#003 『HeART』はどのような本なのか前編
John Fruscianteの『1999-2007年までのギターサウンド』に主な焦点を当てた『HeART』 前編
誤解があるといけないので補足いたします。
内容としてはCALIFORNICATION期からSTADIUM ARCADIUM期が全体の80%を占めておりますが、MOTHERS MILK期は5%、BLOOD SUGER SEX MAGIK期は15%程度の焦点を当てた内容となっております。
1. 本のコンセプトと3つの軸
CONCEPT
本のコンセプトは『機能する』です。
どんな考えかと言いますと、HeARTが読者の「心を後押しするブースター」となって「次のアクションの手助け」に繋がるような、そのような機能を持った本になれたらと思い、このコンセプトを発案しました。
DESIGN
読書のアクションに働きかける、機能するデザインとは「余計な装飾をせず、普遍的であること」という考えに至りました。その由来は、筆者なりに考察した、John の性格から来ています。彼はきっと「見栄や背伸びせず、自然体で等身大の自分であり続ける人」だと思うんです。見た目からも共感してくださる方がいらっしゃるかもしれませんが、それが「HeARTらしさ」であるべきという考えです。余計な装飾をせず、必要な情報を必要なサイズで写真を掲載することで、今まで知らなかったことに発見し、そして事実に基づいたエピソードと考察、筆者が体験した経験を本文を添える。時にはその楽器の音を聴いて、少しでも五感で体感•体験できるようにと、QRコードでYouTubeの限定公開動画のリンクを記載することで、三次元で本を捉えていただけるようなデザインを心掛けました。
THREE AXIS = PHILOSOPHY
『機能する』というコンセプトに沿って、着地するため3つの軸を設定しました。
1. EVIDENCE エビデンス:Johnが使用してきた楽器・機材を明らかにすること。
2. ENDEAVOURS エンデバーズ:自ら努力を重ね挑戦すること。
3. EXPERIENCE エクスペリエンス:自身が体験したことを記録に残すこと。
これら3軸をもとに、
2018年より原稿の制作と音の分析を同時並行して行ってきました。
2. ジョン・フルシアンテさんのインタビュー
東京からLAへ
John Fruscianteの誕生日は3月5日です。
その誕生日に本人に届くために私が持つ『灰色のIbanezのWH10 V1』と『2019年12月16日にRED HOT CHILI PEPPERSへ帰還してくれた喜びと感謝の気持ちを書いた手紙』とHeARTの構想を書いた手紙と小さなノートなどのプレゼントを2020年2月、東京からLAのジョンの自宅へ送りました。
もちろん届くかもわからないし、受け取ってくれるかもわからない。さらに喜んでくれるかもわからない中、、「今のこの気持ちを伝えなきゃ」という気持ちで必死だったので思いの丈を綴りました。
3ヶ月後の2020年7月1日、朝起きメールをチェックすると日本時間6:35に一通のE-Mailが届いていました。
原文:
Thank you so much for the birthday presents!
Very happy with them, especially the wa-wa pedal!
If you would like to send me questions for your interview to
this email address,
I will answer them sometime when I can.
I sent you a postcard.
Best regards to you.
From JF
翻訳:
誕生日プレゼント、本当にありがとう!
とても満足しています、特にワワペダル!
