なぜこうなったのか──すべては2021年から始まった
酪農経営が厳しくなったのには、はっきりとした理由がある。
予想外の出来事が次々と
2021年、コロナ禍による経済の混乱が続く中で、輸入飼料の価格がじわじわと上昇し始めた。酪農は飼料コストが大きな割合を占める産業だ。価格高騰はそのまま経営に直撃した。
2022年の夏は記録的な猛暑だった。牛にとって高温多湿は大敵で、食欲が落ち、乳量も減る。収益が減る一方で、暑さ対策のためのコストは増えた。
2023年も続けて猛暑。もう「異常気象」ではなく、「これが当たり前」なのだと実感させられる年だった。高温が続けば、草地の生育も悪くなり、結果的に飼料価格のさらなる上昇を招く。
2024年には、預託していた牛の管理ミスが発覚。計画通りに育成が進まず、思い描いていた経営戦略が崩れた。
資金繰りの崩壊
こうした問題が重なり、資金繰りはどんどん苦しくなっていった。
輸入飼料の高騰で、毎月の餌代は跳ね上がる。一方で、乳価は思うように上がらず、収入と支出のバランスが崩れた。
それでも何とか回そうとしたが、累積赤字は膨らむばかり。協同組合が立て替えてくれた資金に頼らざるを得ない状況になり、経営の自由度はますます失われた。
立て直すために削れるコストは徹底的に削った。エサの工夫、経費の見直し、新しい販売方法の模索。少しずつ改善の兆しは見えてきたものの、まだトンネルの出口は遠い。
それでも続ける理由
こうして、事業の立て直しを図るたびに予想外の出来事に足をすくわれる。それでも、まだ終わったわけではない。続けるために、できることを考え続けるしかない。
負債を抱えながら、それでも前に進む。理由はただひとつ、ここで終わりにしたくないからだ。
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