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フリー台本:通行許可【無料】


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登場人物

 ・門番&老人  (脚本表記:門番、老人)
 ・美女     (脚本表記:女性)          
 ・英雄     (脚本表記:男)    
 ・英雄の娘   (脚本表記:女)    
 ・ナレーション (脚本表記:語り部)  


本文

【シーン1:現在】

語り部「高い石壁に囲まれたとある国…その国でただ1つの出入り口である、南の門の前で、綺麗な黒髪の若い女性と年老いた門番が会話をしている」

老人 「おや、お嬢さん。見かけない顔だねぇ…観光かい?」

女性 「いいえ。知り合いがこの町にいるから、会いに来ました」

老人 「そうかい、そうかい…こんな美人さんが会いに来てくれるなんて、その人は幸せだねぇ」

女性 「ありがとうございます」

老人 「どれ、いま門を開けるから、少し待ってておくれ」

女性 「え? 良いんですか?」

老人 「ん? どうしてだい?」

女性 「ここの門は、そう簡単には開けて貰えないと聞いていたので…」

老人 「あぁ、悪い王様が国を治めていた頃は、そんな事もあったねぇ…でも、ある素晴らしい英雄が、その王様を殺してくれたおかげで、今はもうすっかり、この国も変わったのさ」

女性 「王様を殺した、英雄ですか?」

老人 「ああ、そうだよ。彼は今でもよく覚えているけれど、気品に溢れる、素晴らしい男だった」

女性 「どんな方だったんですか?」

老人 「なんだい? お嬢さん。彼の事が聞きたいのかい?」

女性 「はい。よろしければお話、聞かせて頂けますか?」

老人 「勿論、かまわないとも。彼は…」


【シーン2:過去】

男  「逃げろ。逃げなくては…」

語り部「人々が寝静まった夜の街道に鳴り響く、一つの足音」

男  「早く逃げないと…」

語り部「夜の暗闇に溶け込むような、真っ黒なローブに身を包んだ男が、真っすぐ南へと向けて、石造りの道を駆け抜けて行く。男は時折、遠くから響き渡る、鉄と鉄が擦れ合う音に怯えながらも、視界の奥にそびえる城門が、少しずつ大きくなっていくことに、安堵し始めていた」

男  「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…すいません!!」

門番 「何だよ? こんな夜更けに」

男  「夜分遅くの無礼、大変申し訳なく思っております。ですが、その無礼を承知の上でお願いします。ここを通してください」

門番 「ここ? あぁ、この門をか?」

男  「はい。そうです」

門番 「駄目だ」

男  「…え?」

門番 「この門は、何人たりとも通す訳には行かない」

男  「そ…そんな…」

門番 「悪いな。そんな訳だから、こんな夜中に出歩いてないで、家に帰ってゆっくり休みな」

男  「ま、待ってください!! お願いです!! 俺は今すぐに、どうしてもこの国から出なくてはいけないんだ!!」

門番 「駄目だ」

男  「…そんな。門はこれしか無いのに」

門番 「駄目なものは駄目なんだ。諦めろ」

男  「どうしても…ですか?」

門番 「あぁ、どうしてもだ。この門は絶対に誰も通しちゃいけないんだよ。それこそ、蟻の一匹だって認める訳にはいかないんだ」

 ※舞台など視覚的な演出が可能な場合はここで、門番は足元に這いつくばる蟻の行列を指さす。なお、男はその事に気が付かない。

男  「いったい、どうしたら…」

語り部「しかし次の瞬間、男の中にある疑問が浮かび上がる」

男  「いや。待てよ。それなら、皆はどうしたんだ?」

語り部「男の家族や仲間達は無事、国外へと出て行った事は間違いない。しかし、この国の出入り口はここ1つだけ。本当に通り抜ける事が出来ないと言うのであれば、彼女らは果たしてどうやって、この国から出て行ったのだろうか…?」

門番 「あ~あ。にしても、折角あの悪魔みたいな国王が死んで平和だってのに…ここの給料はなぁ」

語り部「門番のその一言に、男は閃く。そうか、通り抜けるには、何か条件があるのだな、と」

男  「なぁ。あんた、ここの給料が不満なのか?」

門番 「え? ああ、そりゃあなぁ…24時間、立ちっぱなしで働き詰めのわりに、大した額が貰えねぇからなぁ」

男  「なら、金をやるから通してくれないか?」

門番 「何?! 金だと?」

男  「そう。いくらでも欲しい額を言ってくれ。言い値を払ってやる。なにせ今の俺は、この国の王様くらい金持ちだからな」

門番 「…」

男  「いくら欲しい? このくらいはどうだ? どうだ?」

門番 「駄目だ。いくら積まれても、ここを通す訳にはいかない」

男  「そ、そうか…」

門番 「さっさと帰っ…」

男  「なら女はどうだ?」

語り部「お金は条件ではないらしい。そう判断するや否や、男は、次の作戦へと移る」

門番 「女?」

男  「あぁ、見たところあんたは独身だろう? この写真を見てくれ」

門番 「ほう…こいつは…」

男  「どうだ?」

門番 「かなりの上玉だな。気品に溢れ、それでいてかなり聡明な人間だ」

 ※門番は女を知っているかのように答える。

男  「だろ? あんた見る目があるな!! こいつは俺が今日まで手塩にかけて育てて来たんだ。門を通してくれたら、必ずあんたのところに嫁がせてやる!! どうだ? なぁ、なぁ…どうだ?」

