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彼の気づき

東京の本藤です。

さて、今日は再び次男の話です。
昨年コロナ禍で学校をやめるという選択をして新たな道を歩み始めたものの、まだまだ渦中にいます。学校軸から解放されたのにもかかわらず、同級生からの連絡や情報に不安定になったり、やりたいことが見つからないと悩んだり。彼の日替わりな表情を見ていると、私に何ができるだろうかと悶々と考え込んでしまいます。まさに、子どもの不安定な様子は親にも伝染してしまうのです。

そして、逆も真なり。私の心配は簡単に次男に読み取られてしまいます。ここは、私が凛とした姿勢を持っておかなければ!と思い、「大丈夫、彼を見守っていこう!私は応援する人!」と何度も自分に言い聞かせて次男に声をかけるようにします。すると、いつの間にか、こちらの心も穏やかになってきて、次男のこわばった表情も少なくなってきたように思います。

次男は、どちらかというと真面目な性格で自分自身に完璧を求めてしまいがちです。時折痛々しく感じてしまうことも多く、「そこまでストイックにならなくていいんじゃない? もう少し気楽に考えてみたらどう?」とつい言ってしまうのですが、そんな言葉はまったく彼の心には響きません。それどころか、「人から言われて変えられるものではない。自分でどうにかしなければ解決できないんだから、黙ってて。あっちに行って!」とシャットアウトされてしまいます。それでも、どうしたら次男が気持ち楽に過ごせるようになるんだろう、誰か話せる人がいたらいいんだけど…などと考えてしまいます。

ただ、次男には以前、「自分で納得した時に納得した方法でやったらうまくいった」という経験がありました。
中学生の頃、夜遅くまでゲームに没頭して朝全く起きられず、学校や生活にもかなり支障が出てきました。これではいけない、早く生活リズムを戻させないとと焦るのは私の方、つい口出しも多くなったのですが、次男の反抗は絶頂期、なす術もなく途方にくれてしまいました。
あきらめかけて力が抜けた時、ふと気づいたのは彼の土俵に上がっていたのは私なんだということ。あぁ違うよね、次男が自分で考えて行動できるように見守らなければいけないーと心を改め、余計な口出しはやめよう、次男から話をしてきたら一緒に考えよう、と180度視点を変えて、見守ることにしてみました。これは、私にとっては修行そのものでしたが、それでも「彼を尊重して見守ること」と決めて臨んだのです。
その変化に気づいたのか、次男はしばらくして自分でどうにかしなければと悟ったようで工夫したり試行錯誤している様子。そして、自力で生活リズムを取り戻したのです。すごい、自分でできるんだ!と感動し、まさに「信じて任せること」での成功体験に喜びと安堵の気持ちでいっぱいになりました。
それからというもの、心配や先回りしたい気持ちが出てきたら一度立ち止まってみる、次男が受け取れそうな時に話す!と心がけるようになり、自分にぐっとブレーキを掛けられるようになりました。

先日、夕食の準備をしていたら、次男がやってきて 「ちょっとわかったかも!」と少し高い声で話しかけてきました。前のめりになって聞きたい気持ちを抑え、「へぇ、そうなの。何かわかったんだねー」と言うと、勢いよく話しはじめてくれました。
「オレ、自分を苦しめていた。こうしなければならないって縛ってたのは自分なんだよね。ずっとうまくいかなかったんだけど…」と話を続けます。次男は、自分の状況をどうにかしたい、自律しないと…と悩み、あれこれ試しては思うようにいかず、しばらくの間、壁にぶつかっていました。「…色々試してみたけどうまくいかない。もうダメだと思った。で、もうネガティブに考えること自体が悪いんだと思って、もう無理やりでもポジティブに考えてみよう!としたんだよね。頑張ってみた、でも、それでも、ゲームをやってても何をしていてもポジティブにしなきゃ、自分の気持ちをあげなきゃ!と思っててきつかったんだよね」。私の相づちも気にならないようで、ちょっと興奮気味です。
「でもさ、この考え自体がネガティブだったんだよね。ポジティブにならなければダメだっていう考え自体が間違い、そう思わないようにすればいいんだよね!」一生懸命話しながら頭の中を整理しているようです。

「すごい、気づきだね! 自分で分かったなんてすごいよ」という私に、「ポジティブになろう!なんて思わなくていいんだよね。力を抜けば楽になりそうな気がする」。そして、「ねぇ、『なんくるないさ』(沖縄の方言:「挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る」という意味)ってホントいい言葉だよね」。
久しぶりの笑顔が 開放感に溢れていて、あぁこれが自分を知っていく過程なんだな、と感じました。

「そうだね、一番大切なのは、そんな自分とどう付き合うか、なのかもね。お母さんもそうだけど、一番メンドクサイのは自分だったりする。落ち込む自分に振り回されるんだよね。大人になってもそうなのに、16歳で自分のことを分析してるってすごいよ!」と話す私に、うんうんと大きく相づちを打ちながら、「そうだよね、なんか安心した。まぁ、これでうまくいくとは限らないだろうけど、なんとなくわかって嬉しい」と張りのある声で言い、自分の部屋に戻っていきました。

順風満帆とはいかなくても、彼は彼のペースで成長していく。それを信じて応援できるのは私の役目。子ども自身が自律(自立)しようとする姿に励まされながら、子育てを楽しんでいきたいと思います。

2021年2月8日
東京都/本藤克子
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ 

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