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このパルプがアツい!-THE OUTSTANDING PULP PICK UP-

4年目の今年も言葉の弾丸が風を切る!秋の最強パルプスリンガー決定戦!1ケースのコロナを、無上の栄誉を求めて800字×3本のコースを駆け抜ける1年で1番激熱な月、いかがお過ごしでしょうか!

直木谷ヒトシです。逆噴射の戦場、PPU(パルプピックアップ)するくらい本腰で参戦できてるのは2年ぶりとなります。久しぶりにこの血湧き肉躍る論理の死闘に帰ってこれたことを嬉しく思います。メキシコよ!私は帰ってきたぞ!

さて、逆噴射小説大賞が「読んで楽しい、書いて楽しい、選んでさらに楽しい」3倍お得な小説大賞はすでに皆様御存知かと思います。1年目の「4百字1日1発銃撃可能」ルールと比べて現行規定はピックアップがやりやすい!というかよくやってたな3年前……ダイハードテイルズの皆様もパルプスリンガーの皆様もお疲れ様です。
前置きはこのくらいにして、それではやっていきましょう2年振りのゼンリョクゼンカイPPU!沸いてきたぜ!

1発目:できれば知りたくなかった

できれば知りたくなかった。いや本当に知らずに済むならそれがよかった。それでも人生は一瞬で変わってしまうから末恐ろしい。剥き出しで転がっている中年男性だけが、人生のターニングポイントの中立的証言者である。バールでしかないものが今日も無慈悲に上下に動く。悪い方にドキドキの共同作業、絶対やりたくない。


2発目:生の定義・正気の定義

体は少しずつ機械に置き換わり、オリジナルの部品がどれほどあるかも怪しい。『本当にわたしはまだ「人間」なのだろうか。』相対するAIは自分のことを正気だと信じている。多分。正気を揺さぶられる一つの問をトリガーに、生から遠ざかりつつある人間と正気から遠ざかって久しいAIが対話する……。きれいに境界線が引けない、というかボーダーラインの上に立っているかもしれない2人の噛み合わないダイアログ。


3発目:一瞬のマクロ解像度

「どうでもいいことはいーんだよ。」この冒頭一文、本コンテストにおける絶対不滅の原則である。飯や服は一瞬で流されるけれど、サイバネ改造の部分「だけ」解像度が急速に上がる。場面の解像度が急に上がる。突然マクロレンズで撮影し、また普通のレンズ(かそれ以下)に戻す。とんでもない緩急の付け方。その間も無論場面は動く。


4発目:頼む、行かせてやってくれ

なにも物語が戦闘前から始まる必要はない。敗北後からでも一向に構わないのだ。しかしここに別の戦闘が始まる。おそらく片方しか開戦も、予想される結末も知らない死闘だ。ちょっと間抜けな気もするスパイvs規律に忠実な拷問官。無様にして最悪の結末まで、残された時間は少ない。お願いだからトイレに行かせてあげてください。


5発目:ざらつく生々しい判断

この作品の話をしない、というのはちょっと難しかった。1度読んで頭から読み返すと冒頭の一文が違う重みを発揮してくる。利三の判断の過程は概ねおかしくないけれど、やはり最初の一手が妙な引っ掛かりを見せる。ムース食のはずなのに喉に小骨が引っかかる。独特のフィルターが掛かった映像が脳裏をよぎる。単発の骨太ミステリ映画が見えた。


6発目:金だ!命だ!拳銃だ!

金・命・拳銃。物語が(血なまぐさい方に)よく進む三種の神器である。それをこんなゾクゾクする方に結びつけてくるとなるともう堪らない。食指が動く枠の一本。借りた金で3大欲求の2つを速やかにクリアする判断の卑近さが好き。傍から見てて「リボ払い」にこんな盛り上がることきっと一生ない。やりたくないけど見てる分には興奮する類のリボ払い、発明だと思う。


7発目:最高に(声と腕が)良くて(所業が)悪い男

文章を読んでいるとセリフが自動的に声がついて聞こえてくるタイプの人間だが今作の「死刑囚52号」からは最高に渋い男の声がした。ただ老いたのではなく、塀の外でも中でも少しずつ削れて傷と箔が付いて渋みが出てきた男の声だ。小林清志さんとか國村隼さんあたりの声がしてくる。そういう人間の過去の傷が刺激され、そして条件付きで塀の外に出る。芳しい死の香りしかしない。

(おまけ)拙作紹介

負けずに銃弾の代わりのパルプ鈍器を構えていきます。1発目はこちらから。

2発目はこちらから。今朝方ぶっ放しました。


期間中にもう一回くらいPPUしたいですね。それでは今回はこの辺で。アディオス!

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