脳の軽量化
あけぼのの空朧々と前途三千里の思ひ胸にふさがり、芭蕉は旅立ったが、あけぼのの空に意識朦朧と前途三十歩余りをヨロヨロと柱の角に足の小指をぶつけ、こけつまろびつトイレにたどり着く頃には息も絶え絶え、眠気眼に窓の外を見るとすだれ越しに見えるのは電線に留まる妙に白く輝く丸い鳩が全く動かず、おかしいなと思ったらそれは鳩ではなくて水銀灯だった。
レム睡眠かノンレム睡眠か知らんが、半ネム状態で排尿と朝の冷気で身震いした頃にようやく覚醒し始める。
コンピュータは技術の進歩とともに軽量化が進み、年寄りの頭は老化が進むごとに脳の軽量化が進んでいくものである。
なにか書く事でもないかなと思いめぐらせているが、乾いた雑巾を無理やり絞るように、希薄な脳味噌から言葉を絞り出そうとしてもちっとも出てこない。ふっと面白そうな話を思いついても一つの文節をポチポチ打っている間に次の文節が何だったのか忘れてしまい、キーボードを打つ手は止まる。力なく中空を見つめ「なんだっけ」と、ぼんやりと考えているうちに伸びた鼻毛が朝風に揺らぐ。
夕べから降り出した雨は一夜明けても降ったりやんだりで少々肌寒い。これから車の定期点検。点検中の一時間余りを喫茶店で過ごしたいところだが、コロナ災害で喫茶店も閉店続き。仕方がないので文庫本でも持って点検時間中を過ごそうと思っている最中。
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