「日本人のアイデンティティを大切にする教育と地域メディアで日本を元気に」ターンズ プロデューサー 堀口正裕さん
20年前から地域活性化の事業を始め、全国を飛び回って、地域メディアづくりの事業をされている堀口さん。日本の教育や地域活性化への想いを熱く語って頂きました。
<堀口正裕さんプロフィール>
出身地:埼玉県
活動地域:全国各地
経歴:北海道生まれ。早稲田大学卒。
国土交通省、農林水産省、文部科学省等の各委員会への有識者としての参加や、BBT×JTB「ツーリズム・リーダーズ・スクール」、社会起業大学、丸の内朝大学等の講師他、全国各自治体の移住施策に関わる。
現在の職業及び活動:「TURNS」プロデューサー、(株)第一プログレス常務取締役、TOKYO FM『Skyrocket Company』 内「スカロケ移住推進部」ゲストコメンテーター
新しいライフスタイル、本物の豊かな暮らしを追求し、雑誌『tocotoco』『カメラ日和』『LiVES』等の創刊に尽力。東日本大震災後、 日本を地方から元気にしたいとの思いから「TURNS」を企画、 創刊。これからの地域との繋がり方を提案している。
座右の銘:「武農一如」「失意泰然」
合気道の「武農一如(ぶのういちじょ)」の精神を生活や仕事に生かす
記者 堀口さんはどんな夢・ビジョンを持っていらっしゃいますか?
堀口正裕さん(以下、敬称略) 私の会社は、人ぞれぞれの価値観が益々多様化する現代社会において、時代にあった豊かな生き方の選択肢を提案するメディアを創っています。私は日本が大好きなので、日本人のアイデンティティ、日本人が日本人の良さを再認識でき、日本を元気にしたいという思いで事業をつくってます。
もっと日本を元気にして、閉塞感をなくして、色々なヒントや生き方の選択肢を提案したい。それをやり続けて、私の仕事から何らかのヒントを得て喜んで下さる方が一人でも多くいらっしゃれば本当に嬉しい。大それたことでは無いかもしれませんが、それが夢ですかね。
やりたいことを突き詰めていくと、つまるところ教育に行きつくんですよね。私の家は武道の道場をやっていて、小さい頃から父親に日本の精神など生き方のヒントを沢山教わりました。
合気道に「武農一如(ぶのういちじょ)」という言葉があります。これは合気道の創始者、植芝盛平開祖が仰った言葉で、自ら土を耕し命の源である食の生産に携わることで世の中の理を体感し、その上で技を磨くということですが、合気道というのは、「調和」なんですね。人を倒すことが全てじゃなくて、気の交流、つまりコミュニケーションなんです。そうしたことからも子どもたちに教えられることがいっぱいあるんですね。
体を鍛えても、それを日々の生活や仕事に活かせないと、意味がないじゃないですか。もっと実践に使えるような生き方をいつも考えていて、そうすると自分の仕事にも全部つながってくるんですよね。打ち込んできたこと、今やってることが全て意味があって面白い。だから夢というか、好きでやっていて、これからもやり続けたいと思ってます。
記者 日本が大好きなんですね。
堀口 そうですね。自分が日本人として生まれた意味を考えると、けっこう面白いこといっぱいありますね。それを考えていくと幸せになれるというか。よく、なぜこの両親のもとに生まれたんだろうと、環境を嘆く人もいますが、たとえ不遇な人生と言われる人であったとしても、そこに生まれてきた意味って絶対あると思っています。そう考えると、一番わかりやすいのが、日本人として生まれてきたってことで。
だから私は、ターンズという媒体で、全国飛び回って地域の魅力を発信しているんです。「地方創生」と言われるずっと前から、地域メディアをやってます。今、「地方創生」って言われてますけど、たかだか7、8年前ぐらい。ターンズの前身のメディアから数えると、実に20年以上も地域メディアに関わってきてますし、日本の良さを大事にして事業をつくっています。
子供たちに生き方を教えたい
記者 夢を実現するために、3年後、5年後、10年後などの目標や計画はありますか?
