気づいたときがその時
東京の菅原典子です。
子どもたちも大学生と高校生になり、そろそろ親としての出番も終わりが見えてきた我が家ですが、今までの私の22年の子育てを振り返ってみると、反省と後悔だらけなのが正直なところ。
そんな、苦い思い出の多い私の子育てですが、「じっくり話を聴く」ことで起きた我が家の変化について書きたいと思います。
私がハートフルコミュニケ―ションで学び始めた時、子どもたちは既に中高生。特別深刻な問題や困難があったわけではありませんでしたが、学べば学ぶほど、幼少期にできていなかった(意識していなかった)ことにたくさん直面し、時すでに遅し、などと、正直残念な気持ちと後悔でいっぱいになりました。
講座で習ったことを、しっかりと小さいころから実践していればよかった、、、うちの子どもたちはきちんと一人前に自立できるのだろうか、などと心配や不安も芽生え、また、子どもたちに対して、ちゃんと子育てできていなくってごめんね、、、と、罪悪感のようなものも感じました。
それでも、「遅すぎることはない。気づいたときがその時」という講師の菅原裕子(代表理事)の言葉が心に響き、今できることをやってみようと決め、今までとは違う考え方ややり方を実践してきました。
講座中にやってみたことはいろいろとあるのですが、私が、子どもとのよい関係性を築く上で一番効果が大きかったと思うもののひとつが、「傾聴」でした。
私は今まで、子どもたちの意思や考えを尊重することをあまりしておらず、自分の考えを押し付ける場面が多かったように思います。
例えば、習い事ひとつとっても、私の趣味や都合で始めさせ、好きかどうか向いているかどうかについては、子どもたちの気持ちを聞くことは無かったし、嫌がって泣いている我が子に「がんばれ!」と強く言って続けさせたことも。学校の勉強も心配が先に立ってしまい、ガミガミ言ってやらせることも日常でした。
講座のなかで、「傾聴」について学んだときに、自分がいかに子どもの話を聴いていなかったことに改めて気づかされ、まず「じっくり聴く」を意識してみよう!と思い、さっそくその日から実践してみることにしました。
「聴」の字に含まれている「耳」と「心」。これは、「耳を傾けて心からきくこと」というのがやけに腑に落ち、子どもの話にまず耳を傾けてみるところから始めました。私としては、「耳を傾ける」という言葉の通り、実際に耳(私の場合は右耳)を相手の方に少し傾ける感じにすると、「よし、聴くぞ〜」のスイッチが入りました。この時、ながら聴きはNG。携帯やPCの手を止め、顔や体も相手に向けてみました。
まず、それだけでも私としては今までとはかなり違った態度。
それから、効果的なあいづちやうなずきなども入れて聴くことに集中。「へー」「そうなんだー」「それでそれで?」などの合いの手は、「ちゃんと聴いてるよ」「興味あるよ」を伝えるために意識的に取り入れました。
そして、もう一つ私が最も注意したのは、「さえぎらない」「意見を言わない」「否定しない」ことでした。これが一番神経を使う部分でした。というのも、私は問題解決したい気持ちがとても強く、すぐに相手の間違っているところを指摘したり、否定したりすることがよくあり、子どもたちに対しても、「それはダメだよ」「なんでそんなことしたの?」「もっと〇〇できなかったの?」とすぐに否定的なことを言ってしまっていました。
そして、「次はこうしなさいよ」「あなたの〇〇なところをもっとこうしたら」「〇〇の方がいいよ」と私の考えを押し付けることも多々ありました。
その時は押し付けている感覚は全くなく、親として大人としての当然で必要な良い助言のつもりでしたが、そうしていくと会話は段々と険悪な雰囲気になっていき、子どもは、怒られている、責められているなどときっと感じたことでしょう。
これは私の母親との会話でもよく起こりがちな展開で、最終的にはお互いが嫌な気持ちになり電話を切るということがよくありました。
そんなせっかちでおせっかいな私は、“お口チャック”をとにかく意識し、まずは黙って聴こう! というのを実践していきました。はじめは少々わざとらしかっただろう私の「傾聴」も、段々と自然にできるようになっていき、少しずつ子どもたちとの会話も楽しくなっていくのを感じ始めました。
傾聴している中で、「否定しない」ことは、私としては「理解したよ」「受け止めてるよ」の無言の承認メッセージ。相手が何を言っても、一旦はとにかく受け止めることを心掛けました。
相手の話を十分に聞いたあとに、タイミングを見て私の考えを伝えると、不思議なもので険悪になることなく子どもたちもこちらの言い分をすっと聞いてくれるというやりとりも増えてきました。
もともと会話がはずむ長女よりも、下の息子の変化は大きかったように思います。
高校生になり、くさくさした思春期も少し落ち着いたこともありますが、学校での何気ない失敗談も明るく話してくれることが増えてきました。テスト勉強にやる気が起きなくてヤバい話、提出物を忘れて怒られたことなど、かつての私だったら逆鱗に触れていたであろう話も、のびのび話してくれるようになりました。
とにかく息子の表情が以前よりも数段柔らかい!
考えるのにちょっと時間がかかる息子に、以前はイライラしてつい先に言葉を浴びせかけていた私でしたが、「聴く!」と決めて、息子の言葉をじっと待つように。するといつもどこか自信無さげでどもり気味だった息子は、焦らず自分のペースで自信をもってイキイキと話すようになった気もします。
そんな息子を見ていると、私が頭ごなしに否定しなくなったことで、「どんなあなたも受け止めるよ」の承認メッセージを息子も少しは受け取ってくれているのかな、と淡い期待を。「聴く」、「待つ」、「否定しない」この3つの効果は息子にとって、とても大きかったと思います。
とはいえ、まだまだ私も発展途上。
つい先日も、就職活動の悩みを話してくれた大学生の娘に、私は、自分の経験や今の社会情勢の話、将来的な話を私なりに助言したところ、娘がため息交じりに「意見やアドバイスをもらいたいわけじゃない。アドバイスが欲しいときはちゃんと言う。今は、ただ、今日あったことを聞いてもらいたかっただけ」と言われ、ハッとしました。
<娘は悩んでいる→解決してほしいと思っている→私が解決の手助けをしなければ>
という構図を、頭の中で勝手に作り上げていた私。油断すると私の問題解決スイッチがオンになり、お口チャックがつい緩んでしまうので引き続き気をつけないといけません。
子どもたちが、その場ですぐに私にダメ出しやクレームをしてくれるようになったのも、ある時から私が態度を180度変えて、「全部聴くよ!」の体制に変えたからだと信じたいです。
今でも子どもに言われて気づくことがとても多いです。
過去の私の暴言や失態は消えませんが、気付いたときに始めたからこその今なのだ、と自分にOKを出して、またこれからも「傾聴」を意識して日々成長し続けたいと思います。
2024年12月23日
東京都/菅原典子
NPO法人ハートフルコーチ