緊急事態宣言におけるまん延防止対策のステップ
法的なステップ
特措法に基づく新型コロナ感染症対策の「まん延防止」の法的なステップとしては、
1)協力の要請(緊急事態宣言の有無を問わず)(第24条の9)
(以後、緊急事態宣言下の地域)
2)外出自粛の要請(第45条第1項)
3)施設の使用制限・停止、または催物の開催の制限・停止、
その他感染対策を講ずるよう要請(第45条第2項)
4)3の指示(第45条第3項)
という流れになっています。最低限の私権制限に留める、という観点からこのように慎重なステップが取られることになっています。
これらの具体的な運用方法が、「基本的対処方針」や「緊急事態宣言に伴う事業者への要請等に係る留意事項等について(4月10日事務連絡)」に示されているところです。
緊急事態宣言が行われている地域
基本的対処方針によれば、今般の新型コロナ対策では、以下のステップで行われることになっています。
① 法第45条第1項に基づく外出の自粛等について協力の要請
② 法第24条第9項に基づく施設の使用制限の要請
③ 特定都道府県は、国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の効果を見極めた上で
④ 特定都道府県による法第45条第2項から第4項までに基づく施設の使用制限の要請、指示等を行う
参考(4/11基本的対象方針より抜粋)
特定都道府県(緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県)は、まん延の防止に関する措置として、まずは法第45条第1項に基づく外出の自粛等について協力の要請を行うものとする。その上で、都道府県による法第24条第9項に基づく施設の使用制限の要請を行い、特定都道府県による法第45条第2項から第4項までに基づく施設の使用制限の要請、指示等を行うにあたっては、特定都道府県は、国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の効果を見極めた上で行うものとする。政府は、新型コロナウイルス感染症の特性及びまん延の状況を踏まえ、施設の使用制限の要請、指示等の対象となる施設等の所要の規定の整備を行うものする。
既に東京では、45条に基づき、5月6日までの徹底した外出自粛の要請を行なっています。
第24条の「協力の要請」では、都道府県対策本部長(知事)が「必要な措置」を講ずるよう求めたり、要請したりすることができます。例としては、教育委員会に対しまん延防止のための学校の休業の要請、広報活動等への協力要請、文化祭等のイベントの延期や施設の使用を極力制限することなどが挙げられています(逐条解説参照)。この、②での使用制限ですが、「特措法第11条第1項各号に掲げる施設を対象としており、それ以外の施設は、施設の使用制限・停止に係る要請の対象としていないことに留意すること」という解釈が、「緊急事態宣言に伴う事業者への要請等に係る留意事項等について(4月10日事務連絡)」に示されています。この施設の対象については、以前の記事をご参照ください。つまり、都道府県知事がここに含まれていない施設に使用の制限を要請するとすれば、それは特措法に基づかない要請、ということになります。
例えば東京都は、特措法によらない協力依頼をおこなう施設として、以下の1000平米以下の施設を挙げています。1,000平米以上の場合は特措法に基づく休業要請の対象ですので、それ以外でも休業をしていただく、という趣旨です。
・ 大学・学習塾等
・ 集会・展示施設
・ 商業施設
を挙げています。
緊急事態宣言が行われていない地域
基本的対処方針の(3)まん延防止の項目で、「特定都道府県は、」で始まる内容が、緊急事態宣言下の地域を対象とした記載内容です。「都道府県は、」とあれば、緊急事態宣言が行われていない地域も対象とした記載内容です。特に、4月11日には、「繁華街の接客を伴う飲食店等への外出自粛について、強く促す」という項目が加わりました。
8割の接触機会の低減を
特にまん延のリスクが高い施設には集中的に対策を行なっていく必要があります。一方で、感染が拡大している地域では、その勢いを削ぎ終息に向かわせるために、最低7割、極力8割程度(といわず、しっかり8割!)の社会における接触機会の低減を目指す必要があります。職場に行くことは生活の維持に必要な行動ではありますが、テレワークを推進、時差出勤を行う、換気励行、自転車通勤、風邪症状がみられる方の出勤免除、テレビ会議の利用など、できることがあります。職場での感染防止対策も重要です。施設の使用制限がかかる施設でなくても、以下のような感染対策が求められています。