堀口 目標は、3年後にできるかどうかはわからないですけど、将来的には保育園はやりたいなと思っています。そのために今、道場をやりながら、もう少し時間みつけて、寺子屋的なものをやりたいなと思っています。
自分が社会人になって子育てして、人の子にも指導して、経営にも関わって、私なりにダイナミックに生きているわけじゃないですか。そうした経験から気づくこと、参考にしてほしいことなどを子どもたちに伝えたいと思った時に、松下村塾のような、幼少のころから教えることをやりたいなと。
昔は武士道とか、武士になるための教えがあったけど、今、仕事でどう貢献するかということを、子どものときから躾も含めて教えることも大事だと思うんです。今の時代は、居合をやったって、人を斬れる時代じゃない。幼少のころから社会を経験した大人が生き方を教えていくことで、子どもの将来が随分変わっていくはずですよね。
あと、日本には1740程の自治体がありますけど、なんとか全ての地域に足を運びたいなと思っています。今は半分も行っていないんじゃないかな。行くと、色々な現実がみえてきます。
働き方改革と地域創生の融合を
それと、今、働き方改革のことがよく言われていますが、時短ばかりが議論され、違う方向にいっている気がしてならないんです。例えば、残業問題が分かりやすいですね。そうした労働者の不満を軽減する議論だけではなく、今の時代だからこそ出来る新しい働き方を模索するような議論がもっと湧いて良いと思っています。ワクワクする視点が欲しいなと。
地域貢献という視点でいくと、企業に就職している人が地方で活躍したいと考えた時、いきなり会社を辞めて移住しないと難しいと未だにその選択肢しかないと思っている人が沢山いますが、そうではなく、これから企業が本格的に働き方改革を進めていくと、企業に籍を置きながら大好きな地域にも貢献し活躍できる人たちが増えてくると思っています。
例えば週3日東京勤務で、あとは自由にパラレルワークで好きな地域で働けるようになる。そうなれば、企業は経費を落としながら社員のモチベーションは上がり、地域では地域資源を使った新しいビジネスが生まれる可能性が出てくるという風に、一石三鳥以上の化学反応もあり得るかと。
社員は、自然の中でおいしい水を飲みながら、畑でもいいし、自然の環境で子育てしながら、かつ、ICT教育が進んでいくので、地域にとっても、社員個人にとっても、企業にとってもどんどんプラスになる社会ができてくるはずなんですよ。そんな可能生を今いろいろな機会でお話ししてるんです。実践している方も既にいらっしゃいます。
コストの安い海外の素材を輸入して何かを作って販売するといった、利益を得る為には勿論大切なことですが、大量消費時代の考えから脱却できていないところが現実的にはまだまだ多くありますが、これからは、日本本来の日本発のものでビジネスをやっていく。そこに価値があって、素材も日本のものを使うという動きが、もっともっと出てきていいはずですね。
日本は色々な事がバラバラに起きているんですよね。働き方改革も地方創生も。それがもっと集約されて、融合していく時代になっていくと思っていて、そこに貢献できたら嬉しいいですね。
記者 いいですね!
堀口 まずはモデルをつくること。実際、実践されている人もポツポツ出てきているので、そういう人たちを、企業の人事や経営陣に紹介する動きをどんどんやっていきたい。そうすると絶対変わっていくと思うんですよね。
企業と個人、そして地域が、もう少し自由度を上げてスピーディーに、お互いがWin-Winにできるような関係性を作っていく。
これは日本がやらないと、少子高齢化で世界の先進モデルと言っているだけで、まだ世界が見習うようなモデルは少ないんですよ。そして重要なことは、日本は人口減に歯止めがかからない状況にあるかもしれませんが、逆に世界的な視点で見れば人口増です。食糧難も必ず来ると言われています。だからこそ、そうした世界の動きにも素早く対応ができるような新しい官民連携のモデルを作っていくことも急務なんです。
PDCAなんて言ってる場合じゃないんですよ。IDCAなんですよ。アイデアで、その次に即アクションです。思いついたらすぐ動く。
私は地域と企業の可能性にかけてるんですよね。地域暮らしの魅力を伝えようということでやってたんですけど、20年前と今は時代が大きく変わってきています。20年前はAIなんて言葉もなかったし、まさか本当にターミネーターの世界を懸念するような世の中になるなんて思いませんでした。つらいこともいっぱいあるけれど、楽しむことですね。
記者 その夢を達成するために、日々どんなことを意識されていますか?
堀口 今言ったようなことをやるためには、誰よりも人に会うこと、極力人と会う時間をつくって、会いまくる。この人、もしかしたらヒントがあるかもしれないとか、自分ももしかしたら何かを与えられるかもしれないと思ったら、すぐに会いに行くことを心掛けてます。
やりたいことを貫いてきた父親の死が、人生の転機だった
記者 いまのお仕事を始めたきっかけは何ですか?
