![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/126654004/rectangle_large_type_2_bfab81363c139528fa7d54094176cd13.png?width=1200)
日本航空JL516便は何が凄かったのか?
私はパイロットであり、客室乗務員でもありました。
1月2日、衝突、火災事故。羽田空港での事故で、海上保安庁の乗員は残念ながら
助からなかったが、日本航空の乗員乗客は全員生還した。
この事故を個人で振り返ってみたとき、涙が止まらず、震えを感じた。
日本航空はすごい航空会社だと
羽田空港 ランウエイ34Rと特色
空港というと、必ず、騒音問題があります。大阪伊丹空港はその関係で、
夜21時に閉まってしまいます。羽田空港も近隣の騒音の関係で、海側へ
滑走路が建設されている経緯があります。着陸時には34Rの滑走路で、
騒音を軽減。離陸の際は05という新設された滑走路で効率よく運航を目論みたが
実際は、34Rに着陸をしないと、05から離陸できないので、
あまり効率は良くない。
海上保安庁の飛行機はどうして34Rから離陸を試みたのだろうか?
通常は05離陸、34R着陸が主流なのに。それに海上保安庁の基地でもある
羽田空港。この空港には十分慣れていたはず。
エアバスA350という飛行機
最新鋭の飛行機は実は厄介である。過去の不具合等の情報がないので、飛ぶ方は
決して楽ではない。特に緊急手順は、誰も行ったことがないので、特に神経を尖らずはず。まして、うまくできないことが多い。
そして最新の設備を十分に使いこなすことができない場合が多い。
ここでの注目は、HUDヘッドアップディスプレイという機器。
![](https://assets.st-note.com/img/1704381770352-R91HB425lt.png)
精密に安全に滑走路に進入できるように、軍事的に開発されたものが、このA350には、標準で備わるようになってきた。Boeing 787にも採用されているが、精密だけに、周り、周辺が見えなくなるという、ピンホール現象が起きやすいと言われている。過去、秋田空港で、大韓航空機が誘導路に着陸をしたのを覚えているだろうか?あのとき、パイロットはHUD を使用して着陸したと証言している。
JL516便がこのHUDを使用して着陸したかはわからないが、もし使用していた
場合、外界が妨げられていて、海上保安庁の飛行機を目視できなかった可能性も
否定できない。
しかし、このHUDは安全のために使用することが強く推奨されているので、
なんら問題はない
緊急脱出できない理由
ここからが本題である。日本航空の客室乗務員の偉業を伝えたい。
まず飛行中の航空機での、最高責任者、または最高権力者は機長である。
飛行中は何人たりとも、機長の指示に従わなくてはならない。
緊急脱出においても、客室乗務員は、絶対に機長の指示に従って、脱出行為を
行わなくてはならない。読んだことがある方もいると思うが、機内、緊急脱出の
冊子にはきちんと、"指示があるまで、ドアを開けないでください"と記述がある.
言い換えれば、機長が開けろ!というまで、開けてはならない。しかし、唯一、
機長の指示に従わず、ドアを開けていい時がある、それは機長が指示を
与えられない時、いわゆる、パイロットが事故で死んでしまったときである。
それ以外、客室乗務員は、ドアを開けてはいけない、というのが前提である。
今回の偉業について
多くのYou Tubeに脱出時の動画が投稿されているが、これらは全て、
航空法違反に抵触する可能性があるので注意していただきたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1704383306320-7bHmBjm54p.png?width=1200)
ドアを開けろ!はやく外に出させてください!など怒鳴り上げる乗客を尻目に、
一向にドアを開けなかった客室乗務員。火災の際、もっとも深刻なのは火ではなく
有毒な煙である。少しでもこの煙をすえば、数秒で呼吸困難、窒息そして気を失ないと思います。火傷ですむ火に比べれば、これを死守しなければ、今回の生存は
ありえなかったと思う。そんななか、日本航空の客室乗務員は一向にドアを開けなかった勇気に私は驚きを感じた。
機長の指示がなかったから開けなかったのでは?という人がいるが、実はこの時、
機内インターフォンが故障してしまった。唯一の機長と客室乗務員との連絡手段が閉ざされていたのである。エアバスの調査員が即日、日本に飛んできたのは実は
このせいである。火災事故より、事故発生時に機内インターフォンの故障という
重大なエアバスの落ち度を確認にきたわけである。
若くて可愛い客室乗務員が増えてきたが、その反面、経験不足や社会人としての
考え方も問題視されている。日本航空もその波に乗って、経験のある、年配の
客室乗務員は会社を離れている。そんな客室乗務員が今回、機長を指示を待たず、自己判断で状況を認識して、ドアを開放して、乗客を助けた。それも300人以上の乗客の脱出に貢献したことは、奇跡に等しい。
ANAとJAL人気はダントツでANAである。
特にビジネスマンは、ANAの信頼性を高く評価している。しかし、ANAの信頼性は多くの国内線ネットワークによるものであって、
安全による信頼性とは聞こえない。日本航空の良さは、航空券が安いとかよく聞かれるが、本来、安全は当たり前なので、航空会社の評価ではあまり、安全だから!とは評価に入らない傾向にある。
衝突した判断力の凄さ
パイロットは着陸やり直し、という行為を行う。ゴーアラウンドというが、定説では危険と思われるときは、いつでも、たとえ着陸してでも、ゴーアラウンドを行えと指導されている。過去に起きた、Fedexの成田空港での事故は、ゴーアラウンドをしていれば、助かったのでは?と思わせる事故であった。
しかし、今回、JAL516便のパイロットは、ゴーアラウンドしなかった!?
あれだけ、大きな事故があったのに。私はこの事実に、驚き、
JALの偉業を感じた。
あのまま、海上保安庁の飛行機と接触を起こしてから、ゴーアラウンドして
空中を飛行した場合、目の前には、フジテレビなどがある、お台場に激突していた可能性がある。特に大型機は、着陸寸前がもっとも運用性能が悪い状態。
多くのパイロットは必ずと言っていいほど、あの場面でゴーアラウンドするはず。
しかし、JL516便の乗務員はやらなかった!どうしてかはこの理由にあると思う。
どのパイロットもそうだが、先のことを考えながら運航している。
US Airwaysのハドソン川で有名な、サレンバーガー機長が世界を回りながら、
講演を行なっていたが、落ち着いたら、私もぜひ、この機長の講演を聞きたいと
思う。
日本航空、世界で一番安全な航空会社、そして日本人として誇りに思う航空会社である。
いいなと思ったら応援しよう!
![はちのすけ Virtual Work](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/53352388/profile_cb49b0ad6867e6486a9bbfb5e76affab.jpg?width=600&crop=1:1,smart)