施設使用制限・停止以外の措置(政令第12条)
・ 感染の防止のための入場者の整理
・ 発熱などの症状がある人の入場禁止
・ 消毒液や手洗いの場所の設置による手指消毒の徹底
・ 施設の消毒
・ 咳エチケットの徹底
・ マスクの着用等の感染防止策の周知
・ 施設の換気
社会の機能は維持していく
このような状況下でも、生活・経済は社会として維持する必要があります。医療体制はもちろん、支援が必要な方々、必要な最低限の生活を送るために不可欠なサービスを提供する事業者、社会の安定維持のための活動を行う方々等には、事業を継続が要請されています。以前にも書きましたが、以下のような事業は継続されます。緊急事態宣言が出ても慌ててはいけません。一方、これらの事業者の方は業務継続のために様々な工夫を講じていく必要があります。
緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者
1.医療体制の維持
・新型コロナウイルス感染症の治療はもちろん、その他の重要疾患への対応もあるため、すべての医療関係者の事業継続を要請する。
・医療関係者には、病院・薬局等のほか、医薬品・医療機器の輸入・製造・販売、献血を実施する採血業、入院者への食事提供など、患者の治療に必要なすべての物資・サービスに関わる製造業、サービス業を含む。
2.支援が必要な方々の保護の継続
・高齢者、障害者など特に支援が必要な方々の居住や支援に関するすべての関係者(生活支援関係事業者)の事業継続を要請する。
・生活支援関係事業者には、介護老人福祉施設、障害者支援施設等の運営関係者のほか、施設入所者への食事提供など、高齢者、障害者などが生活する上で必要な物資・サービスに関わるすべての製造業、サービス業を含む。
3.国民の安定的な生活の確保
① インフラ運営関係(電力、ガス、石油・石油化学・LPガス、上下水道、通信・データセンター等)
② 飲食料品供給関係(農業・林業・漁業、飲食料品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
③ 生活必需物資供給関係(家庭用品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
④ 食堂、レストラン、喫茶店、宅配・テークアウト、生活必需物資の小売関係(百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター等
⑤ 家庭用品のメンテナンス関係(配管工・電気技師等)
⑥ 生活必需サービス(ホテル・宿泊、銭湯、理美容、ランドリー、獣医等)
⑦ごみ処理関係(廃棄物収集、運搬、処分等)
⑧冠婚葬祭業関係(火葬の実施や遺体の死後処置に係る事業者等)
⑨メディア(テレビ、ラジオ、新聞、ネット関係者等)
⑩個人向けサービス(ネット配信、遠隔教育、ネット環境維持に係る設備・サービス、自家用車 等の整備等)
4.社会の安定の維持
・社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中にも、企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者の最低限の事業継続を要請する。① 金融サービス(銀行、信金・信組、証券、保険、クレジットカードその他決済サービス等
②物流・運送サービス(鉄道、バス・タクシー・トラック、海運・港湾管理、航空・空港管理、郵便等)
③国防に必要な製造業・サービス業の維持(航空機、潜水艦等)
④企業活動・治安の維持に必要なサービス(ビルメンテナンス、セキュリティ関係等)
⑤安全安心に必要な社会基盤(河川や道路などの公物管理、公共工事、廃棄物処理、個別法に基づく危険物管理等)
⑥行政サービス等(警察、消防、その他行政サービス)
⑦ 育児 サービス( 託児所 等)
5.その他
・医療、製造業のうち、設備の特性上、生産停止が困難なもの(高炉や半導体工場 など)、医療・支援が必要な人の保護・社会基盤の維持等に不可欠なもの(サプライチェーン上 の重要物を含む。 )を製造しているものについては、感染防止に配慮しつつ、継続する。また、医療、国民生活・国民経済維持の業務を支援する事業者等にも、事業継続を要請する。