門番 「うん。駄目だ」

男  「…」

門番 「何度も言わせるな。諦めろ」

男  「そう言う訳にはいかな…」

 ※兵隊の行進が迫りつつある足音が聞こえてくる

男  「?!」

語り部「男の言葉が、再び聞こえ始めたあの、鉄と鉄が擦れ合う音によって遮られる。その存在はまだまだ視界に捉える事は出来ないが、先ほどとは異なり、音はより鮮明に響き渡る。そしてその事は即ち、少しずつではあるが、彼らが男の方へと迫っていることを意味していた」

門番 「この音は…死んだ王様お抱えの騎士団だな。あいつら止めときゃ良いのに、国王暗殺の犯人達を探してるんだよな」

男  「…」

門番 「自分達だって内心は嬉しいくせに。いやだねぇ騎士道って奴はよ。俺だったらそんな素晴らしい、勇気ある英雄達のためになら、何でもしてやりたいとすら、思うけどなぁ…」

男  「…本当か?」

門番 「あ?」

男  「本当に何でもやってくれるのか?」

門番 「なんだよ急に…」

男  「見ろ」

語り部「男は被っていた黒いローブを脱ぎ捨て、その顔を露わにする。男は美しい黒髪を持ち、気品に溢れた顔の持ち主だった」

門番 「お、お前は?! 指名手配中の?!」

男  「そうだ。俺は国王暗殺のリーダーなんだ」

門番 「な、何でお前、まだこんなところにいるんだよ?!」

男  「仲間達を逃がすために、囮として街をずっと駆け回ってたんだ。お陰で、この国に残っているのは、もう俺ただ一人。だから連中も、是が非でも俺だけは処刑したいと躍起になってるんだ」

門番 「それは大変だ!! あいつらもうすぐそこまで来てるぞ!!」

男  「頼む。助けてくれ」

門番 「あぁ。あんたはこの国の英雄だ!! 勿論だとも!! それで、どうすれば良い?」

男  「門を通らせてくれ」

門番 「いや、それは駄目だ」

男  「なんでだよ!!」

門番 「それとこれとは話が別だ。それよりどうする? 早くしないと!!」

男  「だから通してくれよ!! それだけで事足りるんだよ!! うわ?! もうそこまで来てる!! 頼む!! 頼むから!! お願いだ…ひ、ひっ!! 辞めろ!! 来るな!! 来る…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 ※ここで一度、暗転する。

門番 「一人の英雄を助けられなかった。心から残念に思うよ」

男  「最後に…教えてくれ…」

門番 「ああ、俺に答えられることなら、なんでも聞いてくれ」

男  「どうしたら…門を…通してくれたん…だ?」

門番 「だから、何をしたってダメなものはダメなんだ。最初から言ってるだろ?」

男  「な…ぜ…」

門番 「何故って。そりゃあ規則だからだ」

【シーン3:大過去】

語り部「時は遡る事、半日ほど前」

門番 「待て」

女  「何ですか? 私は急いでるんですけど…」

門番 「悪いが、この門を通す訳にはいかない」

女  「あら?」

門番 「この国の規則でな。国王が暗殺された場合、その犯人を捕らえるまでの間、何人たりとも、この門を通る事は許されないと、規則で決まってるんだ」

女  「どうしても?」

門番 「ああ。それこそ、蟻の一匹だって通す訳にはいかないね」

語り部「そう言うと門番は、足元に這いつくばる蟻の行列を指さした」

女  「ふうん…」

語り部「さて、どうしたものか? 女は静かに腕を組んで考え始める。既にこの国を出て、隣国で自分達の受け入れ準備を進める仲間がいる以上、国を出る方法自体は、何かしらはある筈なのだが…」

女  「あら…?」

語り部「先ほど、男が指さした蟻の行列を何となく追いかけて、門から壁沿いに数メートルほど右へと移動していた女は、ある事に気が付く」

女  「大穴…?」

語り部「見れば門から僅か数メートルほど横の壁に、ちょうど人間が1人通れるくらいの、大きな穴が空いており、そこから蟻の行列が、外へと出て行っているのである」

女  「ねぇ。この門を、なのよね?」

門番 「ああ、この門を、だ」

女  「そう…じゃあ」

 ※女、歩いて大穴をくぐる。その後、穴の向こう側から顔だけ出して門番に語り掛ける。

女  「こうして、この穴からなら、出て行っても言いのよね?」

語り部「女は大穴を潜ると、頭だけを穴から生やすようにして門番に尋ねる」

門番 「あぁ、俺は門を通すなと言われているだけだ。他所からなら、誰が何をしようと俺には関係ないね」

女  「そう。わかったわ。ありがとう」

語り部「女はそう言って微笑むと頭を引っ込めた。門番は暫くの間、大穴の方を見つめていたが、やがて再び前を向き…辺りには再び、静寂が訪れた」

【シーン4:現在その2】

老人 「これが、我が国最高の英雄の、悲劇的な結末だよ」

女性 「なるほど…」

老人 「もしよければ、門をくぐってすぐの広場に、英雄を弔う石碑がたてられているから、見ていくといいよ」

女性 「あ、それは良い事を聞きました。是非、立ち寄らせて貰いますね」

老人 「うん。さて、随分と長話をしてしまったね。それでは、よい観光を」

女性 「はい。ありがとうございます」

語り部「開かれた門を潜り抜けると、女は早速、老兵から聞いた広場へと向かい、そして片隅にひっそりと佇む石碑の前で立ち止まる。数秒ほど目を閉じ、何かを思いめぐらせていたかと思うと、一言だけ呟いた」

女性 「はじめまして。頭の固い、私のおじいちゃん」

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