勝を目指した星槎道都大学であったが、結果は準優勝。一節東海大学戦での惜敗は自力修復可能な傷であったが、札幌大学戦を引き分けたことで半歩後退、二節北海学園大学戦に痛恨の逆転負け。最終日を残して優勝へ登り詰める東海大学の背中を見送る格好となった。
□投手陣
投手陣は、リーグ最多・12名の投手を投入。6名でシーズンを乗り切った東海大学とはきわめて対照的であった。前述した北海学園大学戦は継投で生じた間隙を突かれたところもあり、継投の難しさを、あらためて、思い知らされたかもしれない。
□打撃陣
そして、打撃陣。こちらも東海とは対照的。新戦力が一気に台頭してきた東海に対して、道都は、ほぼ昨秋を踏襲した布陣。選手構成の相違が必ずしも戦績に直結したとは言い切れないが、勢いといった感覚的な部分も加味して評価するならば、道都がやや迫力を欠いていた感は否めない。そのように感じる、別の側面からのひとつの大きな要因は主砲岡崎翔太の状態が最後まで上がりきらなかったこと。ここに集約されるように思う。一方、主に二節で得点源となった池田魁や最終戦の北海道大学との一戦で逆転弾を放った三浦響の活躍は光った。
□TIPS
道都の得点経過と試合経過を追いかけていて、昨年秋の棚卸で東海を称した一文~必要にして充分、過不足のない的確な攻撃~を思い出した。簡単に言うと、二桁得点までは挙げないが、コールド要件成立に必要な得点を早い回に奪って最短距離で勝利をするというイメージ。この春の道都はどこかそんなイメージをまとっていたような気がしてならない。その道都がいくつかの「よもや、まさか、あわや」に見舞われ続け、結果優勝を逃すことになる。札大との引き分け、学園大戦での逆転負け、そして敗退かと思われた最終の北大戦がそれである。終わってみれば、1部昇格直後のルーツ校に苦しめられ、私学のルーツ校と準ルーツ校に優勝の可能性を閉ざされた格好となったわけである。東海とのマッチレースと高を括っていたということはないと思うが、こういった事態こそがリーグ戦の醍醐味のひとつでもある。あくまでも観戦者の視点からであるが。
□戦績一覧
■3位:札幌大学(5勝5敗2分)
札大劇場、春の大波編。コールド勝ち、コールド負け、それぞれ2試合と出入りの大きい12試合となった。終わってみれば、5勝5敗2分。2019年春以来のAクラス。
□投手陣
投手陣、エース山川海斗は6試合に登板して1勝止まり。勝敗自体は不確定要因の影響を受けはするが、調子自体も一番いいときからはやや距離があるように見えたが、実際のところは、どうだったのか。チーム最多登板が10試合に登場した吉澤佳祐。札大劇場の恩恵もあって4勝を稼いだ。登板した投手は総勢8名。阿曽伊吹、長谷隼平がそれぞれ5試合、原田康生が4試合に登板。
□打撃陣
几帳面にそして愚直なまでに犠打を用いる作戦からの方向転換が見てとれた今春の札大オールスターズ。方向転換との相関は不明だが、ここ数シーズンでは最も打線がつながり、適時打が多く出た印象。一方、本塁打での得点も目立った。布施友梧の満塁弾を皮切りに、佐野翔騎郎、杉木優斗が共に3点本塁打。アーチ3発で10点を挙げた。アーチ攻勢は劇場感醸成に大いに貢献した。チーム最多安打は佐野翔騎郎。岩田一希、影山裕利も二桁安打で攻撃の中心を担った。高谷耕平、久しぶりの復帰はうれしい知らせ。
□戦績一覧
■4位:北海学園大学(4勝7敗1分)
ある程度の苦戦が予想されたが、予想を越える厳しい踊り場となった。古豪完全復活の第二幕である。
