白ゆき姫殺人事件 7年ぶり2度目の感想
昨日も書いた通り、「白ゆき姫殺人事件」見ました。以前映画館で見たことがあったのですが、何となくまた見たくなってレンタルで。
夕子ちゃんの「人は自分の都合のいいようにしか記憶を語らない」という言葉があるけど、人間って本当にそうだよなぁと思う。この映画でも現実でも。
三木典子の描かれ方が善人(みっちゃん、係長)であったり悪女(城野美姫、狩野里沙子)であったりするのは勿論、間山先輩と三木典子の関係、三木典子とみっちゃんの関係性なども人によって全く違う映り方をしている。
映像制作会社の長谷川が事件に関するインタビューを見て「この人達みんな本当の事言ってるんですかね」と言っているけど、これは係長やみっちゃん、地元住人(=過熱する報道を内心面白がっている人達)だけではなく、城野美姫も含まれているんだろうなと思う。
城野美姫は基本的には冷静で控えめな人物として描かれているけれど、それでもやっぱり彼女の回想の中にも自分の都合のいいような解釈が含まれているんですよね。
個人的には事件当日の飲み会で城野美姫が箸を落とすシーンが好きです。他の人の回想でも城野が箸を落とす場面は描かれているのですが、本人の回想では、自分が箸を落としたことにより周りの人も一緒に探してくれる場面や、更には係長が気を利かせて1人分の箸を持ってくるように店員さんに注文している場面まで描かれている。
城野美姫は目立たない自分自身をどうしようもできないと思っていそうだけど、本当は誰かが自分に注目してくれることを願っていたりするのでしょうか。
個人的には、目立たないとはいえ城野美姫みたいな人結構面白くて好きだなぁと思います。一見個性がないように見えて、実は料理とか運転とか何でも一人で出来てしまうところ、アン・シャーリーのような、聞いているこっちが恥ずかしくなるほどの想像力、自殺しようとする前に手記を書こうとする丁寧さ、自殺でさえ首尾よく行えてしまう器用さ、…なんか深堀したら面白い人だなぁと思います。
城野美姫は殺人を犯したわけではないけれど、結果として自分の行動が殺人計画に利用されてしまったり、悪意はなかったとはいえ芹沢ブラザーズの事故に関わってしまったりして、この後なんのしがらみもなく生きていけるのだろうかと思うと難しい気もします。
ご両親やご親戚との関係も難しいけれど、たぶん彼女の両親はそこまで悪い人ではないんじゃないかと思います。自分の大切な人が冤罪の容疑をかけられてバッシングされていたら、その人と対面したら、なんて声をかければいいでしょうね。
今回は結末を知った上で鑑賞したので、里沙子の登場するシーンは特に面白かったです。
部屋で赤星と話しているシーンで傍らにりんごジュースが置かれていたのを印象的に覚えているのですが、里沙子の部屋のキャンドルとか、青い水槽とか、スウェットパンツから覗く細い足とか、そんなところから彼女の心の重さがにじみ出ているような気がしてしまうのです。その重さにりんごジュースがなんとも不釣り合いだ。
とはいえ結構つっこみどころもあるのかなと見返して思いました。
夕子と美姫は子供のころ放火騒ぎを起こしてしまったけど、子供も読むようなおまじないの本に火を使うものが出てくるかなとか、三木典子と芹沢ブラザーズの関係って結局なんだったのよとか、ちょっと気になります。
原作は文章がくどくてなかなか全部読めないのでアレなんですが、原作より映画の方が見やすいなぁと思います。
ここまで読んでくれたあなたがだいすき!