第1話
「はぁ~~~進路が決まらないよぉ~~」
「部屋入って一言目がそれかよ・・・・」
セミの鳴き声と共に蒸し暑い夏の真っただ中、鳴沢の家に遊びに来た白銀は鳴沢の部屋に入った瞬間にそう言いながら鳴沢が寝ているベッドにつっ伏せる
見慣れているとは言えそんな白銀に苦笑する鳴沢である
最後の夏が終わった白銀達・・・だが下を向いている暇はない
次のステージに向けて一歩歩き出すしかない・・・そのために白銀は今後について話し合うために鳴沢の家を訪ねたのだった・・・とは言え鳴沢の家は白銀の家から徒歩5分圏内にある近所なので勝手気ままによく遊びに来ているが・・・
「そんな事するために俺のうち訪ねたわけじゃないんだろカズ~~?」
「あっ、そうだった~~~( ´∀` )」
目的も忘れてだらける白銀に青筋を立てた鳴沢を見て白銀は笑いながら胡坐をかき態勢を整えたのであった
「・・・で?どうするんだこの後」
白銀が態勢を整えたのを見て鳴沢はベッドの横に置いてある勉強机の椅子に座り、白銀に話を切り出した
「いや~どこからも声が掛からないからね~どうしよ?」
「それは期待しちゃいかんだろ・・・」
「まぁ~それなんだけどね~~はははは」
「楽観的過ぎる・・・」
何処からも声が掛からないと言いながら笑う白銀に、頭に手を当てる鳴沢であった
『・・・とは言え終盤に打ってほしい時には人が変わったように集中するからなぁカズは・・・昨日もそうだったし』
しかし何だかんだ言って内心は白銀を褒めているあたり流石幼馴染と言うべきか・・・
鳴沢は昨日の集中していた白銀を見たのは実は初めてでは無いのだ
小学校・中学校でもこのような現象が起きており、特に終盤に打ってほしい時に限って集中モードに入るという......
おそらく無意識に「ゾーン」に入っているのだろうと鳴沢は考察した
以前鳴沢は、白銀にその時のことを覚えているのか聞いてみたことがあるのだが「やろうとは思っているけどフルスイング欲が勝っちゃって出来ない」と意味不明な回答が返ってきたため、それ以降は敢えて今は聞いていない
「・・・カズはどこ行きたいと思っているの?」
「ん~・・・俺的には大学はNGかな・・・推薦なら余裕で入れるとは思うけど勉学に励むのがなぁ・・・」
「まともな返答が返ってきた・・・」
「何よ!オイラだってちゃんと自分のことは分かるよ!!」
「ふふっ・・・だって配球考えずにフルスイングする奴だから・・・」
「ムキィ――――フルスイングなめるなぁ!!!」
ディスる鳴沢に怒る白銀・・・幼馴染らしいアホなやり取りを行う2人である
「ははは・・・ならば独立リーグか社会人・・・プロ野球しかないぞ?」
ひとしきり笑った後、鳴沢はまじめな顔になる
給料面は厳しいがプロ野球選手として野球でお金を稼ぐことが出来る独立リーグ
仕事行きながら野球をするので、将来的にも安定感はある社会人野球
そして説明不要の全球児が目指している高き門、プロ野球
日本で大学以外で硬式野球をプレーするには3つの選択肢がある
非常にどれも魅力的ではあるため迷いどころではある
「プロは今の俺の実力じゃ無理でしょ~てか翔ちゃんプロ注目じゃなかった???日本代表候補にも選ばれてるって聞いたけど・・・」
「プロ野球」と言うワードに白銀は「無理無理」とジェスチャーしながら今度は逆に鳴沢に質問を返す
鳴沢と言う男は打率4割越え、通算30盗塁の俊足と通算40発のパンチ力に加えて通算失策数はわずか3の堅い守備を持つ走攻守に高いレベルのプレーヤーである
去年のU-18日本代表にも選ばれている鳴沢だが「安心しろ、プロに行く気は無い」とはっきり答えた
「えぇ~~~勿体無い翔ちゃんならいけるって!!!」
「アホ!!誰がお前のお守りやるんじゃ!!!それにお前が何かしでかさないか心配で心配でしょうがないわ!!!」
「翔ちゃん・・・そんな事を思ってくれてたなんてっ・・・」
「嬉しいと思ってくれてるのは嬉しいけど、今までの行いを思い出してくれよ・・・」