□投手陣
まずは投手陣。大黒柱となるべき帯川瑠生がとにかく安定せず、出来不出来の振れ幅が非常に大きかった。エースの乱調がチーム全体へ動揺を広げてしまう危うさもあったとは思うが、その動揺を最小限に抑えたのが1年生の存在。常谷拓輝が札幌大谷大学戦で、堀川<二代目レオ>怜央は星槎道都大学戦で、それぞれ初勝利。常谷は4試合登板に加えて、二刀流DH起用で2試合に出場、3安打1打点を記録。堀川はチーム最多の7試合に登板。勝敗はつかなかったが、坪田瑠衣登の登板も6試合を数えた。
□打撃陣
打撃陣。チーム内での安打数トップは4戦目以降4番に座った久保田廉太朗、打点トップは満塁弾含む2本塁打の志村瞭。金野颯汰は星槎道都大戦の大逆転、仕上げとなる逆転満塁本塁打で存在感を発揮。そして、1年生が躍動したのは打撃陣も同様。下向航、杉林蒼太、関虎太朗らが今後への期待を抱かせてくれた。
□戦績一覧
■5位:北海道大学(3勝7敗2分)
18年秋以来の1部復帰。一節は未勝利で終わったが、二節は3勝3敗。一節の2分けが1勝に換算され北翔大学と5位で並ぶ。その北翔大学との順位決定戦を制して、見事1部残留を決めた。北翔大学には一節、二節と連敗していたが、入替戦行きが懸かる大一番、三度目の正直で勝利して入替戦行きを回避した。
□投手陣
投手陣はエース宮澤太成が2勝、救援の飯島孝平が1勝を挙げた。他、吉丸拓実、原田拓夢、橋爪健宏、遠藤彰、田所大貴が登板。田所は中堅、代走としても奔走した。
□打撃陣
打撃陣ではチーム最多安打が今利之で12安打、最多打点は近江徹太で5打点。12試合を振り返る中で目を惹くのが試合終盤に発揮する粘り強さ、そして、実際に多い得点。3勝すべてが7回以降の逆転勝ち。全34得点中9点を8回に奪っている。二つの引き分けも先行された後に、追い付く展開。終盤にしぶとく粘る北海道大学のトーナメント戦、そして秋が楽しみだ。
□戦績一覧
■6位:北翔大学(4勝8敗)
一節、二節ともに2勝4敗で4勝8敗。勝利数は、4位学園と同数、北大より1勝多いものの、北大に勝率で並ばれて、順位決定戦へ。その順位決定戦を落として入替戦へ廻ると、7位大谷に敗退して、2014年秋以来の2部降格が決まった。9回打ち切りでの引分け、さらには巴戦での入替戦と、いくつかの「この春だけ」に最も翻弄された印象があるのが北翔。決して弱った訳ではない、けれども、勝てなかった、一部に残ることができなかった。北翔が身を削って示してくれた22年春の顛末は野球の深遠を教えてくれているようさえ思える。
□投手陣
戦前の予想通り「髙・島」コンビが主軸で奮投。髙津柊が2勝、島本太一が1勝、劇的な逆転勝利を飾った二節の北大戦は坪井陽汰に初勝利がついた。登板試合数は髙津10(先発5)、島本8(先発7)、救援陣は坪井、三間陽樹がそれぞれ6試合。藤田祐大4、森歩2、鏡大志1と続いた。
□打撃陣
昨秋のリーグ戦、そしてリーグ戦後に萌芽の兆しを見せた新型ランサーズ打線。結果的には期待通りの爆発とはならず、また、一部開花もあったが、満開未満、五分咲き程度だったという印象は否めない。まずは主砲の竹内快維。安打数、打点いずれもチームトップと数字上は申し分ないのだが、どこか不完全燃焼な感は否めず。こちらの過剰で一方的な期待であるならば、申し訳ないが、決して、そうではないことを願っている。一方、竹内を主峰と見立て場合に属峰として期待していた河野優希が二節北大戦でサヨナラ弾、またルーキー伊藤が開幕の学園戦で本塁打と勝利に直結する一振りが見られた。勝ちゲームで打ってこそ、記憶に焼き付く一打になるという事実は否めない。試合を決める(そして、一部復帰を引き寄せる)一打が竹内バットから放たれることを秋は期待したい。安打数チーム内上位は、竹内以下は8本で渡辺琉太、細谷健と中西堅が7本で続いた。
