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僕と息子とガチャガチャの森

昨日の話。

仕事が休みだった僕は、息子(5歳) が幼稚園から帰ってきた後、ガチャガチャをやりに連れて行くという約束をしていたので、息子と二人でナゴヤドーム前のイオンへ繰り出しました。

なぜドーム前イオンを選んだかというと、専門店街の方にガチャガチャで埋め尽くされたゾーン、『ガチャガチャの森』があるから。

そこに行けばきっと、ややこだわりの強い息子でも満足のいくガチャガチャがあるだろうという算段です。我ながらクレバーと言う他ない。


そんなこんなでドーム前イオン、ガチャガチャの森へ到着。

ゆうに200台以上はあるであろうガチャガチャを順番に見ながら、中へ中へと進む僕と息子。

流行りの鬼滅の刃や仮面ライダーはもちろん、大好きな昆虫や恐竜系の玩具が入ったガチャガチャもあり、息子は目移りしまくっている。僕はそれを微笑ましく眺めます。


すると半分ほど進んだ辺りで、息子の足が止まりました。


息子「パパ!これが良い!」


どれどれと見てみると、そこには『巨大うんち』と書かれた文字と、便器から勢いよく飛び出すピンクの巻きグソのビジュアルが。


(えぇ……これで良いの……?)

僕は息子に問いました。


 僕「鬼滅とか仮面ライダーとか色々あるけど、これなの?」

息子「これが良い!これやろう!」

 僕「まだ見てないガチャガチャもあるから、
   全部見終わってから決めようよ」

息子「えー 何でー」

 僕「だって、もしコレやった後にもっと欲しいのが
   出てきたらどうするの?もうやれないよ?」

息子「分かったぁー」


そうして残りのガチャガチャを見て回る僕と息子。


 僕「どれにする?」

息子「巨大うんち!!」


まるで便秘時のウンコのように固い彼の意思。
そこまで言うなら止めはすまいて。

息子に僕の大切な300円を渡し、「何色のうんちが良いの?」「ピンクが良い!」などといったしょーもない会話をしながらハンドルをガチャガチャと回し、ゴロンと出てくるカプセル。

そのカプセルの透明部分から見えるは白い便器。
情報によると、この便器を開けると中から巨大うんちが飛び出すという仕組みだ。


ガチャガチャの本体を見ると、どうやら巨大うんちの色は4種類あり、それぞれ便器の色も異なっていました。

そして、どうやらお目当てのピンク巨大うんちは白い便器のようで、見事に引き当てた息子。やるやん。


ニコニコ顔でガチャガチャを握りしめる息子。

それを見て「こんなに喜んでるなら巨大うんちでも別に良いか」と僕は微笑ましい気持ちになりました。


当の息子は一刻も早くカプセルを開けたいといった様子でしたが、不特定多数の人が行き交う場所でうんちが飛び出したら嫌だなと思ったので伝えます。


 僕「便器は車の中で開けようね」

息子「どうして?うんち今見たい」

 僕「巨大なうんちが飛び出してくるからダメ」

息子「えー巨大うんち見たい!今見たい!」

 僕「車でなら巨大うんち飛び出させても良いから」

息子「やったぁ!」


今思ったけど、知らない人が聞いたら軽く常軌を逸した会話だな。
まぁ良いや。

車に到着。

カプセルに貼ってあるテープを取って早く開けろと急かしてくる息子。
そんなにエキサイトしても出てくるのはウンコやぞ。


テープを取り、カプセルを開け、いよいよ便器のフタをご開帳する時がやってきました。

パカッ!

シーン…。


これは一体どうした事だろう。
便器を開けても巨大うんちが出てこないではありませんか。

どうやら巨大うんちはスポンジ素材で折りたたまれており、便器に引っかかっているような状態でした。
なので、指で摘んで取り出してみます。


無事に取り出せたものの、それは僕らが想像していた立派な巻きグソではなく、なんか変なシワがついてて、もはやウンコかどうかもよく分からない状態だった。

かつては立派な巨大うんちだったであろうそれを見て、先ほどまでキラキラしていた息子の顔も、まるで解脱したかのように無となっていました。


なぜこのような事態になってしまったのか。

これは僕の推測ですが、おそらくアレだけのガチャガチャの中から巨大うんちをチョイスするツワモノが長期間現れず、かなりの月日が経ってしまったのだと思われます。
だからこそ、このように変なシワが付いて形状も歪んでしまったと。

これはもう、息子が『巨大うんち』を選んだ瞬間に決まっていた運命だったのかもしれません。


とはいえ、明らかにテンションが下がっている息子を見て、ただ諦めろと言う父親にはなりたくない。
それにそもそもコレは不良品だし、もしかしたらどうにかなるかもしれない。

そう思った僕は帰宅した後、カプセルの中にある説明書に書いてあるメーカー(エポック社)へ問い合わせてみる事にしました。


「お電話ありがとうございます。
 エポック社サポートセンターでございます」

丁寧そうな女性のオペレーターが電話に出ました。


「ガチャガチャをやったんですけど、中の商品が不良品のようなんですが」

「大変申し訳ございません。どのような状態かお聞かせいただけますでしょうか?」

「なんか、本当なら便器の中からうんちが飛び出してくるみたいなんですが、うんちにクセが付いてて出てきません」

「さようでございますか、大変申し訳ございません。すぐに交換の手配をさせていただきます」


状態を説明するのはいささか恥ずかしかったものの、やったぜ。
やはり読み通り、不良品だから交換してもらえるみたい。
そりゃそうだよなー、あぁ良かったー

と思っていると、サポセンの女性が続けます。


「在庫をお調べしますので、商品名を教えていただけますでしょうか?」


なんという事でしょう。
商品名はズバリ『巨大うんち』なわけですが、これを電話越しに伝えろと言うのです。

ここへ来て36歳の僕に辱めを受けさせようというエポック社サイドからの罠。
しかし、ここで口籠るのも逆に恥ずかしいので、極めて冷静に、あえてハッキリと伝える事にします。


「カプセルコレクションの "巨大うんち" です」

「ありがとうございます。巨大うんちはお色が4種類あると思いますが、どちらのお色の巨大うんちでしょうか?」

「1番のピンク色の巨大うんちです」

「ありがとうございます。それでは1番のピンク色の巨大うんち、こちらの方を交換させていただきますので、お名前とご住所を〜〜〜」


冷静に考えて、お互いに顔も知らない男女が澄まし声で「巨大うんち」というパワーワードを連呼する様子は尋常ではない。
もはや新しいテレフォンプレイだろコレ。

ちなみにエポックとは "新時代" を意味しますので、なるほど僕に新時代の扉を開かせようというわけか、社名にするだけの事はあるぜと感心した次第です。


そして今日の夜、交換用の新しい巨大うんちが届くそうな。
なんと迅速な巨大うんちなのか。


はたして僕は、この日記で何度「巨大うんち」と言ったんだろう。
ウンコなだけにクソどうでも良いな。滅べ。

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