鳴沢がプロに行かない理由に涙ぐむ白銀だが、鳴沢は今までの事を思い出しげんなりする
遠征の時もフラっと何処か行こうとする白銀を引っ張って目的地に連れて行った事もあったし
そもそも注目の選手になったのも、扇風機状態である4番(白銀)に代わって3番である鳴沢がランナーを返す役割をしないといけなかった為必死になってランナーを返すことを心掛けていた結果でもあるし
また白銀を「ゾーン」に入ってもらう為(この時はチャンス時に出るものだと思っていた)に序盤から盗塁を仕掛けたりした結果である(結果的に終盤に良くゾーンが発動すると分かった為鳴沢の努力が水の泡となった)
そう言う意味では白銀には感謝しているが、早く考えてスイングすることをやってほしいと願う鳴沢であった
「・・・・・・まぁ、明日なんか社会人連盟の方から話があるみたいだし、それを聞いた後でも良いんじゃない?」
「あぁ、何か言ってたね・・・連盟の方が来るのって珍しくない???」
まだ期間はある・・・そう判断した鳴沢は軽くため息を吐いた後に、一昨日グループチャットで監督から言われたことを話題に出す
実は社会人連盟が何やら重要な話があるらしく、進路関連で今考え中である3年生を召集してほしいという話があったそうだ
しかし社会人の人事部の人ではなく、役員が来るのは滅多に無いので白銀も珍しがる
「なーんか.......起こりそうな予感がするなぁ.......まぁ考えても埒が明かんし、ゲームでもするか!」
「おーーー良いねやろうやろう!!」
成沢もそう呟いた後はクーラーが効いた部屋の中で二人仲良くゲームに勤しみ、一日を過ごしたのであった
~翌日~
「よしクーラーを着けてと.......よーし、みんな集まったか?」
「はい、集まりました!」
「ありがとう!座ってくれ!」
蒸し暑い学校の視聴覚室の中、監督はクーラーを着けた後に前主将であった鳴沢に部員がいるか確認を取った後に、全員を席に座らせた。
「暑い中集まってくれてありがとう3年生たち。3年生を集めたのには社会人連盟の方から大事な話があるみたいでな!それで急遽3年生を呼んだってことなんだ!」
全員が座ったのを確認してから監督は今回呼んだ理由について話し始めた。
「監督、連盟から来るとか珍しくないっすか?」
当然、今回呼んだ理由について白銀達と同じ考えの人がいたようで、監督に話しかけた部員がいた。
「まぁまぁ一原(いちはら)、恐らく皆が聞きたいことだと思うが、まずはその連盟の方からの話を聞こうではないか!」
「分かりました~!!!」
「一原」と呼ばれた部員はそれを聞いてまずは話を聞こうと耳を傾き始めた。
「それでは秦野さん、よろしくお願いします!」
そう監督が言うと監督の横で座っていたスーツ姿の男性が立ち上がり、監督と入れ替わる形で三年生の前に立った
「どうも初めまして、私愛知県社会人連盟に勤めております、秦野と申します。どうぞよろしくお願いします」
『よろしくお願いします!!!!』
スーツ姿の男性、秦野が挨拶をすると三年生も挨拶を返した
「さて、まず始めに私は怪しいものではございませんので安心してくださいね~!」
挨拶が終わると秦野はかしこまった口調を崩し、フランクな口調で話し始めたので部員の中で緊張がほぐれたのか、表情が緩んだものがいた
「まず早速.......なぜ私がこの学校に来たのかと言うと、実は数年前から社会人連盟の方で計画していた事があって色々と話し合いを重ねた結果、ある程度間では来たので来年から実施をしていこうと思いまして、その説明に来たんですよね!」
「来年から.......何をするんですか?」
後ろに置いてあったホワイトボードに下記ながらの秦野の説明に部を代表して鳴沢が問いを返す
「ズバリッ!社会人リーグというのを来年度から行おうと思っているわけなんですよ!!!!」
返ってきた答えは白銀達の今後を大きく左右する、そんな大きな計画だったのだ.......
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