子どもが育つ土壌 "soil"
5月5日の子どもの日を前に総務省が発表した子どもの数は42年連続で減少し、15歳未満の子どもの割合は11.5%で、世界で日本は最下位だという。2055年には、日本の人口が1億人を切るといわれ、高齢者がどんどん増える一方。その時にその日本を支えるのは今の子どもたちなのである。
子どもたちの異変
今、その子どもたちの様子が変だ。不登校の子の数が増え、人とのかかわりがうまくできない子が増えている。時代とともに子どもたちを取り巻く環境が大きく変わってきてきた中でのコロナパンデミック。この3年間学校生活が大きく変わったことで、子どもたちの心に大きな変化をもたらしていることは事実で、それは決して無視できないことだ。
いろんな規制を受け、自由を奪われた子どもたちにとって、今の社会は理由もなく生きづらさを感じる場になっているのかもしれない。本来子どもは自由であるはずなのに、自分で決めることができず、与えられた環境で過ごさないといけないもどかしさ、自分でもよくわからない違和感をどこにどうぶつけたらいいのかわからないといった不安や孤独感を自分自身の中に押し殺してしまっているようにみえる。そういった子たちが生きづらさを感じ、学校に行けない・行かない選択をし、その結果行き場を失い、家に閉じこもってしまうのだろう。
最近そんな親子さんたちと接する機会が増えてきている中で感じることは、彼らが学校に行かない選択をしているのはいろんな理由があるが、実はこの子たちこそ他の子たちにはない感性や才能を持っていて、それが今の学校教育制度にマッチしていないのではないかということ。
学校と家しか居場所のない彼ら・彼女たちにとって、学校に居場所がなくなると、家にいるしかない。誰とも接することなく、家族とだけの生活になり、閉塞感の中で生きていくことになってしまう。
子どもたちの多様性
しかし、そもそもその子どもたちの感性や才能が誰にも評価されない今の社会こそおかしいのではいだろうか。彼らが感じる社会に対する違和感——実は、これこそがこれからの日本社会においてとても大事な視点で、今の教育に欠けている部分であるように思う。
ダイバーシティ・多様性を大事に…と謳っているにもかかわらず、子どもたちの多様性が認められていない今の社会。彼らの才能が埋もれてしまっている今の社会。
しかし、それを学校現場だけに任せるのは本当に無理な話なのだ。
私たちにできることは?
だからこそ、今、私たちにできることは、そんな子どもたちを社会で育てていくことだと思う。
私たち大人が作り出してしまった社会のひずみのしわ寄せが子どもたちにいっているとしたら、そのしわを伸ばしていかなくてはならない。
先月、約1か月間、不登校の子たちが描いた絵や小説を預かってカフェのお客さまに見てもらい、作品一つ一つにコメントをノートに書いてもらうという企画をやった。その作品はどれも本当に素晴らしいものばかりで、お客さまたちは皆、お世辞抜きに称賛していた。コメントのノートは子どもたちに返され、自信につながった子どもたちは次の作品作りに着手していると聞いている。
彼らの才能は彼らの限られた世界の中だけで生まれたものだが、その世界を広げることでもっともっと才能は開花していくことは間違いない。
かつては、多世代で同居し、地域の人同士のつながりも深く、いろんな人たちにもまれながら子どもは育った。子ども同士ももっといろんな絡み合いの中で年齢に関係なく遊びを通して育った。その中には、強い者もいれば弱い者もいて、でもその上下関係の中でお互いを労りあう関係性があり、いろんな経験をすることができた。今の子どもたちに圧倒的に足りていないのは、この多様な経験なのである。
先日実家のある熊本で、文字通り「寺子屋」としてお寺を開放し、子どもたちの居場所を作っている方のお話をお聞きした。まさにかつての寺子屋の雰囲気がそこにはあり、理想の場であると感じ、とても感動した。しかし、今はそういった場はほとんどみられない。
まち全体を子どもの居場所に
私たちがNPOとしてまず進めたいことは、地域に子どもたちが立ち寄れる居場所を点在させ、いろんなところでいろんな経験をできる場をつなぎ、ネットワークを作ること。
この地域には、すでにいろんな場があり、それぞれが個別に活動をしているが、そのつながりがなかった。しかし、それぞれの持つ場の強みを生かし、子どもたちが自由にいろんなところに行って、いろんな経験をできるようにできたら、まち全体が子どもたちの居場所となると考えた。
その居場所にかかわる大人も子どももそのまちの住人として、安心して居られる居場所をまち中に増やしていく。
やりたいことや、チャレンジしてみたいことができる場がまちのあちこちにある。
一か所でできることは限られているが、まち全体が居場所となることで、子どもの可能性も広がる。
そして、子どもたちが自ら考え、行動し、協力し、誰かの役に立つ経験値を上げていくことこそ、子どもたち自身が未来の社会を作っていく原動力になるのではないか。
soil~子どもの居場所ネットワーク事業~
子どもたちの可能性を伸ばし、その固く閉ざされた小さな種から小さな芽が出るよう、私たちは「soil~子どもの居場所ネットワーク~」を進めることにしました。子どもたちが地域でいろんな経験ができ、成功体験を積み重ね、自己肯定感を上げていけるような豊かな土壌を作っていきます。
探求心を深め、自分で学べる体験ができたり、知らない世界に触れ新しいことにも挑戦したり、ICTの活用について学び実践したり――私たち大人もそれを楽しみ、いろんなことにチャレンジしていきます。土の中にはいろんな雑菌や虫、微生物などがいるように、地域にはいろんな人がいて、経験豊富な大人もたくさんいます。そういった方に先生になってもらったり、あるいは私たち大人も子どもたちからたくさんのことを学びあえるような、自由な土壌でありたいと思っています。
soil ~子どもの居場所ネットワーク事業~
4月は試行期間でしたが、5月から本格的に稼働していきたいと思います。
希望が丘エリアに子どもたちが安心して行ける場所を展開していきます。子どもも大人もともに育つまち――まち全体が元気になるまちを目指していきます。
■ネットワークの拠点は、現在5か所。その活動の詳細はこちら
仲間たち|Partners ~ NPO法人ハートフル・ポート (npo-hfport.blogspot.com)
■soil子どもの居場所ネットワークのスケジュールはこちら
soil 子どもの居場所 - TimeTree (timetreeapp.com)
■拠点としてのハートフル・ポートでは、独自の子ども事業も広げていきます。
詳しい内容は、こちら
子どもの居場所 ~ NPO法人ハートフル・ポート (npo-hfport.blogspot.com)
■ハートフル・ポートのスケジュールはこちら
NPO法人ハートフル・ポート - TimeTree (timetreeapp.com)
本事業は、上記の4パートナーの他、南希望が丘地域ケアプラザ、横浜市西部学校教育事務所エリア担当のSSWさんにもご協力いただき、日本財団からの助成を受けて進めています。今後はさらに学校や地域の皆様にもご協力いただきながら、子どもたち自身の意見も取り入れていきたいと思っています。
お問い合わせ、ご質問、ご意見等をどしどしお寄せください。
今後ともNPO法人ハートフル・ポートの活動にご理解と応援をどうぞよろしくお願いいたします。(代表・五味)
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