インタビューの質問をこのメールアドレスに送っていただければ、
できるときにお答えします。
ポストカードを送りました。
よろしくお願いします。
ジョン・フルシアンテより
あまりにも嬉しさに、私はシャワーを浴びながら嗚咽を漏らしながら一日中泣き、そこから必死でいくつも質問を考えてから数日間インタビューの質問を送りました。
John Fruscianteは、2つの質問にE-MAilで応じてくれました。
内容については『ギターの弦に対する質問』と『作曲に関する質問』でした。
このインタビューは私にとって大きな希望と同時に、ジョン・フルシアンテさんの優しさに触れた瞬間でもありました。
この事から世界の写真家とも繋がるきっかけとなりました。
3. John Fruscianteを撮影した写真家の作品
『HeART』ではRED HOT CHILI PEPPERSライブ写真やオフショット、本人の自宅で撮影された写真を中心に高解像度写真を掲載しています。
世界で活躍する4人の写真家に直接コンタクトし、趣旨がわかるページサンプルを作成して意図を伝え、HeARTに作品を有料で掲載させていただけることになりました。以前より注目していた写真家だったので心から嬉しかったです。
※note版HeART(有料・無料記事問わず)では写真家が撮影した直接的な作品は権利上の都合により公開することができません。ご了承ください。
LAの写真家 Neil Zlozower ニール・ズロゾワー
ニールの作品については、HeARTでは最も多い137枚の写真を使用しています。2008年にJohn Fruscianteの自宅で撮影された、本人所有のヴィンテージギター(ベースを含む)30本に加え、自宅で撮影されたJohn Fruscianteのオフショットやライブショー、リハーサル風景の作品を使用させていただきました。
ギターばかりではなくもう少しお見せいたします。
UKの写真家 Scarlet Page スカーレット・ペイジ
ジミー・ペイジさんの娘としても知られている写真家のスカーレットさんは2013年頃のJohn Frusciante自宅コントロールルームでアナログシンセサイザーを背にYAHAMA SG 2000を持つポートレート写真からRED HOT CHILI PEPPERSのツアーバスでのオフショットやライブショー作品を使用させていただきました。
UKの写真家 Tony Woolliscroft トニー・ウーリスクロフト
トニーは長年、RED HOT CHILI PEPPERSのオフィシャルフォトグラファーとして一緒にワールドツアーを回り『Me and My Friends』という写真集を発表していることでも知られており、HeARTではRED HOT CHILI PEPPERS『LIVE AT SLANE CASTLE』や『LIVE IN HYDE PARK』の作品を中心使用させていただきました。
日本の写真家 yuki kuroyanagi 畔柳 ユキ
ユキさんはRAMONESのJohnny Ramoneより指令を受け1992年から『ラモーンズ・ファン・クラブ・ジャパン』を運営する会長でもあります。そしてユキさんは第一回目の『FUJI ROCK FESTIVAL '97』より現在まで、フジロックのオフィシャルフォトグラファーとして数々のアーティストの活躍を写真に収めてきました。HeARTでは『FUJI ROCK '06』や『THE ROCK ODYSSEY 2004』『COACHELLA 2007』『TOKYODOME '07』作品を使用させていただきました。
レジェンダリーな写真家の写真を使用させていただいたことは、私の人生にとってとてもスペシャルなことです。写真が送られてきた時の感動は、今でも新鮮で色褪せることはありません。この場を借りて、あらためて感謝を申し上げます。
私が17年蒐集してきたアンプやエフェクターは自身で撮影
FUJIFILM X-T4、X-S10という2台のミラーレスカメラと単焦点レンズを使い、
1987年製『MARSHALL 2555 Silver Jubilee』を含む12台のアンプ、1966年製のゲルマニウムトランジスタを使用した『MOSRITE FUZZ rite』を含む68台のエフェクターに加え、『MOTHER'S MILK』『BLOOD SUGER SEX MAGIK』『CALIFORNICATION』 『BY THE WAY』『STADIUM ARCADIUM』時代にJohn Fruscianteがライブで使用した大小8種類のペダルボード再現を自ら行い、自然光で撮影するというテーマのもと、自宅で撮影を行いました。そして分析・解析のために使用した2006年製『FENDER CUSTOM SHOP Master Built Series Made by Yuriy Shishkov 1960 STRATOCASTER Handwound pickup by Abigail Ybarra』を含む自分所有の9本のギターも掲載しています。
今回は前編ということで『HeART』を制作する前に考えたコンセプトや目指すべき方向性。そしてジョン・フルシアンテさんの誕生日に送った手紙についてや、協力してくれた世界の写真家について書かせていただきました。制作課程の中でとても印象に残った出来事に振り返ることができ、あの時だからこそ実現できたんだろうなぁとしみじみ思いました。
次回は後編『HeART』の原稿作成や筆者の考察を記したBOOK2の内容について書いていきます。