□戦績一覧
■7位:札幌大谷大学(2勝8敗2分)
2勝8敗2分で7位。本戦最下位ながら巴戦での入替戦連勝で1部残留を決めた。展望号で「漂えど、沈まず」と称した通り。
□投手陣
投手陣は伊藤嶺と柄目が各1勝。伊藤嶺は一節・二節の全12試合に加えて入替戦の2試合にも登板、全14試合で登板した。登板数では成田が9、柄目が8で続く。先発最多は伊東(4試合)。香月が2試合、内川、山森、鳴澤がそれぞれ1試合に登板。二節後半の3試合は伊東・成田・伊藤・柄目で乗り切った。このユニットが今春の大谷投手陣の完成型であったか。
□打撃陣
大見が二塁手ベストナイン選出。小山と並んでチーム最多安打。飯田、槙、佐藤が8安打で続く。打点トップは佐藤の8打点。
◇4月30日道都戦(0-6)
道都が立ち上がりの1・2回に6点を挙げ、そのまま逃げ切って開幕戦勝利。初回松下の大会1号2点本塁打、ルーキー石垣、さらには伊丹の適時打で一挙5点、続く2回に三浦響適時打で6点目。先発滝田が5回を零封、以降、柴門、櫻田、野呂とつなぐ。大谷大の先発香月は2回を投げて6失点と試合を作れず、二番手柄目、三番手伊藤が3回以降無失点でしのぐも攻撃が不発(安打数3)に終わった。
◇5月1日北大戦(4-4)
入替戦で名勝負を繰り広げてきた両チーム。リーグ戦初対戦の第1ラウンドは引き分け決着。北大は2回藤原の本塁打で先制、続く3回には近江の適時二塁打で2点を追加。追う大谷は1点差とした5回裏に4番佐藤の2点本塁打で逆転。追いかける北大は8回代打山上の三塁打で同点機を作り大澤適時二塁打で同点に追いつく。北大は先発原田の後を受けた橋爪、飯島が6回以降を無失点でしのぎ、8回の同点打を呼び込んだ。
◇5月4日北翔戦(7-3)
先手を取ったのは北翔。3回終了時点で3-2と1点リード。追う大谷は4回北翔バッテリーエラーで同点、さらに6回中川適時二塁打で4-3と逆転。北翔は9回髙津投入して裏の逆転勝利に望みをつなぎたいところだったが、佐藤、福岡に適時打を許し、この回3失点。突き放しに成功した大谷は四番手成田が最後を締めて今季初勝利。2回から7回途中まで投げた柄目が勝利投手。北翔は序盤の攻勢で試合を決めたかった。
◇5月5日学園戦(2-7)
学園志村の満塁本塁打含む6打点の活躍、1年生投手の継投で2勝目を挙げた。学園大は3回一死満塁の好機に3番志村が右翼へ満塁本塁打、さらに池本の適時打も加わり、一挙5得点。7回には再び志村、池本の適時打で2点を追加、試合を決めた。池本、志村が全打点を挙げる活躍。投げては先発常谷が6回1失点、二番手坪田も以降を1失点。大谷は6回、8回と得点機を得るがそれぞれ1得点、反撃及ばず2敗目。
◇5月7日札大戦(4-4)
3点差を追う札大が9回二死から佐野の3点本塁打で同点に追い付き敗色濃厚の一戦を引き分けに持ち込んだ。札大は1回に無安打で1点を挙げるも、その後は7回終了まで無安打と打線が沈黙。しかし9回、直前の守りで適時失策の吉田が執念の安打から同点機を作ると、この好機を佐野が見事に仕留めた。大谷は5回石鳥、大見の三塁打で逆転、二番手の伊藤嶺が好投するも佐野の一振りで同点とされ、2勝目を逃した。
