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Photo by
konohanoko
日和山公園で
いつ以来だろう?
この小さな船に乗るのは
対岸に渡る時は
この小さな船によく乗った
夏は水飛沫が爽やかで
冬は風が頬に刺さる
渦潮巻く激流に
切り込んでいくように
小さいけれど頼もしい
そんな船だった
降りた先の町を行く宛てもなく
ふらふら歩き回る
寂れた風情ある街並み
幕末からの歴史ある旅館
ペンギンたちが愛らしい水族館
夕陽の美しいタワー
そして、日和山公園
長い長い階段をのぼりきって
振り返ると
青い激流と大好きな街が見渡せる
春には、
桜が青空に舞い上げられながら
この丘の下へヒラヒラと落ちていく
ここから見る景色を
見せたかった人がいた
いつの間にか遠い
過去になってしまったけれど
ここに来ると
あの日の影がまだちらついて
いるようだった
そう、確かにあの日
わたしは彼に恋をしていた
そんな季節があった
遠い昔の物語のページは
強い風にめくられ
"今"へと戻っていく
この景色を今
一緒にみたいのは、
誰だろう?