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長瀞と緑と青とすこしのピンク
同じ関東といったって、神奈川から埼玉へ行くのは以外と時間がかかる。
横浜から電車に揺られて3時間やっとついた埼玉県の果て秩父・長瀞。
行ったことのないところに行きたい。
そう思って決めた旅先だったけど、秩父には数年前に来たことがあった。
あれは仕事で車にゆられ秩父の山の谷間を進んで客先へ行った。すごい山で熊も出るなんて言われたから恐いと思った記憶しかなかった。
それがいざ、旅をしようと調べてみると行きたい場所がわんさか見つかった。
今回の旅も急にきめたものだから、日帰りで行けるところで自然を感じられるところがよかった。3月の旅は余裕を持たせてくれない。
それでも滞在時間8時間の旅は、最高に満たされた。
朝は5時に起きて、6時には家を出た。そこから2回乗り換えて「長瀞駅」についた頃には9時を過ぎていた。
とても遠い。でもそんな長い旅路さえも旅であればちょっとした楽しみになる。
秩父鉄道ではICカードが使えなくて何年かぶりに久しぶりに切符を買って、それだけでもソワソワした。
長瀞の駅は、思っていた通り風情があってノスタルジックだった。駅の趣を調べていたわけではないけど、こういう果ての駅はだいたいレトロでかわいい。
スケジュールはばっちり組んでいる。
だから長瀞駅に着いたら迷わず背を向けて歩き出した。Googlemapにはいきたい場所がしっかりお気に入りに入っていて、星をたどればスケジュール通りに旅ができた。
とはいえ、私は破滅的に方向音痴だから目的地に着くまではやっぱりドキドキ不安になる。
観光客があふれている場所であれば、人が向かう方向にそれとなくついていけば目的地にたどり着けるが長瀞には人が少ない。
こういうときが一番危険だ。
イタリアのヴェネツィアに行ったときは、盛大に反対方向に歩いて地元のおじさんに駅まで付き添ってもらった。ヴェネツィアは道がすべて同じに見えるからもうおじさんも一人では無理だとおもったんだろう。
そんな事があるから私は自分の方向感覚を絶対的に疑っている。
でも、今回は長瀞駅を出てすぐ目の前に鳥居があったから進む方向はわかった。
私は破滅的な方向音痴だけど、感だけは人一倍良い。
一番最初の目的地寶登山神社へは無事にたどり着いた。
秩父三社の一社の1つに数えられる「寶登山神社」。火災盗難除け、商売繁盛、金運向上のご利益がある神社として知られている。
細部にまで施された華やかな装飾がとてもきれいな神社。
たくさんの緑に囲まれているところもとても気持ちがいい。
私は神社仏閣、教会やらモスクやら宗教建築が大好きで旅とはセットみたいなものだ。
もちろんお賽銭を入れて、お参りもする。
だけどこれといったお願いごとはしない。
するのは
無事にここまで旅をさせてくれてありがとうございます。今日も一日楽しく旅をさせてもらうのでよろしくお願いします。
という事。
神様を信じていないとかそういう事ではなく、自分の願い事を「神様」という他力に任せるのはどうしたって心もとない気がしてしまって、お願いではなくご挨拶をするようになった。
おかげで世界17か国、国内18都市を女性ひとりでめぐってきたけど今まで安全に旅が出いている。
これも、その土地の神様にちゃんとお行儀よくご挨拶している賜物だと勝手に思っている。
そうしてご挨拶を終えて、一通り回ったら宝登山ロープウェイに乗って山頂を目指した。
特に山頂に何があるというわけでもないが、ただただ私は眺めの良いところが好きで高いところがあれば登らずにはいられない性分らしい。
1時間歩けば山頂に行けるらしいが、忙しい旅で時間が惜しい。だから5分で山頂に行けるロープウェイを選んだ。
三月も半ばを過ぎたし、そろそろ桜でも咲いているのではないかと思っていたら桜は見当たらないものの梅の花が待っていてくれた。
それにしてもいい眺め。青の中にほんのり溶けていくピンクがアクセントのように世界を整えてる。
山頂を目指すと、先ほど言った寳登山神社の奥宮がある。
ここの狛犬は犬ではなく狼らしい。
昔々、日本武尊(やまとたけるのみこと)がこの山に入ったら山火事になって、山犬に助けてもらった事からここに神社を作ったらしい。
がっつり登山道ではないけど、ハイキングというには森の中。
だからみんな、運動靴に動きやすい登山っぽい恰好をしてきているのだろう。
私はいつも軽装だ。
ミニマリストといえば聞こえはいけど、ハイキング気分で割とガチめな山を登るからいつもギョッとされる。
ヒラヒラのワンピースと先のとがった靴を履いて、肩にカバンをかけながら歩いているのは私ぐらいなものだ。
私としてはワンピースととがった靴で山を上り下りしても特に問題はない。もしあえて問題を上げるとするなら先のとがった靴の先っぽが土まみれになる事だ。
だけどこの問題は、土色の靴を履いていることで大部分は解決される。
無意識にそれを思っているのか、私の靴は土色が多い。
さて、山の景色も存分に楽しんだことだし、次に向かおう。まだ少しのんびりしたい気持ちはあるが、なにせ大幅に予定が押している。
もと来た道をちょっと急ぎ足で戻り、長瀞駅を通り越して商店街を抜ける。
途中どうしてもお腹の虫がうるさいから、ガレットを買ってさらに急ぐ。
長瀞の岩畳。
長瀞にきて、ここに来ないわけにはいかない。
国の天然記念物に指定されているこの場所は、その名の通り岩が畳のように広がっている。ここはライン下りが有名だ。
誰かと一緒の旅行なら、きゃっきゃとライン下りをするのもいいけど一人であれば高みの見物をするほうが良い。
岩畳に腰かけて、先ほどのガレットを食べながら3月とは思えないほど元気いっぱいの太陽の下ぼんやりと過ごす。
特に何をするわけでもないけど、この景色を見ながら光合成をする時間がとてもいとおしくて、3時間も電車に揺られてきたかいがあったと思うわけだ。
長瀞はいっぱいの緑と青、それと今だけの少しのピンクが目にも心にも優しい場所だった。