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Headline Asiaのパートナーとインベスターに聞いてみた!海外テックカンファレンスと日本のカンファレンスの違いは?

テックカンファレンスは、多くのビジネスを生み出す可能性を持つ場として、重要であり、少しだけ不思議とも言える空間です。その場所にいるからこそ、熱意ある起業家や業界の人々と出会い、つながることができます。Headline Asiaのパートナーである岡本彰彦や投資家のJonathan M. Hayashiは、世界中の多くのテックカンファレンスに参加した経験があります。

弊社Headline Asiaは、日本最大級のスタートアップ・カンファレンスの一つであるIVSを毎年開催しています。この記事では、トップクラスのテックカンファレンスの特徴、IVSの改善点、そしてディールを効率的に探し出すために投資家ができることについて、Headline Asia編集部と岡本彰彦とJonathan M. Hayashiで話をしました。

画像:IVS2021 NASU 

編集部:今までに参加したことのある国内外のテック系カンファレンスは何ですか?
岡本
:これまでに相当数参加したことがありますが、今パッと思い出せるのは、Techcrunch Disrupt、Slush@Finland、Goldman Sachs PICC、Web Summit、Slush Asia & Tokyo、a16z event、Finovate、Finsum、ICC、BDash Camp、Geeks on a plane by 500 startups、Band of Angels、Angel listなどですね。
Jonathan:僕は、Techcrunch Disrupt、Money 20/20、Slush, Boao Forum、CES、MeetTaipei、Finsum などです。

断然効率がいいのは「アプリ」を用いたカンファレンス。どんな活用方法がある?

編集部:その中で一番良かったのはどのカンファレンスですか?
岡本:
質の点では、Goldman Sachs PICCとa16z summitが非常に良かったです。参加者が非常に厳選されていたことに加えて、アプリを通じて1on1を組むことができた点が魅力的でした。一般的なブース出展型のカンファレンスでは、ランダムに多くの人とネットワーキングができる点が魅力的ですが、Goldman Sachs PICCとa16z summitでは会いたい人とピンポイントにネットワーキングできるのが素晴らしいと感じました。

GS PICC (Goldman Sachs Private Internet Company Conference)
世界的な名門投資銀行、Goldman Sachsが開催するスタートアップイベント。様々なスタートアップ経営者を招待してセッションを開催、最新トレンドを得ることができる。内容についてはほとんど公開されておらず、参加者も限定的であることが特徴。

a16z summit
招待制で毎年行われるテック業界向けのイベント。限定的な招待枠で非常に濃いネットワーキングが可能。名門VCによって行われるイベントで、数多くの業界著名人が参加する。

Jonathan:Techcrunch Disruptは結構よかったです。イベント用のアプリがあり、スケジュールの確認や、参加者とのマッチングができて、効率がよかったです。また、登壇者が世界レベルの超一流のベンチャーやVCのCEO・パートナーたちだったので、興奮しました。
日本のイベントだと、Slushは結構楽しかったです。外国人が多いためなのか(クラブのようなBGM、薄暗い照明といった雰囲気もあり)、参加者は恥ずかしがらず、次から次に周りの人に話しかけている様子。プレイベントからそのような感じで休憩がてらパネルを見に行くような感覚でした。

画像:TechCrunch disrupt 2022はオフラインで開催する予定。

Techcrunch disrupt
Techcrunch disruptは起業家と、資金を提供する投資家に焦点を絞ったイベントで、11年間に及んで開催。コロナ禍においても、常に最新のテクノロジーを用い、来場者の満足度向上に努めている。イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ等の登壇経験もあり、世界的で最も注目を浴びているイベントの1つ。

Slush
Slushは2008年にフィンランドで始まった国際的なスタートアップ・カンファレンス。2015年にSlush Tokyoの前身となるSlush Asiaが開催されてから東京でも定期的に開催。若手中心のメンバーで運営されており、Slush Tokyo 2019では世界65カ国から6,000人に及ぶ人が参加。

岡本:Slushの運営側に関わったことがあるけど、彼らは起業家はロックスター!かっこいい!という海外の風潮を取り込もうとしていて、参加者側としても気分が高揚するよね。

画像:フィンランドで行われたSlush 2021

編集部:海外のイベントはアプリを使うケースが多い感じがします。Websummitもイベント用のアプリとブースを探すARアプリ二つあったそうです。
Jonathan
:最近参加したHong Kong Fintech Weekのアプリもクオリティが高かったです!アプリ内でライブストリーミングでパネルセッションが見れましたし、結構サクサク動作してました。
岡本:これはいいね!そういえば、GSもa16zも2019まではアプリ内でストリーミングは見れませんでした。一部の進んだカンファレンスでは、アプリを活用して参加者の満足度を高める動きが活発になってきているので、我々も見習いたい点ですね。

Image: The app that 2021 Hong Kong FinTech Week’s app provides live-streaming.

