基本的対処方針とは
特措法に基づく新型コロナ対策では、「基本的対処方針」が重要な文書となります。
基本的対処方針の役割
以前にもご紹介した「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」ですが、これは様々な病原性や毒性の新型インフルエンザウイルスが現れることを想定して作成された計画でした。そのため、様々な状況を想定した対策オプションが記載された分厚い計画になっています。しかし、これを端から順番に実行していく、という性質のものではありません。この中から、必要な事項を選んで、出現した新しい感染症に必要な対策を実行していく、というのが基本的な考え方でした。
その「必要な事項を選んで」示す、という役割を担うのが「基本的対処方針」です。ただし、これまで想定されていた新型インフルエンザの流行と今回の新型コロナウイルス感染症では流行の動態が異なると考えられますので、新型インフルエンザ等対策の行動計画で記載されていた、新型インフルエンザの場合の流行期のフェーズと対策の移行の考え方は、一度忘れておいた方が良いでしょう。今回の「基本的対処方針」をよく読んで、実際にどのようなことが今後行われていくかをイメージしておくことをお勧めします。
例えば、新型インフルエンザ対策では、疫学的リンクが追えない患者さんが出てきたときには、その時点で水際対策を緩和するのが基本的な考え方でした。一方、今回の新型コロナでは、国内の流行拡大を抑える観点では、検疫等水際対策は引き続き継続されています。
下記は、新型コロナウイルス感染症が「まん延のおそれが高い」ということで政府対策本部が設置されたときに発出された対処方針です。
基本的対処方針(令和2年3月28日)の構成
一 新型コロナウイルス感染症発生の状況に関する事実
二 新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針
三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項
(1) 情報提供・共有
(2) サーベイランス・情報収集
(3) まん延防止
(4) 医療
(5) 経済・雇用対策
(6)その他重要な留意事項
1) 人権等への配慮
2) 物資・資材の供給
3) 関係機関との連携の推進
4) 社会機能の維持
5) その他
こちらが、緊急事態宣言が発出されると、方針転換した点や、緊急事態措置(=緊急事態宣言が出されている期間内に行われる特措法に基づく措置)として行う内容を記載した基本的対処方針が新たに発出されることになります。構成は上記と大きくは変わらないでしょう。
クラスター対策は続く
緊急事態宣言が行われた段階でクラスター対策が終わるわけではありません。緊急事態宣言の対象とならなかった地域も気を緩めるわけにはいきません。継続して、クラスター(集団感染)に焦点を当てた対策は続きます。特に、「感染確認地域」「感染未確認地域」では、クラスター対策を徹底して継続することが、爆発的な感染拡大を起こさないために重要です。同時に、どの地域も医療体制の準備を急ピッチで進めていく必要があります。
緊急事態宣言下の地域ではクラスターを見出すのが難しくなることはあるでしょう。これまで以上の外出自粛等の行動変容で流行が抑制されることで、まずは爆発的な増加の状態になることを防ぎ、再びクラスターに焦点を当てた対策に戻していくことが当面の目標となります。
新型コロナの流行は、そう簡単に終わらせられる流行ではありません。爆発的な増加をなんとか抑制し、重症な方に適切な治療を行える体制を維持しつつ、社会活動を取り戻しながらウイルス流行を克服するための知恵を見出していく必要があります。