◇5月8日東海戦(0-5)
東海が危なげなく大谷に勝利、全勝で往路首位通過を決めた。東海は1回、鈴木大地犠飛と塚本適時二塁打で2点を先制。3回には塚本の二打席連続適時打と佐藤豪紀スクイズで2点を追加。投げてはリーグ戦初先発の山が8回まで無失点(被安打3)の好投、二番手~こちらもリーグ戦初登板~の高木も得点を与えず、完封リレー。大谷は先発成田が早々に捕まり、柄目・伊藤の継投で反撃を待ったが、打線が沈黙(安打数3)した。
◇5月12日道都戦(3-8)
道都が大谷をくだし5勝目をあげた。道都大は初回、三浦響の適時打と松下満塁本塁打で5点を先制。続く5回は池田魁適時打、9回には堀越適時打などで小刻みに加点。大谷の追い上げを3点でしのぎ、そのまま勝利。1回先制攻撃の得点が効いた。スコアだけ見ると一節と似た展開。今季初先発の田湯が勝利投手。大谷先発柄目は2回以降立ち直ったが初回の乱調が悔やまれる。3番石鳥2安打1打点は明るい兆し。
◇5月13日北大戦(2-3)
北大が逆転勝利で1部復帰後、初勝利を挙げた。2点を追う北大は5回大澤中越適時打で1点を返す。8回のピンチを先発宮澤の後を受けた二番手飯島がふたつの三振を奪って切り抜けると、その裏に好機到来。大澤四球出塁、二盗に悪送球絡んで無死三塁。ここで3番今が右越適時三塁打でまず同点。さらに四球、申告敬遠で得た満塁逆転機に敵失で1点が加わり、3-2と勝ち越しに成功。大谷は終盤守りの乱れで逆転を許した。
◇5月18日札大戦(8-4)
札大が大谷をくだして、二節2連勝。札大は初回四死球で得た走者を置いて杉木三点本塁打で先制。続く2回も2四球と失策で得た満塁の好機に影山適時打で2点を奪う、さらに3回には西村適時打で1点加えて、3回までに6-1とリードを奪う。先発山川は7回を投げて、2失点。7安打を許しながらも大量援護を受けて今季初勝利。大谷先発伊藤嶺は四死球から大量失点。7回以降反撃に転じるも及ばず4連敗となった。
◇5月19日東海戦(2-5)
先制したのは大谷。2回昨日から打順7番に下がった飯田が右中間へ本塁打を放ち1点を先取。その裏東海大は四球、敵失で得た好機に押し出しと竹内適時打で3点を奪い逆転。東海は続く4回には林、平野の適時打で2点を加え試合を決めた。先発登坂が5回まで、6回からは山へ継投。登坂は被安打3、山は被安打5ながら奪三振9と冴えた。大谷大は四死球含めたミスからの失点で劣勢に陥り、その後反撃ならずで7敗目。
◇5月20日学園戦(10-4)
学園大は3回8番指名打者で登場の常谷適時打などで幸先良く先制、しかし先制直後に帯川瑠生突然の乱調などでこの回6失点。大谷は二遊間問題解消を目論んでの真島先発起用も的中、伊藤嶺皆勤登板も継続、成田、柄目と繋いで2勝目。最終戦は北翔大。
◇5月23日北翔戦(3-7)
北翔が長打攻勢で4勝目。昨年秋からの対大谷の連敗も3で止めた。1点先制を許した北翔は2回、後藤ソロ、渡辺3点本塁打で4得点、逆転に成功。6回にはこの日2番の河野優希中前2点適時打で追加点。9回には緒方にも本塁打が飛び出し7点目。投げては先発島本が7回途中まで1失点の粘投、最後は髙津に繋いで逃げ切る。大谷大は8回2点を奪い追い上げるも及ばず。なお、大谷伊藤が全12試合登板を達成した。
□戦績一覧
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?