見出し画像

水辺の徘徊者

朝から雨が降っている。梅雨と言えば七股池の亀だ。
亀の徘徊の多いこと。夜とか朝などは特によく見かける。
道路の真ん中で、首を伸ばして佇んでいるのを見て、車に轢かれたりしないか心配になる。
実際に道端や側溝で、甲羅に穴があいたり、ひびが入ったりして瀕死の亀を見かけることがある。そのたびに「だからもう、危ないって言っただらぁっ!」と三河弁で、心の中で呟きながら舌打ちしたりする。
散歩の途中、徘徊中の亀を見つけ、「危ないで帰れ」と言いながら、池に返してやっている近所のおじさんおばさんをよく見かける。
それにしても、なぜかこの時期の亀は徘徊する。七股池に限らず日本各地の水辺で徘徊している。

亀に「なぜ徘徊するのか」と直接聞くのが一番いいのだが、いくら私が聞いたところで、彼等は首を引っ込めてしまって全く相手にしてくれない。


若い女性も全く相手にしてくれないが、亀も全く相手にしてくれない。


七股池の水辺から道路までの約10メートルは長い距離ではないが、土手を3メートルくらい上がらないと道路には出られない。これが亀にとって楽に上がれる高低差なのかどうか知らないが。

時々我が家の庭にまで入ってきているカメもいる。庭の周りには側溝があり、唯一亀が入れる可能性があるのは玄関だけだが、20センチくらいの高さのステップを2段越えなければならない。この段を20センチくらいの亀なら努力次第で上がってこられるかもしれないが、10センチあるかないかのサイズの亀も庭にいたりする。彼は一体どうやってあの20センチの段差を二つも超えてきたのか不思議でならない。

ここに亀には人の知り得ない隠された能力というものがあるのだろう。
なぜ梅雨時の亀は徘徊するのか。

亀は押し黙って何も答えてはくれない。 

いいなと思ったら応援しよう!