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7_例)物質分析におけるニーズと技術間のギャップ

ニーズ側、技術側ともに、
物質分析を実施する過程やその結果にギャップを感じていない
(=話がよく噛み合っている)ならば、
その外側から客観的にどう見えようとも、問題ない。

なぜなら、前述の「原理的」「技術的」「現実的」のうち、
https://note.com/hearty_cosmos702/n/nad9a8a87dd03
客観評価できるのは「原理的」「技術的」な面のみで、
技術側がプロである限りは、「原理的」「技術的」は解決済みのはずである。

「技術的」最適解でなかったとしても、物質分析の各現場にしかわからない
目的に即した「現実的」な判断が存在するだろう。

ただ、経験上、

物質分析を実施する過程やその結果にニーズ側と技術側の間に
ギャップが存在し、双方に不満が渦巻いている、と感じる事案が少なくない。
(ゆえに、不満を解決する上で、サイテックハブが必要と考えた)

具体的に、
だが実例そのもの、は出せないので話を少々フィクションにして、
例を挙げる:
表題図に挙げた例;

まず、

ニーズと技術が近接して、ギャップがない場合


都道府県特産の農産物に、
なんらか、プラスアルファで販売プロモーションに資する、
「健康に良い成分を多く含みます」と謳える成分があればいいな、
という期待から、
農産物が成分分析にかけられる際には、
このようなニーズは一般的なものであり、分析技術やリソースは農業試験場・研究所などに集約されているものを利用するとする。
そこには(熟練)技術者がおり、分析ニーズもよく理解しているので、
なんらか「健康に良い成分を多く含みます」といえる成分の検出を試みる。
その結果として、「健康に良い成分」が検出されようとされまいと、
ニーズ側、技術側にギャップはない。

また、有機分子合成を試み、期待物質がきちんと合成されたのか、
確認したい場合、
概ね合成化学には付随して設置される物質分析プラットフォームを利用して、
自分で分析、または技術者に依頼ができる。
その結果、期待した合成生成物が検出されようとされまいと、
やはり、ニーズ側、技術側にギャップは、ない。

以上の例には、ニーズ側、技術側にあらかじめパイプラインが存在しているため、
ギャップなく物質分析が実施されている。

期待を持って物質分析を行なったニーズ側、技術側が
期待に反した分析結果自体に、落胆することはあってもよい。

ニーズと技術にギャップが存在する場合


ある家庭なり事業所なりで、井戸が掘られた。
水道局において衛生面法律面で飲用可能とされた。
井戸水の有用性に期待した、所有者は、
「体に良い美味しい水」を期待し、その科学的根拠を示したかった。

ここには物質分析につながる技術パイプラインはない。

しかし、web検索をすれば、いくらでも、飲水の成分分析を受託している会社がある。分析実績を報告している大学もある。

ある会社が、同様のニーズに対して、受託分析を受け付けているようだ、
と知った井戸の所有者は、
任意の受託分析会社にアクセスし、井戸水試料を送り、結果が郵送で戻された。

(単位mg/L) このような井戸水の分析結果が郵送で戻されたとします。

後日、この井戸の所有者から嬉々と、
「ちゃんと分析会社で測ってもらったら、うちの井戸水には1)~30)もの成分が含まれていたんだよ。すごいよね。」

と聞き、上表(のようなもの)を見せられた。

どうだろうか。
わかる人は、わかる、いや、わからなくなる、のではないだろうか。
どれくらいの人が、わかるのだろうか?

技術側に相当する分析受託会社は、郵送された井戸水試料を分析し、
分析結果を紙出力でニーズ側である依頼者に納品した。

分析会社は、依頼者の分析結果の解釈には関与していない(であろう)。
また、依頼者が物質に関して知識を有するのか否かも、問わない。
技術側に責任はない。

では、依頼者が「重大な過誤」による、深刻な事態に陥らないためには、
どうしたらよいのか。

これは、物質分析そのものからも、
かなり距離のあるニーズが存在し、現在の溢れる情報や企業PRの検索をもとに、
物質分析の技術にアクセスし、その結果、起きたことである。

井戸所有者本人が、
< 検出限界値を下回る =検出されなかった
を理解していない。
また、、26)Cdカドミウム、30)Pb鉛他いくつかの元素成分は、
仮に検出されたとしても、水質として誇れる成分ではない

技術側は、往々にして、
ニーズ側が、
物質および、物質分析、に明るいことを前提にしている。

実際には、物質分析に全く知識も経験もないニーズであっても、
物質分析の技術には容易にアクセスすることが、
情報社会においては可能なのだ。
(近い例は、3.11直後の放射線関連分析でも多発した)

すごく似た話が、
ワンルームマンション投資詐欺で、購入者(損失側)が
往々にして法律によっては救われないのは、
投資物件の不動産を買う人は、少なくとも、不動産取引や投資には明るいだろう
と、社会通念上はみなされているからだ。

物質分析を依頼するのだから、物質にも、分析にも、最低限は知っているだろう、
というのが、受託分析会社側の建て付けである。

本例は極端で、脚色しているし、
どこかで、たんなる話題のネタ、になっていても構わない。

しかし、同様の例を挙げていく中で、どこからか、楽しめるネタから、
笑えないネタ、
事態の深刻さを味わう話、になっていく。

表題図を再度、見直してほしい。
左下
物質科学ではない産業・研究
にも同様の技術とのギャップがある。

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