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出雲大社と大雨と

私は6月生まれだけど、旅をするときはだいたい晴れ女だ。

雨が多いといわれるロンドンでも1回も傘を使わなかったし、東南アジアに行くときもスコールになる時間帯はだいたいバスに乗っていたりとか、部屋にいる時間で観光しているときは干からびるぐらいに晴れているときが90%ぐらいだ。

そんな旅晴れ女の私も、一度だけ土砂降りに見舞われた旅があった。

それが、日本最古の歴史書「古事記」にもその名が刻まれている島根県は出雲だ。

前日には松江に行って、松江城の周りを優雅にクルージングするこたつ船に乗ったり

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強風の宍道湖を眺めたり、

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八重樫神社の鏡の池で占いをしたりと女子旅をひとり楽しんだ。

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空は少しご機嫌斜めだったけど、雨には降られる事なく無事松江の旅を終え、その日の夜には出雲に入っていた。

松江から出雲へは一畑電車へ乗っていった。とてもレトロな列車で、夜のとばりが降りゆく世界にゆっくりと入っていくように走る列車はとても幻想的だった。

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そんな夢みたいな列車の旅で、私の終着駅となったのが「出雲大社前駅」だ。

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まるで絵本の中の世界に迷い込んだのかと思うようなかわいらしい駅。レトロな列車にのって、どこかの物語に迷い込んでしまったのかと思うぐらいだ。

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そんな夢気分も冷めやらぬ中。本日の宿にGooglemapさんに案内していただいたガチローカルな真っ暗な道を歩き無事到着した。

次の日は朝6時に起きてずーっと楽しみにしていた出雲大社に向かった。昨日と同様、いやそれ以上に空の機嫌は悪かったがまだどうにか蛇口は閉まっていた。

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朝もやの出雲大社は本当に美しかった。

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山から霧が立ち、白いヴェールで世界を包んでいるようだった。

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そのヴェールの中にこっそり入っていくようで、なんだかちょっと秘密を覗き見るようなドキドキわくわくした気分になった。

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水を思いっきり吸い込んだ緑も、心なしか深く色づいているように見えた。

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秘密に忍び込んでしまったせいなのか、冒険をしているうちにとうとう空の蛇口から水がしとしととこぼれてきた。

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日本の厳かな景色に、しっとりとした雨はよく似合う。6月生まれの私が言うのだから間違いはない。

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しっとりと艶やかに潤う旅もまた美しい。

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ただし、旅晴れ女の私からすると神社にきて雨というのはなかなか不安を感じてしまう。

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しとしとと降りだした空のした、傘を開いたり閉じたりしながらたまにごおっと唸る山の声を聞きお参りをした。

出雲大社を出て、朝食を済ませて、ホテルをチェックアウトしたとき完全に蛇口はひねられていた。

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バケツをひっくり返したような雨とはまさにこのことだ。

古代出雲歴史博物館から見た波紋は、まるで作られた景色のように美しかったけど雨を楽しんでいられたのはここまでだった。

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何せ私は旅晴れ女。

旅で雨に降られる経験なんてしてこなかったものだから、雨への備えが乏しいのだ。

折り畳みの雨傘は風に吹かれると今にも飛んでいきそうに心もとなかったし、ムートンブーツは雨を吸い尽くそうとうずうずしていた。

それでも旅を止められなくてバスに乗り込んだ。

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日本の夜の守り神といわれる日御碕神社についた時には風も声を出して吹き荒れていた。まるで竜宮城のような景色に目をくらますような雨。

本当にどこか別の世界に迷い込んでしまったのかと思うぐらい。

だからこそ帰りのバスで調べてしまった

神社 雨

そして、バスを降りる頃にはほっと胸をなでおろした

雨が降ったからといって縁起が悪いというわけではなく
浄化の意味や、恵みの意味もある

特に龍神様が喜んでいる場合、参拝時に雨に見舞われることが多い

どうやら空には嫌われても、神様には嫌われていなかったようだ

私の大雨に降られた旅は、ここから2年の間1度もない。

あの時は雨で手はかじかむし、ムートンブーツからは雨がじわっと靴下を伝ってきたけどやっぱりまた行きたいと思ってしまう。

雨が滴る美しい出雲を、今日の雨でふと思い出した私は6月生まれの旅晴れ女だ。

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