日本橋三越前「中和ギャラリー」にて 浜田澄子さんの個展『遺跡ブルー vs かそけきブルー』。「かそけき」という部分について考えたことを補足
こちらはX(旧ツイッター)での投稿
こちらは少し長文(ハート・トゥ・アートFacebookページ)
リンクに飛ぶのが面倒な人もいるでしょう。全文を貼っておきます。
日本橋三越前「中和ギャラリー」にて 浜田澄子さんの個展『遺跡ブルー vs かそけきブルー』。「かそけき」という部分について考えたことを補足
2025年1月10日(金)、日本橋三越前「中和ギャラリー」にて 浜田澄子さんの個展『遺跡ブルー vs かそけきブルー』。展示は明日1月12日(日)までなので、細かく書く前に簡単な案内を。
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作品は特注パネル(150号の半分のサイズ)の迫力ある作品から、アクリルボックスを使ったもの、デジタルプリントに手を加えたような小品まで幅広い。全部で40数点ほど。数種類の和紙を使い、ペイントや刷り込みによる深みのある表現は健在。展示空間や作品画面など、浜田さんこだわりのバランス感覚も興味深いものだった。隣接する「Gallery For You」では浜田さんの生徒さんである菊池雅子さんの個展「やおよろずの神に会いに」も開催中。ぜひ!
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今回は、個人的に最初から展示タイトルが気になっていた。遺跡? かそけき? 両方とも時間の流れを感じさせる言葉。遺跡からは時間の経過や重さを感じるし、かそけきは漢字では「幽けき」。淡く薄く消えていきそうな様を表現する言葉。さらに「 vs 」としたところも心に引っかかっていた。物質の存在・物質の荘厳さと儚さの対比なのか、はたして……。展示を拝見した感想は、あらためて。
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◯浜田澄子 個展
『遺跡ブルー VS かそけきブルー』
開催日:2025年1月7日(火)〜12日(日)
時間:12:00 ~19:00(日曜 17:00まで)
会場:中和ギャラリー(東京都日本橋本町1-5-17 町田ビル4F)
アクセス:https://www.chu-wa.com/about.html
展示詳細:https://www.chu-wa.com/exhibition/exhibition.html
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時間が経ってしまったが、あらためて感想を。最初に投稿した簡単な感想(上部)と重複している部分も多々あるけれど、それはお許しを。
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2025年1月10日(金)、日本橋三越前「中和ギャラリー」にて 浜田澄子さんの個展『遺跡ブルー vs かそけきブルー』。展示空間のバランス感覚や作品画面など、考えさせられることが多い展示だった。作品は特注パネル(150号の半分のサイズ)の迫力ある作品から、アクリルボックスを使ったもの、デジタルプリントに手を加えたような小品まで幅広い。全部で40数点ほど。とくに気になったのが、空間中央右手に配置されたオイルペインティング。「珍しいな?」と思いつつうかがってみると、全体のバランスを考えて展示に加えたと話してくれた。なるほど。異質なものをアクセントとして入れることで、見ている側も気分に変化が出てくる。浜田さんのFacebookでの投稿では見事な料理の盛り付け画像が出てくることが多いのだが、今回のオイルペインティングは箸休め的な効果があった。料理の盛り付けは、素材の色彩や造形の配置、器選びで印象が変わってくるのは説明するまでもない。アート的な要素とデザイン的な空間の盛り付けこそが、浜田さんの大きな魅力といえるのではないか。
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和紙を使い、ペイントや刷り込みによる深みのある表現は健在。長年の風雨にさらされた木材や岩肌のような絵肌は、硬質さと柔らかさが同居している。長い時間の洗礼を受けた表現ではあるが、不思議なことに朽ちて淘汰されていく印象ではなく生命力が息づいている。これは発色のいい和紙をセレクトしていること、さらに「モノタイプ」という支持体に薄く刷り込みを何度も繰り返す仕事のなせる技か。和紙使いに関しては多くの方々によって語られていることなので、さらに掘り下げて感想を書く必要もないだろう。肝心な部分はここから。今回の私にとってのポイントは展示タイトルだったので、その部分について書くことにする。
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今回は、個人的に最初から展示タイトルが気になっていた。遺跡? かそけき? 両方とも時間の流れを感じさせる言葉。遺跡からは時間の経過や重さを感じるし、かそけきは漢字では「幽けき」。淡く薄く消えていきそうな様を表現する言葉。さらに「 vs 」としたところも心に引っかかっていた。物質の存在・物質の荘厳さと儚さの対比なのか、はたして……。ここで前回の投稿は終わっていたが、自分なりの感じたことを少し。
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まずタイトルに関して。前回の個展は2023年秋。水面の輝きに焦点を当てた白が中心の作品だった。その後、浜田さんはテーマを決めて制作に取りかかった。たしか「1年ほど前には決めていた」とおっしゃっていたはず。かなり時間をかけて、テーマを深めていったことになる。シンプルに見れば和紙を使った物質感とかそけきの空気感の対比がポイントなのだろう。しかし、その部分で私は少し戸惑ってしまった。それは、かそけきという『時間の経過』の表現について。個人的には作品単体では “ 淡く薄く消えていきそうな時間の経過 ” があまり感じられなかった。作品によっては静止したような(時間が止まったような)……かそけきに寄せた言葉にすると、「静寂(しじま)ブルー」といった雰囲気を感じた。また、想いの強さを感じさせるものもあった。あえて言葉にするならば、「不滅の法灯(ふめつのほうとう)ブルー」といった印象。ちなみに不滅の法灯とは比叡山延暦寺の僧侶たちが毎日油を注ぎ足すことで1,200年もの間一度も消えたことがないあかりのことである。浜田さんは他のお客様に「この作品はかそけきが強く出た」と解説されていたが、私も心の中で頷いたと同時に、かそけきという概念の結論が自分の中で出ないまま、なんとなくモヤモヤとしていた。自宅に帰ってからも「かそけきとはなんだ?」と自問自答した。そして「今回の場合、かそけきとは静寂や意思などを引っくるめたものだったのだろう」という結論に至った。展示については、もちろん作品単体で見てもも完結するのだが、どちらかというと作品群によるインスタレーションと考えた方がしっくりきた。残念ながらそれは叶わなかったが、自分なり結論を確かめるためにも、もう一度見たいと思わせる展示だった。
以上(2025/01/21 追記)
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