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ついやってあげちゃう! “お世話グセ”に気づいた話

東京の平沢です。
昨年末、夫がコロナに感染し、我が家は一気に非常事態モードに突入しました。
私も夫もフルタイム勤務のため、普段から家事は折半しています。 私が夫の担っていた家事をこなすのは無理。そこで、私は息子2人に非常事態宣言を発令し、大学生の長男には洗濯、高校生の次男には朝食後と昼食後の皿洗いを担当してもらうことにしました。
具合の悪い夫を前に、神妙に各々の役割を受け入れた2人。発令初日と2日目は、振られた仕事を粛々とこなしてくれました。

ところが、3日目の夜、事件はおきました。
次男が皿洗いを忘れたのです。仕事から疲れて帰ってきて、私の目に飛び込んできたのは、流し台に積まれた洗われてない食器類…

「え? 皿、洗ってない…?」

その瞬間、ふつふつと怒りが湧いてきました。頭の中はもう被害者と化した私の罵詈雑言でいっぱいです。

(長男はちゃんと洗濯してくれているのに! 私は朝ごはんも、お昼ご飯も用意して出勤したのに! なのに、なぜ次男は忘れちゃうわけ? 疲れて帰ってきた私が、この皿を洗うわけ?)

すると、ちょうど次男がリビングに降りてきて、「あ、ごめん!皿洗うの忘れてた」とカラッとした口調でいうではありませんか。
思わず、(なんで皿洗ってないの?)(疲れて帰ってきたのに、疲れ倍増!)と、怒鳴りつけたい気持ちををぐっとこらえる私。ここで怒って責めてもお互い嫌な気持ちになって終わるだけ。いいことないのはわかりきっています。

「あー、そーなんだ⋯。」いま何か口にすると確実に嫌味になる。余計な一言をぶちまける前に、私は黙って皿を洗い始めました。私から不穏なオーラがでていたからか、そそくさと自室に戻っていく次男を背に、さてどうしたものかと考えました。

今、私はどんな言葉かけをすればよい? 伝いたいことは、なんだっけ? 
モヤモヤした気持ちは置いておいて、冷静になって考えてみよう。忘れたことを非難することではない。家族の一人がコロナにかかり、一時的に家事が大変なときだからこそ、思いやりをもって行動してほしかった。ちょっと想像力を働かせればわかると思う。うん、これだ!
いやまてよ。これ、言葉にして伝わるのかな、伝えただけで本当に想像力をもてるようになるのかな…?

ぐるぐると考えていると、なかなか夕飯ができないので長男がリビングにやってきました。

「ご飯は?」
「皿、洗っててまだできてない」
「皿は次男が洗うんじゃなかった?」

ここぞとばかりに、「ちょっと聞いてくれる?」と私。
理性を駆使して冷静さを保っていたけれど、長男の「次男が洗うはずでは」という言葉に、洗われていなかった皿を見たときの怒りの感情が再び湧き上がってきて、モヤモヤした気持ちを長男にぶつけました。

「仕事して帰ってきたらさ、皿が洗ってなかったの。すごい頭きた! どう思う?」

いっきに吐き出すと、長男はふ~んといって、
「で、次男はなんて?」
「忘れていたって」
「じゃあ、洗わせれば?」
「え?」
「本人にやらせればいいのに」

あっ、そうか! 長男にぶちまけたことで、そのおかしさに気づけました。
長男はただ淡々と当たり前のことを言いました。
「忘れていたなら、やらせればいいじゃん」と。
シンプルすぎる解決策に、私はハッとしました。どうしてそんな簡単なことを思いつかなかったんだろう。「やり忘れたことの責任」は本人に取らせるべきだったのだ!

私が黙って皿を洗わなければ、もっとシンプルに解決していたはず。ついいつもの癖で、本人のやるべき仕事に私が手を出して、結果として自分で自分をモヤモヤさせることになっている。これ、実は日常で繰り返しているのかもしれない…!! 無意識の癖ってこわっ。
これで「思いやり」とか「想像力を働かせて」とかいっても、言ってることとやってることが相反しちゃってるので、身につくはずがないよね…。

この「やってあげる癖」を直さない限り、私はこれからも「なんで私が!」と勝手にモヤモヤし続けるに違いありません。 そして、次男は「ママがやってくれるし」と無意識に依存し続けるでしょう。
これでは、お互いにとって良くない関係が続くだけ。やはりここはもっと意識して「最後まで手を出さずに任せる」癖を、徹底して私が身につけるしかないと思いいたりました。

多分、次男は皿を洗うのを忘れていたことに気づき、任された仕事を全うするつもりはあったのに、私が不穏なオーラをだして皿を洗い始めたので、仕事を全うする機会を逃したのでしょう。返す返すも、あの時シンプルに「じゃ、洗って」といえば、次男のやろうとしていた気持ちを奪わずにすんだなあ、と反省しきり。
なので、今後、似たような場面に出くわしたときには、「誰の仕事?」と自分に問うようにしようと心に決めました。

その後、夕飯の席についた次男は自分から「夕食後のお皿は洗うね」と申し出ました。
私は、長男からもらった解決策にすっかり目からうろこ状態だったし、何より気持ちのモヤモヤを聞いてもらったことですっきりしたので、次男に余計な嫌味を言わずにすみました。

その後は、夫が回復するまで各々の役割を全う。現在は感染前の日常が戻った平和な我が家です。
夫のコロナ感染をきっかけに起きた今回の出来事。 私が無意識の内に「つい手を出してしまう」クセがあることに気づけた、貴重な体験でした。

そしてもうひとつ、モヤモヤしたときは、誰かに気持ちをはき出して話を聞いてもらうことが大切だと、あらためて感じた出来事でもありました。

2025年2月17日
東京都/平沢恭子 
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ




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