カンファレンスの形式や、サイドイベント。日本と海外での違いは?

編集部:IVSでは朝活が恒例となっていますが、海外はナイトクラブでパーティを行うことが多いと思います。ほかのテック系カンファレンスはどのような様子でしたか?
Jonathan
:ホテルや食事まで手配する「合宿型」のカンファレンスは海外ではあまりない気がします。用意されるのはランチぐらい。今となっては、日本発カンファレンスで合宿型になっているものもいくつかありますが、最初にやり始めたのはIVSだったと思います。
岡本:海外だとGS PICCやa16z Summitはいわゆる合宿型で行うカンファレンスでした。参加者が集まるウェルカムディナーパーティもありますし、ラスベガスで開催する際にはシルク・ド・ソレイユなどのミュージカルへの招待などもありました。一方で、本国フィンランドのSlushではクラブ貸切でのパーティや参加しているスタートアップやスポンサー企業が個別に開催するパーティが周辺で開催されるのですが、Slush自体は合宿型ではなかったですね。開催地・参加者の属性・世の中の動向等を踏まえ、柔軟に開催しているのだと思います。

画像:渓流釣り、温泉やJetPitch(ジェットコースターを乗ってプレセンテーションを行う)など豊かなアクティビティが用意された2021IVS NASUの朝活

カンファレンスの形式や、参加資格によって、オーディエンスはどのように変わる?

編集部:IVSはCEO向けやベンチャー向けの企画が多いですが、ほかのテック系カンファレンスはどうでしたか?オーディエンスの特徴について教えてください。
岡本
:招待なのか一般公開なのかなど、目的やテーマによって来場者の層は変わってくると思います。特に招待制のPICCなどはC-suitや投資家を対象としたものが多いと思います。

カンファレンスの参加から、投資につながることは?

編集部:カンファレンスの参加が投資につながることはありますか?
Jonathan
:一般参加ありのTechcrunch Disruptでは3日で200枚ぐらいの名刺をもらいました!全部VCもしくはスタートアップです。
編集部:ブースが200個以上あるんですか?回るのにめちゃくちゃ時間かかりそうですね(笑)実際に出資検討につながることはありましたか?Jonathan:100社ほどが資料を送ってくれて、一通り出資検討しましたが、実際出資したのは1社でした。
岡本:会いたい人、会いたいスタートアップをリストアップし、効率よく1on1をセッティングできた際には出資など次に繋がることが多かったです。

画像:Techcrunch Disrupt会場の様子

編集部:テッククランチ以外のカンファレンスに参加し、出資に繋がったことはありますか?その際のイベント設計や、参加者の特性(カルチャー)ネットワーキングはどのような感じでしたか?
Jonathan
:Slushに参加した際、出資に繋がったことがあります。会社やサービスの概要を理解するためのネットワーキングであれば、Boothを回るのが一番効率が良かったです。話しかける前にバナースタンドのポスターが見れるし、ブースに置いてある資料が読めるし、担当者がついているため、気になったタイミングですぐに話しかけることができました。ブースでそのままデモを見せれるようにしてる会社も多かったです。
仲良くなるためのネットワーキングとしては、立食パーティーが一番良かったです。知り合いが知り合いを紹介してくれて、一通り話したらまた歩き回って他の人に話しかけたりして。
岡本:やはり効率的なネットワーキングには、カンファレンス側が工夫を凝らしていることが多くあると思う。アプリを利用した効率的なマッチングできる仕組みを整備していたり、1on1が上手く回るように1on1ができるミーティングブースを整備したり、コーディネイターを配置したり。

画像:CRUNCHMATCHというTechcrunch Disruptで1on1のために用意された空間

編集部:初めてテックカンファレンスに参加するインベスターに伝えたいアドバイスはありますか?
Jonathan
:事前にどういうスタートアップがブースを出しているのか、どのブースには寄るか決めておくことをおすすめします。一回目に通りかかった時にスタッフがいなかったり、人が多かったりする場合もあるのでので、最初から計画を立て、2~3回見に行かないと、気になるスタートアップとは話せず時間を無駄にしてしまう可能性があります。
岡本:いまJonathanが言ったこと以外だと、日頃の自身の投資家としてのあり方を意識することだと思います。起業家も当日は忙しいことが多いので、彼らが「話したい!」と思うような存在になれるよう、自分自身の提供価値を明確にしておくととても良いと思います。

終わりに、これからのIVSについて・・・
岡本
:世界には様々な優れたファレンスがありますが、我々IVSもそれらを参考にし常にアップデートしていきたいと思っています。IVS2021 NASUで取り組んだスタートアップブースでは多くのネットワーキングが生まれました。我々としても、この取り組みにもっと注力していく予定です。
ネットワーキングについても1on1ができる環境を整備すれば、参加者にとってもっと実りのある時間を作ることができると思っています。現状に満足せず、海外事例を参考にし、更に満足度の高いカンファレンスの運営を目指していきます。


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