犬育てと子育て ❸
色眼鏡いろいろ
我が家の愛犬ちょぼ(1歳♀)は、とにかく人が好き。散歩に出て向こうから人が来ると、それだけでシッポをフリフリ。視線を向けてもらえたりしたらフリフリはブンブンになるし、「かわいい〜」なんて声を掛けられたら、全身をくねらせて喜ぶ。遊んでもらえたりしたら、うれしさはMax、体当たりしてしまうこともあるほどだ。
なんて素直な感情表現! 我が家のムスメ(大学生)は感情をあまり出さないタイプなので、ちょぼのこの素直さは新鮮。ますます愛おしくなる。
とはいえ、体重15㎏のちょぼが飛びつくのは、遊びといえどもさすがに危険。なのであの手この手で歯止めを掛けようとするのだが、どうもうまくいかない。大好きなオヤツを出しても見向きもしないし、「イケナイ!」の声も耳に入っている様子がない。こんな時、どうしたら落ち着かせられるのだろう?
解決法が知りたくて、一緒にしつけ教室に参加した。ところがちょぼは犬も大好きだから、横一列に並んでのオスワリ練習中に、ゴロンとお腹を見せ、まわりを遊びに誘うのだ。やだ、もう! かわいい。
と思う親バカな私に、先生がひと言。
「ハイパーですね〜」
え? そうなの? うちのコ、ハイパーなの?
思ってもみなかった。でも言われてみれば周りのコは、私と目が合ったくらいでシッポを振らないし、お腹を見せたまま 裏匍匐《 ほふく》前進なんてこともしない。ドッグランで弾丸スピードでジグザグ走行したり、犬の上を飛び越えたりするのも、そういえばちょぼくらいだ。犬らしい行動と思っていたけど、犬でもあまりしないことなのか。ちょぼはハイパーなんだ。
専門家の言葉だけに、妙に響いた。
次第にちょぼの突き抜けて明るいところが気になり始め、人通りの少ない道を選んで散歩したり、ドッグランにもあまり行かなくなったりした。
そんなある日、ちょぼを幼犬の頃から知っている人と久しぶりに出会った。シッポをぶんぶん振って近づき、鼻鳴きして甘えるちょぼを、その人は「大きくなったね〜、落ち着きましたねぇ」と言いながら撫でてくれた。その言葉で、憑き物が落ちた。
たしかにハイパーなのかもしれない。でも、それがちょぼ。事前に意識をこちらに向けられれば、少し落ち着けることもわかってきた。その割合は成長とともに増えるかもしれないし、増えないかもしれない。なんであれ、ちょぼはちょぼだ。このちょぼが、私に優しい声を出させてくれるのだ。ムスメだって負けず劣らずの柔和な声で、「可愛いね〜」とちょぼをなで回してる。
ん? そういえばムスメ、ちょぼを相手にしているときはめちゃくちゃ素直に感情を出してる。
ちょぼって、すごい。
現場からは以上です。
米澤佐知子
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定コーチ