堀口 私はもともとメーカーにいた人間で、転職をしたんですよ。前述のように家が道場をやっていて毎日のように稽古して、武道家になりたかった時期もありました。でも、大学ではメディア研究のサークルに入り、就職後もメディアをつくりたいという思いをずっと持ち続けていて、メーカーの企画や営業の仕事も楽しかったんですけど、やはり自分がやりたいこととは違うなと。
そんな中、私が27歳の時に親父が他界してしまいます。世界で尊敬する人間は誰?と聞かれると必ず迷いなく「父親」と答えていましたが、人生の師匠である父が他界してしまう。ちょうど20年前なんですよね。父は自衛官で航空管生一期生だったんですが、国のために公に尽くすこと、そして家族、友人を大切にすることが大事だと、そういう生き方を貫いた人でした。
父親の死がきっかけで、自分もやりたいことをやる、悔いのない生き方をしようと決意しました。いまの会社は当時9人しかいなかったんですけど、そこに自分が入社して、代表にこういう思いでこんなことをやりたいと話したら、勿論結果を出すことを条件にですが、それを全部、好きなようにやらせてくれたんです。大変でしたが、やりたいことができて、その仕事で人様が人生を変えるヒントを得て喜んで下さる。こんなに幸せなことはありません。父親の死が、こうした人生の転機を与えてくれたと思っています。
記者 お父様の死が大きかったのですね。
堀口 大きかったですね。生前は、私が大人になっても恐かったですね。言い合いとかも当然ありますよね、親子だから。でも真面目に向き合ってくれる人だったので、そういう父親を見て育てられて来たんだなっていう思いはいつも心の中にありますよね。
「失意泰然」を人生の柱に
二十歳になったときに、父から、貧乏で何もプレゼントしてあげられないけど、言葉はいくらでも贈ってあげると言われ、「失意泰然」という言葉をプレゼントされたんです。失意のどん底にあっても、すがすがしく泰然としている。その心、腹を鍛えるんだと言われて。この失意泰然という言葉は、今でもずっと生きる上での柱になっています。それがあって、いろいろなことを乗り越えてきました。
そういうことも含めて、父親からは、生きる力、考え方、ヒントを本当に多く教えてもらったと思っています。
やはり、生かされているとか、自分がここに生まれきている意味とか、そういうことを、父親から徹底的に叩きこまれたんですね。人が生まれる確率、命が1つできる確率って、ジャンボ宝くじが100万回連続で当たる確率とほぼ同等らしいんですよ。
年は違えど、その確率で生まれた命同士が、同じ時期に、同じ国に、同じ日本人として出会う確率って、もっとすごいんですよ。まして家族としてならもう天文学的数字を超絶してます。やっぱりそのご縁を大事にしなきゃいけないなと、考えたりするわけですよ。そういう考え方も、今思えば、小さい頃からに教えられてきましたね。感謝しています。
昔の教育は、日本の先祖や偉人を敬う教育をしてきたじゃないですか。貧乏な国だったけれども、精神的にはすごく豊かで。そういうこともちゃんと子供達に伝えてくれる親御さんって、今少ないと思っていて。
「ママのスマホになりたい」という子供も出てくるわけですよ。「スマホばかり見て私を見てくれない」って。可哀相ですよね。年を取ってきて自分の子ども達をみながら、やっぱり社会に貢献したいと思って。ますますこういう事業が楽しくなっている、 そんなところですね。
記者 では、読者へのメッセージをお願いします。
堀口 いつ死ぬかわからない。やりたいと思ったこと、ワクワクすることを、やれることはすぐやったほうが絶対に良いと思います。失敗しない人なんていません。成功するまでやり続けたら、それは失敗ではなく成功への過程にすぎませんから。やろうと思ったらなんでもできますよ。自分が楽しんでいると周りもワクワクするし、継続します。そうすると、人が集まってきて、もっともっと毎日が楽しくなりますよね。いろいろな人と会うこと。興味を持ったら飛び込んでいくこと。人を動かすのは、人でしかないと思います。
記者 今日は素晴らしいお話、ありがとうございました!
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堀口正裕さんの情報はこちら↓↓↓
■ターンズ www.turns.jp
■ツイッター https://mobile.twitter.com/m_horiguchi
■TOKYO FM スカロケ移住推進部 https://www.tfm.co.jp/sky/iju/
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【編集後記】
今回、インタビューの記者を担当した陣内、安田、石塚です。
いつも全国を飛び回って地域の魅力を発信している堀口さん。その情熱と行動力には本当に驚かされます。時折ユーモアを交えながら、地域活性化(地方創生)の現状や課題を真剣にお話しくださって、本当に楽しく、勉強になるインタビューでした。
また、お父様の死をきっかけに、今のお仕事を始めたという背景に、親子の深い絆のようなものを感じ、感動しました。
ツアーや体験イベント、講演等も多数開催されていますので、地域活性化にご興味ある方は、ぜひ「ターンズ」のホームページをチェックして、足を運んでみてくださいね!これからの堀口さんのご活躍、応援しています!
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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。
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