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こわいはなし
ある親戚の集まりの時に、親戚のおじさんに
「小説書いてるの?」
と聞かれて
「書いてるよ」
と答えたのだけれど、私は小説を書いていることを親戚の人に言ったことがなかったので、不思議だなぁとおもいました。
けれども、家のお母さんもそれなりにおしゃべりなのでそんなことを言ってしまってのかもしれません。めんどうだなとはおもいましたが、その場しのぎではなしを合わせることにしました。
「どんなはなしを書くの?」
「怖いはなしを書いてますよ」
「こわいはなしかぁ」
「最近はあまり書けなくて」
「それなら、ChatGPTで書いたらいいじゃないか」
「おもしろいですよね~」
お決まりのパターンというかなんというか、けれども親戚の集まりのはなしなんていうものはそうたいしたことは話しませんから、ここだけのはなしで、とこのはなしを納めることにしました。
さて、実を言うと私は殺人事件やこわいはなしをほとんど書くことができないのです。
だからこそ、おじさんにそんな風に言ったのですけれど、なんとなくやはり頭の片隅に残ってしまいまして、家に帰ってからこわいはなしを書くことにしました。
一応こわいはなしを書くというのは嘘ではないんですよ、という私なりのけじめのようなものでした。
けれど、パソコンがなかなかつきません。
そんなに使った覚えはなかったし、きちんと充電もしたと思っていたのにな、とおもいながら、充電をするとなんとかつきました。
やっと書こうかとワードを開きます。何を書こうかなと考えていると、
「ごはんよ~」
と母さんに呼ばれます。
「ごはんよ~ごはんよ~」
襖が勢いよく開いて、
「今すぐ来なさい」
といつになく怖い顔で母さんがごはんが冷めるでしょと怒ります。
「わかった~」
なんとも、タイミングが悪いなとごはんを食べていると、急に妹が帰ってきて、話が終わりません。いつもそんなにしゃべるっけ?と思いつつも付き合って、やっと部屋に戻れました。
パソコンの前に座って、書き出しをどうしようかなと考えます。そんなに大したことを書きたいわけでもなければ、誰かにみせるわけでもありません。当たり障りのないはなしにしようとおもいました。
はじめに、「あ」と表示されます。
私はまだキーボードをさわっていません。
ああああああああああああああああああばばばばばばばばばばばばばばだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだがががががががががががががががががががああああああああああばばだだだだだだだだだだだだだだだだだだがあああああああああばばだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだががが
私はキーボードを触っていませんし、キーボードに何かがのっかっているわけでもありません。
ひたすら、ワードは意味のわからない文字が羅列していって、私はほとほと困ってしまいました。
「もういいよ、書かないよ」
小さくため息混じりに言うと、文字は止まりました。
そんなに書いてほしくないんだなと、なんとなく納得はしたのですが、やっばりため息をついて、保存しないを選択しました。
別の日に再チャレンジしようとするとパソコンが壊れて動かなくなりました。
おじさんに言ったことはそのまま宙ぶらりんのままになりそうです。今度また言ってくることがむしろできるのでしょうか。
おじさんは、私にそのことを言えるのでしょうか。
実は言えなくなるのです。
このはなしは、またの機会に。